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─ 宿屋 ─
あら、ごめんなさい。
ちょっと考え事してて。
[意識が一寸離れていたからか、宿の主が戻ってきたのに気付かなかった。
部屋の用意が出来たと声をかけられ、ようやく意識を戻すと謝罪を述べた後、何を考えてたのかと問われて笑顔を浮かべ]
大したことじゃないけどね。
ちょっと顔を出したいところを思い出したの。
荷物だけ置かせてもらえるかしら?
[言いながら革の鞄からクラッチバッグを取り出して。
了承が返ったのを確かめた後主に鞄を託して、また外へと出ていった。
向かうのは、老尼僧がいる聖堂の、ピアノの元**]
[ささやかな風が桶の水面に漣をたてた。
ふわと首筋を撫でる風に寒気を覚える。
ストールを置いてきたことを少しだけ後悔した。]
――…っ。
[空を見上げると雲が一瞬太陽を隠して、すっと流れてゆく。
まだ陽は高い。
酒場での仕事まで時間があるが――]
あんまり、する事がないのよね。
[微苦笑を漏らしてぼんやりと空を眺める。
修道士のような風情の司書が来て半月も経たぬうちに聖堂を出た。
すれ違うように自立したのは思い悩んだ末のこと。
その選択が間違っていなかったと思えるのは、
老尼僧が今もこの場所で不自由なく暮らしていると知れるから。]
―回廊―
[自分に甘いと言う>>202のに苦笑を零す。
まったくもう、と思ったけれど、これ以上言う気も無くて]
[思い当たった答えに肯定が返れば、ぱ、と表情は明るくなる]
いいなあ、猫飼いたいけど駄目って言われるんだよねえ。
[駄目だと言う母親は理由を告げないけれど、大体わかってはいる。自分の面倒で手一杯なのだとは。
だから羨ましがるだけで本気で強請る気はもう無い]
せろり、って。
……好きなの?セロリ。
[咄嗟に浮かんだのはセリ科の植物。
まさか猫が緑でもなかろうし、好物なのだろうかと]
[そうこうしている内に、談話室の扉は近付いていた。
回廊を遠回りしたからか、赤色と擦れ違うことはなかったようで**]
─ 談話室 ─
[神妙な様子の返事>>204に、天鵞絨はきょとん、と瞬くが。
僅かに感じる年頃の少女らしさにふ、と笑みを掠めさせる]
……?
[カップを手にした少女の様子は、どこか拗ねたような気配を感じさせて、また首を傾げかけるが。
マテウスの言葉>>200と立ち上がる動きに、意識はそちらへそれた]
道を……そうですね、今日は来訪者も多いようですし。
……手伝い、ますか?
[申し出は、やや控えめに。
必要な仕事は一通りこなす事はできるものの、力仕事に向いている、とはお世辞にも言い難いと知るが故に、どうしてもそうなってしまうのだった]
はい。
えっと……あ、お掃除、ですか?
手伝いますよ。
[娘には珍しい、丁寧な言葉を続ける。
桶を持っているのに気が付けば、すぐに勝手口の戸を支えようと動き出して、ついでに申し出る。
こう見えて、掃除洗濯炊事の類は一通りこなせる娘である。**]
─ 談話室 ─
……そうですね。
[応対する者が必要、というのは確かなので、素直に頷いた]
それでは、そちらはお願いいたします。
……お戻りになられましたら、また、熱いのを淹れますから。
[カップを置いて立ち上がり、礼と共にこう言って外へ向かう背を見送る。
開いた扉の向こうからかかった声には、随分のんびりしていたな、などと思いつつ。
新たに訪れる者のためのお茶の準備に動き出す。**]
―厨房―
[ミリィの顔>>209に緊張の色が僅かに感じられる。
ささやかな歳の差がそうさせているのかもと少し寂しく思っていた。
掃除と彼女が言えば、肯定の頷きをみせる。]
時間があったからお手伝いでもしようと思ったんだけど
何だかんだでちゃんとしてくれてるのよね。
[誰とは言わぬまでも聖堂に住まう者は限られるから
ミリィにも誰の事を言っているかは思い当たるか。
気付いたように勝手口の戸を支える彼女に、笑みを深めた。]
ありがとう、ミリィちゃん。
[礼の言葉を向け、厨房の中へと入る。
宿屋の娘である彼女は自分よりも家事に慣れているだろう。
少なくとも炊事に関しては彼女の方が達者であると思う。]
― 回廊→談話室 ―
[近付いた談話室のドアが開いて、出てきたのはやはり見知った顔>>208
その彼が、談話室へと声を掛けるのを聞いて、自分の名が出た事にこてりと首傾げ。
そうして、挨拶を送られたならこちらも姿勢を正して挨拶を返す]
こんにちわ。
マテウスさんもいらしてたんですね。
[ここに来た用向きは聞かず、何処へ、と問えば簡単に答えは返る。
手伝うことも考えたが、同行しているアーベルを思い、今は暖を取るのが先とその場は辞して談話室へと]
いや、図書室は結構冷えるなー。
あ、ライヒ君、こちら、図書室であったお客さん。
[向こうで何があったかは言わず、アーベルの紹介だけして、室内を見回せばこれも見覚えのある少女が一人]
あれ?イレーネちゃん?
