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─ 翌朝/個室 ─
[眠っとる間もクロエさんやミリィが様子見に来てくれたかもしれんけど、うちは目ぇ覚ますことは無かってん。
何度か魘されとったかもしれんけど、溺れた夢見とるわけでは無ぅて。
喉元に残る息苦しさと、目ん前で人死ぬん見た精神的なもんやったと思う。
そないな風に早ぅに寝とったさかい、朝に目ぇ覚ますんはいつもより早かった]
………まだ苦し。
[ベッドん上に横向きに寝転がって、右手で喉元押さえる。
じわじわ締め付けるような感覚が残っとって、居心地悪ぅて眉根寄せた]
ミリィ起きとるやろか……まだ早ぅか。
後でもっかい薬もらお…。
[窓ん外見たら、陽ぃ昇り始めみとぉな雰囲気やった。
あんま早ぅ訪ねてもあかんやろ思て、薬貰いに行くんは後回しにしてん]
……………………。
[橋落ちてからうちに起きとる異変。
それがなんなんか、原因が見えて来ぃへん。
そもそも”人狼”てどういうことやねん。
何でうち、ハンスさんが人狼ちゃうて判んねや。
ホンマ解らんことだらけやで…。
今、なにが起きてんねん]
[御伽噺とかに直ぐ結びつかんかったさかい、うちは訳解らん状態が続いとった。
そん中で、うちん中で渦巻いとるもんを感じて困惑する。
訳分からん中で、”人狼探さなあかん”て思うてしもうとる。
それに疑問持ちよると、息苦しさが増すように感じてん。
解らんことだらけやったさかい、一旦なんも考えんようにして、うちは部屋ん外に出た。
まだ誰も起きてへんやろか。
ちょい外行って、朝ん空気吸ってこよ]
─ →外 ─
[ちゃんと上着着込んで外ん出た。
吐く息がめっちゃ白ぅて、外ん寒さがよぅ分かる。
めっちゃ寒いんやろな、細かーな雪がちらちら降っとった。
せや、外出たついでにギュンターさん埋葬されたとこ探してみよかな。
そう思て、庭の方に足向けてん]
………ん?
[そん途中にある、空がよぅ開けた場所。
そん中に、ぽつん、て雪やないなんかが転がっとるんが見えた。
なんやろて思て、サクサク雪踏んで近付いてみてん。
しばらく雪降っとったんやろか、転がっとるもんの周辺に足跡とかは見あたらへんかった]
─── ミリィ?
そないなとこで何して………
[転がっとったのはミリィやった。
赤ぁ髪が雪によぅ映えとる。
髪とおんなじ色の目ぇは閉じられてて見えん。
何してん、て声かけよ思たんやけど、そん声が止まってもうた]
………───── ミリィ!!!
[間ぁ置いて出たんは、雪ん上に転がってる人ん名前。
さっきの呼びかけと違ごて、声は絶叫に近かった。
ミリィん周囲が、髪よりも鮮やかぁな紅に染まっとったんや]
[駆け寄って、ミリィ抱き起こそ思て肩に手ぇかける。
腕は胸んところに組まれとって、ただ見れば祈っとるようやった。
肩掴んで上半身起こしたら、組んでた腕が腹んところに力無く落ちてく]
───ッ、 ァ……!
