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─西部エリア・広葉樹林─
[ふと、途切れていた意識が戻る。
周囲に満ちるは、穏やかな影輝と生命の気。
既にその側を離れて久しいと言えど、影輝と生命は彼にとっては『器の親』の属であり、時空に次いで馴染み深いものであり。
それだけに、その感触は心地よいものがあった]
……っと……あれ、なんで、ここに……。
[しばし、心地よさに身を委ねた後、ぽつり、呟く]
[ふと肩に感じる重圧と頬に感じる冷たさにそちらを見ると、シノが肩の上に乗り頬をぺろぺろと舐めていた。
僅かに口元に優しい笑みを浮かべると、眼鏡を掛け、スッとシノを一撫でしてやる。]
……ん、大丈夫。
あー、汗かいたからまたシャワー浴びないと。
[そう言ってシャワーを浴びに*浴室へ消えていった*]
……、
[聳え立つ塔を眺めること暫し、]
[視線を逸らして外周区画を歩みだす]
[硬質な通路に、][無機質な空間]
[色は硝子を隔てた先に在るのみ]
[その中に][見つける][明澄な白]
…………猫。
[ぽつり。]
……練習の後、屋敷に戻らないで、散歩して……。
[で、ここに来て寝入ってしまった、と。
要約すればそういう事で。
傍らを見れば、未だ獣の姿を取る従魔は、身体を丸めてすやすやと。
その様子に笑みを浮かべつつ、開いたままの翼を緩く動かした]
[手を伸ばして、毛並みに触れる]
[ざらり。]
[前の時とは異なる感触が混じる]
砂?
[棚らしき物の上で眠る獣から、]
[開かれた扉の先へと目を移す。]
[微かに耳に届くのは雑音だろうか?]
……にしても、だ。
ファクトリーの異変……か。
機鋼竜が何かしら関与している可能性は、否めんが……。
[呟く刹那、異眸は鋭さを帯びて]
……今の機鋼竜は、肝心の『モノ』が、欠落している。
あるとしたら、本能的なモノだけのはずなんだが。
その状態で、一体、何ができるってんだ……?
−南東部:海岸−
[先ず目に映るのは、]
[照りつける太陽の光]
[青い空] [白い雲] [鏡の海]
……、
[Za....][Za-za...n....]
[断続的なその音色に惹かれたように]
[砂地に残る足跡は境界へ続いていく]
[揺らぐ水に踝までが浸り服裾を濡す]
[ぱち][ぱち]
[規則的に、二度の瞬き]
…………?
[浅さ故に濡鼠にはならずとも]
[少なからず水は被ってしまって]
[目にも入ったか濡れた手で擦る]
< うとうとと。
やがて猫のねむりは、すこし めざめに 近付きました。朝がやってきたのかしら。
機鋼の魔族――猫も名前を知りません――が猫をなでていたのも、ほんのりゆめうつつ、気持ちよかったから良かったのです。 >
ま、今、仮定と仮説でぐるぐるとしても始まらんな。
俺は、俺のやる事をやるまで。
[こう、声に出す事でループしていた思考を断ち切り。
ゆっくりと立ち上がり、翼を大きく広げ、数度羽ばたかせてから、完全に閉じる。
白が消え、金緑石にまとめられた髪がさらり、流れた]
……さて、セレス。屋敷に戻りますよ、と。
[気配で目覚めたらしい従魔に声をかければ、獣はこくり、と頷いた後、少年の姿を取る]
というか……ヴィンター、置き去りしちまってる、な……。
[怒られそうだな、と思いつつ、東へ向けて歩き出し]
―屋敷・屋根上―
…あう。
[マフラーが、風に煽られて、ぺちりと顔に当たった。
別に痛くないけれど、…今度は翻っても当たらないように巻きなおす。
一面の緑を眺めながら目を細めて、耳を澄ます。
草原を抜ける風は凄く穏やかだけど]
――やっぱり違う『声』だね。
似てるけど。
[似てるのは、流石機鋼界…ってことなのかな。
ぼんやりと、そう思う。やっぱり、何処か違和感を感じる]
< だんだん現実にもどってきたのでしょうか。
猫の耳はぴくぴくと動き、羽をいちど、大きく広げました。
あらあら、そんなに大きく広げたら…… >
[幾度擦れど鮮明にならぬ視界]
[それどころか余計に霞むようで]
……、
[海水の所為とは気付かず][眉を顰めるばかり]
[……ぎし、]
[僅かに身体が音を立てる][軋みは骨からか]
別に急いでる訳じゃないから、良いけど。
――ずっと此処にいるのは、やっぱり何だか居心地悪いな。
[雪も海もあるから、便利だけど。
隣の黒猫に話しかけるけど、答えは期待してない。
丸まって寝てる。アル曰く、猫の姿が一番寝やすい。らしい。
そして、こういう時のアルは、余程の事じゃないと
オレの声じゃ起きてくれない。…別に良いけどさ。
立ち上がって、少し土のついたズボンを叩く。]
< いたい。 なんていうのは、とうぜんの はなし。
自分がわるいんです。
猫はふるふると ふるえて、ゆっくり羽根をたたみます。目はぱっちりとあきました。
たしかに、目はさめたのです。
きちんと すわりなおして、猫は ちゅうい しながら、羽根をひろげました。
今度はぶつけません。
にゃあ。
小さな声で、なさけなく、なきました。 >
─外周通路─
[屋敷に戻るべく、外周通路に入ってしばらく進んだ所で聞こえてきた微かな音]
……なんだ?
