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無謀はしない。
そうすればいつか司も食べられる。
そうしたら音色にも追いつけるかな。
音色といっしょになれるかな。
[そんなことを呟きながら。
人の気配を探して動く]
…………虫の知らせ?
[マコトの言葉が、自分の料理への危機感を差しているとは、まるで気付かず。眉を寄せる]
……今夜も何か起こる、とか?
……、まーいっか。
稽古って、剣道だっけ?
[数秒、相手をじぃ、と見眺めるものの考えても判りそうに無く。
気のせいかと、当人は早々に気にしないことに決めたらしい。
一言脈絡無く呟いて、早々に話題を切り替える。
ラップの塊を、壁際に置いてあるゴミ箱へシュートを真似て放り投げる。
淵に一回当たって、ゴミ箱へ収まるラップに、小さく握り拳を作って]
……虫の知らせって、飯に?
[初めて聞いた、と思わず眉を寄せながら首を傾げる。
つーか飯作れたんだな、とちらり思いながらそこは黙っておく。
全く作れない自分がいう事では無いし、作って貰えるだけでも有難い]
[ぐるり、校舎伝いを足早に歩いていけばやがて薄紅の下へと辿り着く。]
[ここからなら、寮からも見えるし、走ればすぐに戻れる。そんな安心感からだろうか、足を止め、幹に背を預けるように座り込んだ。]
あぁ……そういえば。
この桜が植えられた経緯とか調べられないのかな?
[図書館で調べれば何かヒントが見つかるかも知れない、明日行こう、なんて考えながら見上げれば、視界はすべて薄紅に覆われて]
あの子……おうかだったっけ。桜の花と書くのかな?
―→桜の樹の下―
[頭上の仔犬を床に下ろすと、戸棚から取り出したグラスに
麦茶を注ぎ氷を入れて、一気に呷った。
喉の奥にまで沁み渡る冷たさに目を瞑る。
吐き出す息すら、ほんの一時だが、冷えていた。
口元を拭って、また一息。今度は少し、温い]
……、……………。
[喉につかえているような奇妙な感覚は、苛立ちだろうか。
流しそうとするように、再び注いで、杯を傾ける。
仔犬はじっと、それを見つめている。
微動だにぜず、ただ、眼差しがゆらりと揺れた。]
あ、いや、その。
[虫の知らせ、の意味をそのまま言うのはさすがにためらわれるものがあり、言葉を濁す。
それでも、続いた問いには、ふと、窓の外へと視線を走らせて]
何か……。
……今、起きている事が、俺の知っている事と一致するなら……。
[実際には、一致していると、『認識』してはいるのだけれど]
何も、起こらない……と考えるのは……楽観かも、知れません。
[ととと、と走っていく。
どこにいるのかななんて思って、少し笑ってしまう。
と、視線を感じてくるっと振り返る。
人の視線には慣れている。]
……あ、さくませんぱい
[ぴたっと立ち止まる]
………………………
[マコトの姿をじっと見つめ、もう一度、木刀に目を向ける]
………………………その、知っている事…まだ、話せないか?
ああ、うん。
剣道、だよ。
[アズマの反応に、一つ、瞬く]
『……気づいて……ない?』
[でも、この感覚は。
自分の力と、よく似ているような気がして。
恐らくは、同種の力を持つ者、なのだろうに、と思いつつ。
後半の疑問はやはり答えようがないので、笑顔で流しておいた]
[ヒサタカの問いに、一つ、息を吐く。
しばし、言葉を探して目を伏せて]
……正直な所……これがどこまで現実なのか、認められない……いや、認めたくない、部分は、あるんです、けど。
[途切れ途切れ、言葉を綴る]
……でも……俺にとっては、これは。
真夏の桜も……心臓だけを奪われる、唐突な人の死に方も。
二度目の事だから……。
……だから、俺が話さないと、ならない事……に、なるのかな?
[くるりと振り返った少女の姿が、何故か楽しげに見えた気がした。]
今晩和。
…寮、行くの?
[やはり微笑みを浮かべたつもりで、目だけは笑えていない。]
んー。
大丈夫だよ、リュウ。
[麦茶ばかりで腹が膨れそうになった頃、止めて。
きゅぅん、と小さく鳴く仔犬を抱き上げると、
給湯室を後にして、廊下を歩んでいく]
………腹が減っては戦は出来ぬー、だよな。
[冗談めかした独り言。
静寂の中に、虚しく響いた。
食事を求めているのか、
人の気配を捜しているのかは定かでなく。
ただ、食堂の前に辿り着くと、また、吐息を零した]
そうー。
[にこっと笑って]
バトン、多分部屋に忘れてきちゃって。
とってきたら、桜のところにいこうかなーって。
誰がやったのかって聞きに。
………………………強制する気はない。
だが、このままだと、全員が「何だか判らないもの」が隣にいるのかもしれない、と怯え続けなければならないのは事実だな。
[淡々と言う]
変わったこと、ですか?
特に何もありませんね。
[サラリと答えれば、そのままサヤカに近付いて]
ねえ、キリュウせんぱい。
先輩には欲しいものがありますか?