[腕あったところの胸に、ぽっかり穴ぁ開いとった。
それ認識した途端、鼻に鉄錆ん匂いが突き刺さってん。
匂いに顔顰めて、目の前の状況に困惑して、自分が今どないな表情しとったか、もう分からんくなっとった]
ミ リィ、 なん 、 なん、で
[─────── 人狼や。
そないな考えが頭にすっと入って来よった。
理由なんて分からへん。
事前情報とかそないなもん無くても、人狼の仕業やて、すんなり思えた]
[ミリィん首に痛々しい噛み痕が見える。
それ見とったら息苦しさが増して、目ぇに涙浮かんで来た]
…ッ 、うち が、探せてへん、から ッ…
[息苦しいんはそのせいやって、そう思えてきて、嗚咽混じりで声が零れ出てん]
ごめ、 ごめ ん 、ごめんな ミリィ ───……
[泣きながらゆぅて、上半身起こしたミリィ抱き締めた。
うちん涙がミリィん頬に零れて伝ってく。
青白くなってもうたそれが赤みを帯びるなんてことは全然無かってん]
[そぅしとる間に来る人はあったやろか。
うちはしばらくミリィ抱き締めて泣いとった]
[何でそうせなあかんのかは分からんけど、うちがやらなあかんことは理解した。
── やけど、うちが探す方法て、残酷すぎやせぇへんか*]
―ギュンターの部屋―
[机に伏せていた男がふると小さく身震いした。
いつの間にか寝てしまっていたらしい。
顔を上げて痺れた腕を解す。
窓を見ると夜が開けていたのだと知れた]
――…。
[感覚があるのは生きている証。
己が無事であるなら――。
立ち上がり、男はギュンターの部屋から立ち去る]
―廊下―
[まっすぐ向かう先はクロエの部屋だった。
まだ朝も早い時間に躊躇う事なく扉をノックする]
クロエ。
……アーベルだ。
[名を呼んでから、己の名を名乗り彼女の返事を待つ。
応えがあれば、ほっとしたように息を吐いた]
ああ、よかった。
無事だったんだね。
[無事を喜ぶ声は密やかにクロエにのみ伝えられる]
─ 夜・自室 ─
[それから時折ローザの様子を見て、
良く眠っていることに安堵する。
呼吸もマシになって思えたのは、ミリィの薬の賜物か。
魘される風>>71に時折額に手を添えて、
収まればローザを起こさぬように部屋をあとにした。
結局、昨日口にしたのは水と紅茶だけだった。
食事があるとユリアンが言ってくれていたのは覚えてる。
けれども何だかお腹が空くことがなかった。
お腹が減ったという実感よりも、
ぽかりとした空洞のようなものが胸の真ん中を占め続けていた]
……ライヒアルト修道士。
[夜に自室に戻れば髪を解き、じっと鏡を見つめる。
思うのは教会の修道士のこと]
―廊下―
朝から邪魔をして済まなかったね。
ちょっと心配だから、他の人たちの様子もみてくるよ。
[クロエにそう言いおいてから踵を返した。
ユリアンやライヒアルト、ナターリエの部屋、と、
手当たり次第に個室の扉を叩き安否を確認しようとする]
[彼は何故、教会の秘儀などと口にしたのだろう。
彼が人狼だからであろうか。
それとも他の目的があるからなのか──?
漆黒の瞳を一度閉じて、彼の面影を心に刻む。
色々あって、眠れないのではないかとも思った。
けれど心身の疲労は思いのほか深く、
ベッドに潜り込むといつしか深い眠りに誘い込まれる。
クロエの夢に悪夢が訪れることは、
────…、なかった ]
[昨日ベアトリーチェの部屋で騒ぎがあったとき、
既に彼の右手には包帯が巻かれていなかった。
けれどクロエがその時、それに気づくことはなかった。
騒ぎに紛れ、ローザに気を取られて気づけなかったのだ。
だから初めて彼が右手を晒しているのを目の当たりにして、
漆黒の目を見張り、続いて彼の瞳を見遣る]
─────…。
[何か言いたかった。
けれど言葉にはならず、きゅっと口元を引き締めるのみになる。
彼の決意は既に聞いていたから止めることも出来はしない。
それでも…気掛かりなのは、気掛かりなのだが]
ん。…あ、ちょっと待って。
[自分も行くにしろ、髪を纏めてからの方がいいだろう。
だから部屋を回ろうとする彼についていく素振りは見せず、
ただ踵を返すのに、一度引き止めるように彼の腕に手を伸ばした]
───ライヒアルト修道士は、違った。
[端的にそれのみを彼に告げる]
[下ろされたままの漆黒の髪。
それが新鮮に思えて少しの間見惚れるように
クロエに視線を注いでしまう]
――― …ッ、ああ。
[笑みを深めた彼女に同意して
ごまかすように視線外そうとすれば
手の事を言うのが聞こえた]
昨日広間でね――…
カルメンやエーリッヒに話をしたんだ。
お伽噺とは縁が薄いみたいでピンとは来なかったみたいだけど。
[その時の反応を思い出すように受けた印象を綴る]
もう、隠すのは止めたよ。
…あ …
[引き止めたことで、彼を寒い廊下に待たせてしまう。
今更このままでいいとも言えず、大急ぎで支度をした。
いつも結んでいるリボンが少し曲がったのは、その証だ。
本人からは見えないから、良いといえば良い]
うん。
…さっき、ユリアンに言ってしまったと言ったでしょ?
ライヒアルト修道士が、シスターを人といったと聞いた。
彼はそれを信じて疑わない様子だった。
私は…それを黙って見てはいられなかった。
シスターは人かも知れない。
けれど、ライヒアルト修道士は違う。
少なくとも私からは、何か違う。
だから…もしかしてと思って。
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