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親しい?
……ちがうわ、わたしは。
わたしたちは『契約上』の関係。
ビジネスよ……
彼が喪ったかなしみから癒えるまでの
[ほんの小さな声だったかもしれない。
コーネリアスの憤りの声が大きい。
それでも耳に木霊する、かわいたおと]
[腕の中、泣きながら呟く声にふと何かを知る]
約束…
ローズ、君は…
アーヴァインさん、と…?
[心のどこか、それを訊いてはいけないと警鐘が鳴る。
だけど、言葉は止められなくて]
[緑の瞳と視線を合わせる。けれど、その目からは何も読み取れなくて、それがいっそう、ヘンリエッタの恐怖を際立たせる。]
……だって、どこにいけばいいの?
[言って気づいた。
この館のどこかに、あれを作り出したものがいるのだ。安全な場所などあるのだろうか。
少女の逃げる場所は、もうない。]
[目を開けば、多分、視える。
視えてしまう。
望まなくとも。
だから、目を開けたくない。
そう思って。
座り込んだまま、ぎゅっと目を閉じたまま。
自分で自分を抱きしめるように、肩を掴む]
なん、で……。
[呟きは何に向けての物なのか。それは、自分自身もわからずに]
広間なら、まだお客様が残っていらっしゃる筈ですから。
[廊下の先、明かりの洩れ出す部屋を示す。
手袋を嵌めた左手が、そっと少女の頭を撫でて]
私も“お掃除”が終わったらすぐに向かいますから、待っていてください。
[ 短く声を上げたかと思えば唐突に首を振り始めるメイに向けられる視線は、普段の他人を気遣う造られた物ではなく怪訝なもの。]
メイ? ……何なんだ、一体。
[ 其の様相にすら気付けずに、同情すら含まない非情な声を投げかける。]
何でかなんて、俺が知りたい。
[ 其の言葉は自分と相手では全く意味が異なると知りながらも。]
………ふう。
[深いため息を吐く。]
ではコーネリアスさん。これからどうなされます。
そこでいつまでも亡骸に縋って泣くのですか?
立ち上がりなさい。それは、もうただの肉塊だ。
[強引にコーネリアスを押しのけ、シーツを被せる。]
…客?
…ローズ、君は…
[思い当たる事は一つ。
そう思えば、他の人々の彼女に対する態度も合点がいって]
それが、君の秘密?
[そっと、腕を緩めて目を合わせる。
もしそうだとして、彼女を責める気は無かったけれど]
ききたい……。
そう……だよ、ね。
[『声』を拒絶する意思が現実の声を拾い上げ。
どうにか、それに向けての声が出せた。
現実。
現実を見るのも怖いけれど。
力によって視えるものに囚われるよりは。
そう、思って]
でも、きっと。
おしえて、もらえないんだ……。
[呟いて。閉じていた目を、開く。
薄紫の瞳が虚ろに周囲を、がらんとした広間の様子を映し出した]
あ……
[まだ、歪む視界の中。
彼の問掛けにわたしは、子どもになってしまったみたい。
視線から逃げたくて、うつむく。]
無慈悲で残酷……ねえ。
[ 人間を見遣れば恐怖にか怯え小さく声を零しながら震える姿。]
お前が云うのも如何かと思うが。
同族じゃないから好い、って事か?
[コーネリアスの言葉はかすかな怒りと憤りを含んで。
だけど、その原因に思い至ることは無く]
…旅をしているといろいろあるからね。
例えば、自分を守る為に人を……
[そこまで言って、しまった、と言う様に顔を顰める。
上着の下に隠したナイフの存在、抱き締めたローズに気付かれてはいないだろうか、と]
コーネリアスさん。
他の部屋も調べなければいけません。
手が空きそうなら、同行をお願いしたいのですが?
[手を差し出し、無理にでも立ち上がらせる。]
[不安げに今一度、緑の目を見つめるも、撫でられて渋々頷いた。
広間には少なくとも人がいる。
「掃除」がなにを意味するのかは深く考えず、不安からネリーと広間の入り口を交互に見つつ戻ろうとして、問いかけた。]
ネリーは、一人で大丈夫?
教えて……? 何の、話……、
[ 訝しげに問おうと唇を微かに動かすも、開かれた瞳の色彩に瞬き。しゃがみ込んだ儘に其れを真っ直ぐにじっと見詰める。]
……お前、そんな色だったか?
[ 黒が見詰める其の色は、碧から薄い紫へと変貌を遂げていた。]
[俯いたローズをもう一度抱き締める。
ナイフの事などもうどうでも良かった]
君は君だ…どんな秘密を持っていても。
そうだろう?
[自分がそれを知ったことは彼女を傷つけたのだろうか?
だけど、それでも彼女に対する感情は変わることは無く、そう言って、微笑む]
[瞬時、驚いたように瞬く。
心配されるなんて思ってもいなかった]
……私は大丈夫です。
[引いた血の気は未だ戻ってはいなかったけれど、彼女は微笑みを浮かべた]
……ああ、忘れていました。
[先程かけたシーツをめくり、何かを抜き取ってコーネリアスに手渡す。]
唯一、保管しておけそうな遺品です。どうぞ。
[それはどす黒い血の色に染まる、薔薇を模した指輪。]
[今はどんなことも靄の向こうにある。
感覚も感情も
追い付いていかない。
コーネリアスの言葉が、理解できることもない。
その返答も。
ふたたび抱き締められた感触も。]
わたし、は、わたし?
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