[覗き込むようにその顔を見る]
[淡々と告げられる言葉に、また、一つ息を吐いて]
……そうなりますよね。
それに……それだと、俺はただ、逃げるだけになる。
[現実からも、コトネの事からも、と。
その呟きは心の奥深くに零れるのみ]
ただ……俺自身も、ちゃんと『理解』が追いついてないところもあるんです。
そも、自分がなんでこんな事知ってるのか……とか。
それが、わからない訳ですし……。
[それでも構いませんか、と。
確かめるような声は、微かに震えを帯びていたか]
ん…そっか……。
事態が動いてないのは良いことなのかしらね?
欲しい、もの……?
[唐突な問いに、幾度かの瞬きを繰り返し。]
とりあえず今は、ここから出る為の力が欲しいかな?
……貴女は?
バトン?
[それを何かに使うのだろうか。そう思ったけれど、]
桜に、誰が。
[幹を殴り付けていた少女の姿を思い出す。]
……誰かが。殺した。
…それを、聞きに?
[少女の姿をしたモノのうたを。]
出るためのちから。
うん、ほしいですね。
わたしもちからがほしいです。
――だから、せんぱいの、ください?
[ニッコリと笑って手を伸ばす]
………………………逃げるのも、一つの選択だ。
だが…俺自身、いつまで無事でいられるのか判らない状況だからな。
どんなことでも、聞いておきたい、というのが本音だ。
[マコトに告げる声にも表情にも、相変わらず動揺の色は無かった]
ふーん、剣道か。
[凄いな、と。
相手の言葉に、適当にも取れる返事を返して。
直後ヒサタカの問いと、マコトの返事に緩く瞬くと、
近くの机に、座るような形で凭れ掛った。
会話に口を出すこと無く、ぼんやりと会話を聞きながら
マコトの『理解』している物言いを統合して、漸く。
先ほど感じた感覚の正体を理解する。]
あー…。
[小さく、一人納得するように声を上げた。]
うん、バトンですよ。
[にこっと笑う。疑問には答えずに]
そうです。
ゆめってはかないものじゃないですか
だったら、はかなくなれば、ゆめになるかもしれませんし。
[それは普段の様子であるのに、
どこか壊れてはいて]
ううん、ただ……ゆるせないだけですね
だって、ぜんぶ壊したんですよ
[せんぱいは?と尋ねる]
私の、力……?
[にっこり微笑むその表情は、なぜか遠いモノに思えて。伸ばされた手を避けるように彼女は立ち上がる、ヨウコを見据えたままで。]
それは……どういう、意味?
『…何の話、だろ』
[桜の少女の語る話を耳にしてはおらず、
フユの端的な説明しか聞いていないショウには、
(先程のマイコの話もまたそうではあったが)
中で交わされている話の内容は理解し難い。
今まで、漠然としかわかっていなかったのだ。
それがゆえに、考えるのを避けていたとも言えるが。
なんとなく扉を開くのが躊躇われて、
耳をそばだてたまま、息を殺す。]
[揺らいだ様子のないヒサタカの様子に、ふと、末姉の評価が頭の片隅を掠め、笑みが零れた]
……七恵姉さんが言ってたけど……ほんと、落ち着いてる人……ですね。
[その言葉は、どこか冗談めいて。
それでも、一度目を閉じ、開いた時には、瞳も表情も真剣なもの]
皆の……ケンや……他の人たちの命を奪ったのは……確かに、人であって人でない、もの、です。
……でも、その根源は……人の、感情。
何かをなしたい、何かを手にしたい……そんな思いが、高じて生じる……『憑魔』と、呼ばれるものたち。
だって、このままじゃ出ることもできないんです。
司が邪魔をするから。
それにわたしは音色にちかづきたいから。
そのためにも力がひつようなんです。
おなかがすいたら力もでないでしょう?
だから、ほしいの、あまいの。
[どこか幼い口調となって]
そこに、あるの!
[その手を心臓に向けて伸ばす]
[少女が何を言っているのかは多分半分も理解できていない。
ただ、]
…そっか。
そうだったね。
[瞳の奥で、何かが動いた。]
……あのさ、
[少女の問いには答えず。]
[アズマの小さな声に、ほんの一瞬そちらを見やり。
扉の向こうの気配には気づいても、何か言う事もなく]
『憑魔』は、人から生じて……そして、人に憑いて。
憑いた人間の、一番深い所にある願いを叶えるための力を人に与える……。
『憑魔』の力を得た者は、大きな力を振るえる、けれど。
……生きていくために…………他者を。喰らわなければ、ならなく、なる……。
そうして、人を喰らって、でも……。
そうする事で、願いからは遠ざかり、狂気に堕ちていくのだと……。
[訳のわからない言葉。]
……司?
……音色?
欲しい?
貴女……違うっ!!
[背筋に冷たい汗が流れるのを感じる。]
[じりじりと近づいてくるヨウコを見据えたまま、最小限の動きで伸ばされた手をとっさに払いのけようと右手を内から外へと振るった。]
[本来憑魔は、人間の心の奥の願望や欲望を刺激して、それを叶えるために、宿主に力を与えて邁進させる存在。
複数の憑魔が居た場合
互いの宿主に対して影響を及ぼし合うのだろうか。
それとも、単に個性の問題なのだろうか。]
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