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[広間の横を通り抜けて台所に行こうとしていると、扉の開く音がした。
ロミルダは数歩後退り。
廊下側の入口から頭を出して、広間を覗く]
だれか来たですか?
[中に入るとやや張り詰めた空気、奥に進むと昨日馴染みの顔が合った]
さて、なにやら騒がしいようですが。
[ギュンターが掻い摘んで事情を説明する]
なるほど、それは……。
ところで、その時のお話というのは?
[ギュンターの話に耳を傾けようとした時「水、換えてくるですよ。」と、可愛らしい声が聞こえてきた]
(子供も居るのか?)
[奇妙な違和感を感じつつもギュンターの話を聞く]
ふぅ、昨日とお話が違うようですが……。
一度帰っても良いですかね?
[相手の返事を待たずに、扉に手を掛けて半分開いた、と後ろから]
「だれか来たですか?」
[との声。 振り向くと年の頃10位か、小さな女の子が顔を覗かせていた]
――集会所2階・個室――
[目を覚ますと寝台の上だった。
作業の続きをと思ったのに、浅い眠りについていたらしい。緊張のせいか、汗が纏わりついていた]
……お風呂、入りたい。
でも、ここじゃ貴重なんだよな。
[また一つ、陸が恋しくなる。
せめて濡れタオルをと、身なりを正し、階下へ向かう]
─集会所・台所─
よっし、湯冷ましも出来たし持ってくか。
あ、待て待て。
ダーヴィッドさん達ずっと詰めっぱなしだからきっとおなかすいてるよね。
軽くつまめるもんと、なんか飲み物…水くらいっきゃないかなー。
ま、水でもいっか。
あぁそうそう、ロミちゃんもいるはずだからなんかお菓子も…
[ごそごそ、と台所を物色中]
(先程の声はこの子のものだったのか)
[気がつくと、辺りに人の気配が多数あった]
(なんともな、雰囲気に飲まれてしまっていたようだ……な)
[教会関係者だなんてロミルダには分からないから、ただ珍しそうに見る。
声が掛かったから、ぺこりと頭を下げた]
こんにちはです。
……おにぃさんも、容疑者ですか?
[困ったような顔をしながら言った]
ほぅ?
[寝起きのせいで、惚けた声が出た。
ロミルダに示されるまま、中を覗いて――]
え。
[まるで幽霊でも見たかのように、目を擦る。
幾度も瞬き、目を見開いた]
……エリせんせい?
[───夢を見ていた。
自分と、旦那と、それからまだ見ぬ子供と3人で一緒に平原で食事をしていた。
笑顔で楽しく談笑していた。
とても楽しかった。
けれど、子供の顔はよく分からなかった。いや。体型すらよく分からなかった。
楽しそうに話していたはずなのに、何も覚えていなかった。
覚えているのは、子供がブリジットに向けて言った言葉]
───っ……。
[ブリジットが目も覚まさぬまま、こぽりと、胃液を吐き出す。
食欲は長いこと沸かず、それでも無理して食べてはいたが、固形を吐き出すほどの量は食べてはいなかった]
……っっ。
[意識は無いまま、その目から流れ出す涙。その顔は悲しげで。
いつも皆に見せるような表情も今は何も無かった]
───呼ばれ……たい。
[うわごとの様に、言葉が漏れ出す]
お母さんって……呼ばれたい……。
[子供の為に、自らの命を捨てる覚悟はある。
命どころか、魂も何もかも子供の為に費やしてもかまわない。
だけど、それでも、いつか生まれてくる愛する子供に一度だけでもお母さんと呼ばれたいと思うのは我が侭な事なのだろうか。
幸せで、そして不幸な夢を見たまま、ブリジットは*眠り続けている*]
─集会所・台所─
…こんなもんかな。
ブリジットさんも目覚めてたらスープくらい飲めると良いんだけど…ん?
広間の方がなんか賑やかねぇ、お医者さんが着いたのかな?
[軽食と水差し・湯冷ましの載ったトレイを持って広間の方へ]
ふぇ。
[エーリッヒの話はよく分かってない顔だ]
人狼の容疑者を集めて、ここに隔離したって、団長さん言ってたです。
[そう言ってから、ゲルダを振り返って]
……えりせんせい?
[言葉を繰り返して、きょとんとした目で見た]
おや!?