今日はお父さんと一緒に来たの?
[仲のいい家族とは聞いているけれど、こうして会うのは珍しいからそう訊いて。
もしも、何かを問われたなら、隣に座って話を聞くつもりだ**]
11人目、旅人 レナーテ がやってきました。
旅人 レナーテが村を出て行きました。
11人目、旅人 レナーテ がやってきました。
─ 夜間・山道 ─
[歩く足が雪を踏みしめる感触と肌を突き刺すような空気の凍える冷たさが厳しい季節であること否応なしに理解させる。遠い春の訪れをを願うセンチメンタルにも似た想いを抱くような感受性は持ち合わせてはいなかったが、流石にこの寒さは身に堪えるというものである。]
…ハァハァ。
もうそろそろ着いてもいい頃じゃないのか?
[誰に語り掛けるでもなく。わざわざ雪に覆われたこの山道を行く自分に呆れるように励ますように言葉が口を突き、そして辺りの静寂へと飲み込まれていく。
遠くに見える人里らしき明かりは一向に視界に広がる様子を見せはしないが歩を進めている以上、確かに距離は縮めているはずであるが、果たしてあとどれぐらい歩けばたどり着けるのか。レナーテにとってはまるで神々の峰を超えるが如き難行にも思え、今にも雪の上へと身を投げ出して身体を休めたい衝動にも駆られる。が、それは即ちこの世との決別を意味すると理解するが故に思いとどまること優に十を数える。]
まったく、体力には自信があったのだがな。
雪道がこれほどとは……。
[再び誰かへ掛けられたたわけではない疲れた声が静かに雪へと溶け込んでいく。]
[宿場へとたどり着いたのは朝だったろうか、昼だったのだろうか、まだ薄暗かった気もするし、とうに日は頭の真上にあったような気もする。だがもはやそんなことは些末なこと。ようやく人里へと辿り着いた達成感と疲労から二つの足はもう数歩も進むのを拒絶する重い体を引きずる様にどうにか宿へと向かう。その途中で役人らしき男に制されて、不機嫌に何の用向きかと問えば滞在表の記入を申付けられたので少々乱雑に書き上げると男へと渡した。]
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■名前:レナーテ・ソレル / Renate Sorel
■年齢:25
■職業:旅人
■経歴:かつては都の守備隊を務めていたが、ある事件をきっかけに退役。
退役後は僅かな蓄えを路銀に各地を転々と放浪するようになった。
旅先では蓄えの足しに簡単な仕事や用心棒のようなことをしている。
腰には自慢のレイピアを帯剣している。
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[泥のように深い眠りから覚めた翌日。宿場の温泉でゆっくりと疲れを癒していると、年の頃はもう初老と言っても差し支えないであろう男から丘の上に聖堂があることを聞く。
さして期待もしないが山間の宿場では他に見るべきものも無いだろうということで、昼を迎えるころには丘へと向かうレナーテの姿があった**]
―厨房―
[炊事をする場で食事の支度に意識が向かないのは
不得手とする事だからかアップルパイでおなかが満たされているからか。
どちらもが大きな理由となっていた。]
そういえば、自衛団の団長さんも今日は来ているのよね。
何かあったのかしら。
[ぽつ、と思い出したように呟いて
少しばかり心配そうな表情を過ぎらせた。**]
― 談話室 ―
こんにちは、エーリさん。
ううん、お父さんは自衛団のお仕事。私は、おばあ様にご用があって来たの。
[役者は子供達から人気があり、娘にとっても好感度の高い一人。父の言葉通りに入って>>217くると、挨拶しながら笑顔で疑問>>218に首を振った。アーベルにはさっきぶりと、同じく笑顔で会釈して。
老尼僧のおばあ様呼びは、父についてくる>>2うちについたもの。誰のことか聞かれるならシスターと言い直す]
冷えちゃったなら、こっちで一緒に暖炉に当たろう?