「……なにか、ぶつかった、みたい」
[思わずもらした呟きに、従魔が首を傾げながらこう言って。
なんだそりゃ、と思いながらも、音のした方へと。
たどり着いたなら、目に入るのは]
……猫?
< 羽根には、いじょう なし。
猫はもう一度、閉じて、しゅたりとそこから飛び降りました。
床にもしワックスがぬられていたら、なんて、かんがえるわけも ありません。……今は、ぬられていないから、よかったのですけれど。
猫は ゆうが に着地して、声の方を見ました。
そういえば、昨日、のぞいた先に、その人はいたような? >
こんにちは
< あらいけない、猫の姿だから、声は出ないんでした。 >
……ええと。
[猫が挨拶したのは理解できたわけだが。
さすがに、言葉まではわからない。
白梟がいれば、問題はなかったのだが]
なんで、ここに猫?
[ふるり、][頭を振ると、僅か、散るしずく。]
[水分を含んだ服が重いのか][億劫そうに立ち上がる]
[ぱた] [ぼた]
[ぱた] [ぼた]
[幾ら浅い場所とは言えど]
[長い間座り込んでいれば][当然、染み込みもする]
[普段より更に危うげな足取りで波打ち際を歩んでいく]
< なんで、って言われても。と、猫は思いました。
だって、寝るのに ちょうどよい場所だったんです。
たぶん、そういうことを、言いたいんじゃないと思いますけれど……
猫はみゃあ、と小さくないて、まだ少し残っていた砂を、ぷるぷるっと体を振って落しました。ふぅ、きれいになった。 >
……。
[耳を澄ませば僅かに聞える声に、何処かむずむずして。
吹き飛ばすようにぷるぷると頭を振った。
髪の毛がぐちゃぐちゃになったけど、気にしない。
だって、気持ち悪い訳じゃないけれど
――何か、慣れないんだ]
このままだと、オレ。すぐ疲れそう…。
[それはヤダだなぁ。メーアが怒るし。
メーアは、オレより疲れないから、いいじゃないと思うんだけど]
……ここにいる、という事は、呼び込まれたクチなんだろうが……。
[少なくとも、翼がある時点で、普通の猫ではない……つまり、機鋼界に元からいたものではないのはわかるのだが。
思わず考え込んでいる横で、従魔はじぃ、と猫を見つめて]
< そのとおり、というように、猫は一声、なきました。
それから視線に気付いて―― >
……?
< じぃぃぃぃぃぃぃぃ。 >
――もどろ。
[……へばったら、やっぱり怒られるみたいだ。
何だよ、ケチ。 仕方ないからさっさと戻って、休んでおこう。
そう思って黒猫の背をゆさゆさと揺すってみるものの、
…案の定反応ナシ。]
アル、起きてよ。
屋根の上に放置してったら、ダメかなぁ…。
[多分、起きた後にすっごくアルに怒られるんだろうけど。
でも、オレの声で起きてくれない方が悪いと思うんだ。
オレ、部屋に戻りたいのに。]
[鳴き声は、どうやら肯定らしい。
……しかし、それはそれで。ますます、呼び込みの意図がわからず、疑問を増やして]
「……つばさ」
[その横で、従魔は猫とお見合いしつつ、ぽつり、こんな呟きを]
[何処をどうやって歩いたのか、]
[波の音は次第に遠ざかり]
[代わりに聞こえてくるのは川のせせらぎ]
[砂浜は草原へと移り変わり]
[少し乾きかけの髪を風が揺らしていく]
< きょとん。
つばさ。というのは これ でしょう。さっきぶつけたそれを、ばさっと広げました。
よびこみ の いと。
そんな言葉はきこえましたけど、一体ぜんたい、なんのことだか、わかりません。 >
くあ…。
[考えごとをしていたのだが、気がついたら寝てしまっていたようで。
その体には少しだけ窮屈なベッドの上で、大きく伸びをした。
身支度を整えると、階下へと降りる。]
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