[どこかで耳慣れた声。 それがどこだか分からないが、記憶の奥底に触れる声がした]
ん? まだ自己紹介はしていない筈だが……。
[呟き、声の主を見つめる]
─集会場・広間─
[睨む視線に、鸚鵡と一緒に反対側に首を傾げて見せたりしつつ、ゲルダを見送った後。
個室を出て、広間へと移動した。
自衛団長に聞きたい事はあれど、結局は怒鳴りあいになるだけのような気がしたから、置き去りの自分の荷物の所へ行って、袋に突っ込んでおいた手帳を出してぱらぱらとめくる。
中に描かれているのは、描きだめた蓮の模写とデザインの素案。
その大半は、未だ日の目は見ていないのだが]
……ん。
[そうこうしている間に、増えた気配。
見知らぬ姿に、きょと、と一つ瞬いた]
あ、うん。
そういう話だよね。 確かにわたしもその話は聞いたよ。
先程のギュンター殿との話を聞いていた人にはわたしの身分も伝わっていると思うが、わたしの所属する協会の口伝にもそんな話はあるんだ。
[少女に答えつつも、意識は正面の女性に向いていた]
やっぱり。エリ先生、だよね?
エーリッヒ=クライバー先生。
[少し口調は幼く、確かめるように口にする。
中に入り、じっと金髪の男を見上げ]
スニプル村の、ゲルダ=グリムです。
覚えていらっしゃいませんか?
[自分の名と、出身を告げる。水上ではない、陸の地にある村の名を]
―集会場・広間―
[何か手が必要な場合に備えて広間に居たが、どうやら軽く居眠りをしていたようで。
聞こえた声と気配に顔を上げる]
……知らない顔だな。
[身なりからして陸のものだろうか?
自衛団長との会話から朧気に男の素性を察する]
教会の…何でまたこんな時に。
[呟きは小さく空気を震わせた]
教会の、口伝?
[ロミルダは教会とは縁が薄い。
不思議そうにその言葉を繰り返してから、桶に目を落とした]
あっ。
いけない、忘れてたです。
[それで、何をしようと降りて来たのか、ようやく思い出して。
ゲルダの言った名前を記憶にとどめながら、台所へと*駆け出した*]
[伝え聞こえるやり取りに、蒼の瞳は微かに険しさを帯び]
……偶然……にしても。
あんま、いい感じじゃないよね。
[微か、耳に届いたハインリヒの呟きに、こちらも小声でぽつり、と呟いた]
─広間─
[あの後ずっと寄り添うようにクロエの傍に居て。
時折聞こえる足音や話し声に耳を傾ける。
新たに人がやって来るのに気付くと、耳を向けるように顔を動かした]
…せん、きょー、し…。
く、でん…。
[声は小さく、近くに居るクロエ以外に届いたかは分からない。
聞いたことがある、と言うような響きを含んで居た。
こてりと、首が傾いだ]
[内容までは聞こえずとも、密やかに会話を交わすユリアンとハインリヒに何かを感じて]
……エリ先生は悪い人じゃないですよ。
[キツめの視線を投げ、低い声で言う]
[反応する声があるとは思わず、声の主であるユリアンをちらと見て]
偶然、だといいんだけどな。
[そう言って、思い出したように]
人・場所…そして、時…か。
御伽噺だと思ってたんだけどな。
[揺れるターコイズグリーンの輝き。]
(スニプル村、ゲルダ……。
最初の協会の勤めを終え、宣教師として初めて派遣された村。 そこで居合わせた一際熱心な女性、その傍らの吸い込まれそうな碧を持った少女、少し醒めた所があったか……、その名が……)
その眼は、もしかするとあの小さかったゲルダちゃん?
[キツめの視線と、低い声。
それを、真っ向から受け止めて]
……そんなん、俺、知らないし。
少なくとも、今のこの状況で、教会関係にいい印象抱けるかよ。
元々、俺は『陸』のカミサマなんて、信じてねぇし、信じる気も……。
[不意に、途切れる言葉。微かに眉が寄る]
……ねぇし。
[それでも、否定の言葉は、最後まで紡いだ]
[ふるるっ、と首を数回横に振る。
何かを振り落とそうとするかのように]
……人、場所……時?
なに、それ?
[それから、ハインリヒの方を見て、不思議そうに瞬いた]
[ゲルダの咎める様な声に目を向ければ、その視線に少し驚いて]
いや、そいつが悪いやつだとは思ってないさ。
ただ、教会ってやつが気に入らないだけで。
[あまり表情を変えることなく、思った事だけを返した]
あぁ…
[ユリアンの不思議そうな視線に気付いて、少し困ったように笑う]
オレの母親が子供のころ言ってた…御伽噺のようなもん。
人と、場所と、時、それが揃うと悪いことが起きる、って。
[どこか懐かしむように]
だから母さんはよく言ってた
「お前は陸に行ってはいけない。怖いものが居るから。
ここに居れば揃うことはないから」
って。
うちの母親も陸の宗教に影響されてたらしいから、なんか関係あるのか、ってな。
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