あのね。エーリさんにもご用ができたの。
パイの作り方、こっそり教えてもらうことはできない?
[他にも人の集まってる場所でこっそりも何もないものだが。隣に座ってくれたエーリッヒを真剣な瞳で見つめて問いかける]
三日月のパイ、とっても美味しかったの。パパも美味しいって言ってたよ。あっ、パパの分の三角パイは貰って帰るね。
エーリさんが作ったのを食べるのも楽しみなんだけど。
私もこういうの作れるようになったら喜んでくれるかなって。
[一番に喜ばせたいのは弟だ。母も喜んでくれるに違いない。
娘の頭の中ではもう秘伝のレシピとなっていたから、教えてもらえなくても大人しく引き下がるが。そうなれば、しょんぼりとなるのを隠すことも出来ないだろう]
[その後も爪先の感覚がなかなか戻らず、暖炉の近くに陣取り続けることになって。
他にも人がくれば挨拶をしたり、大人しく話を聞いていたり。
そのうちに、欠伸の一つも漏れたりし始めるの*だった*]
─ →聖堂 ─
[宿がある山の中腹から、上へと向かう道を進む。
真白の中を歩いて、その先にある建物が目に入れば自然と頬は綻んだ。
自分とピアノを出会わせてくれた場所だから、というだけでなく。
自分に己の道を選ばせてくれた人が、ここに居るから。
雪のせいで転びやすい道で走り出す愚など為さないが、常よりは早足で上がっていって。
後少しで聖堂に着くという所で、>>214雪道を整えている男の姿が見えた]
あら、お一人?
余計でないなら、お手伝いしてもよくってよ。
[声をかけて、笑みを向ける。
彼と見知りなら、この時に久しぶりと挨拶もくわえただろう。
申し出を断られたなら重ねては言わず、横を通り過ぎて聖堂に入り。
是と応じられたならある程度の目処がつくまでは道を整えるのを手伝った後、やはりそのまま聖堂へと入っていった]
─ 聖堂 ─
[ひやりと静謐な空気の中を、硬質な靴音を立てて進み。
古びたピアノの前で足を止めると、ふ、と苦笑を浮かべて]
…ただいま。
ちょっとご無沙汰しちゃったわね?
[小さく声をかけると、クラッチバッグから取り出した手袋をはめ、同じく持参してきたブラシで表面を掃いた屋根と鍵盤蓋を開く。
弦の様子を見た後、軽く鍵盤を叩いて音の狂いの有無を確かめ]
寒くなったし暫く見てなかったからちょっと心配だったんだけど。
錆びもないし、直しもそう必要ないみたいね。
これならそんなに時間かけなくても大丈夫かしら。
[気になるのは{4}箇所だけで、後は錆び防止に薄く油を差せば良い程度。
ハンマーも油差しも持ってきているから、問題は無い。
実際、1時間もしない内に調律は終わり]
─ 聖堂 ─
これでよし、と。
それじゃ、肩慣らしに軽く一曲歌って頂戴?
[試しに1音叩いて、出来を確認すると持参した道具をすべてバッグにしまい。
ピアノの前に座って奏でるは、神への賛美。
ここの図書室に置いてあった楽譜を手に、何度も一人で練習して習得した曲。
これを弾くことが老尼僧への挨拶代わりだと、尼僧と己を知る者には伝わっているだろう**]
─ 聖堂への道 ─
[聖堂と村を続く道にはいくつもの足跡。
誰がどの足跡かまでは判別が付かないものの、大小様々あり、それだけで訪問者の多さを物語っていた。
目視では捉えきれない部分もあるため、自分の足で雪を踏み締め凹凸の酷い箇所を均していく。
それを何度か繰り返した時、久方ぶりに聞く声>>227が耳に届いた]
………よぉ。
[雪による光の反射に邪魔されながら相手を見遣ったため、誰なのか判ずるのに僅かばかり遅れる。
見覚えはあるが見慣れぬ姿。
どうしたらこうなったんだと言う思考は今に始まったことではない]
…調律に来たんだろ。
手先仕事する前に手を冷やすようなことはしなくて良い。
[帰郷の折に聖堂にあるピアノの調律をしているということはシスターから聞いている。
今回もそうなんだろうと当たりつけ、言外に手伝い無用と告げた。
目の前に人物に対して複雑な想いがあるため、マテウスの言葉遣いもついぶっきらぼうなものになる]
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