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[自警団にまくしたて、その隙に宿の中へと入る。自分の後をつけていたティルには気づかないまま]
よぅ。
[口から出たのはいつもと変わらぬ挨拶で]
[闇の中に浮かび上がる、酒場の明かり。
きい、と音をたててそのドアを開ける。
見慣れた背中が立ち上がりかけるのが見えた。]
……エーリッヒ様。
[ドアに手をかけたまま、安堵の息とともに、彼の名を呼ぶ。]
え、わっ!?
[扉が開いてミリィの顔が見える。
ホッと安堵の息をついたら途端に手を引っ張られ、数歩もつれかかりながらも中へ。掴まれた手首に痛みを感じたがそれは隠して、ただ促されるままに部屋へと通される]
無事だったのなら何よりです。
ああ、絵を描く邪魔をしてしまいましたか。
[どこか力なくも、笑みと取れるものを浮かべて。
さてどこまで伝わっているのだろうかと悩む]
なら、痣くらい我慢するといい。
[エーリッヒに返す言葉も、また軽い。
その間に外から話し声が聞こえて、顔を動かした。内容までは掴み取れないが、自衛団員同士の会話にしては、少々、荒い]
誰か、来たかな。
[呟きと同時に、扉が開かれる]
ああ、バウムさんか。
[追いかけてはみたものの。何事もなく宿にたどり着いた]
…あー…狼だとしても、そう簡単には尻尾ださないよなぁ…
[自分で自分の浅知恵にあきれはしたものの。
自警団員と話して中に入っていくハインリヒを追いかけて、宿に向かう。
気がついた自警団員が何か言っているが、無視して素早く中に入った]
こんちはー。
[女将さんや中の人に挨拶をしつつ、中を見る。
ブリジットの作っている果物の塔に驚きつつも、お目当てのハインリヒの近くの席に座る]
ハインリヒのおっちゃんもこんにちはー。
[笑顔を作って、挨拶をした]
…大丈夫よ、姉さん。
何もしないで居ると、色々嫌な事ばかり考えるのだもの。
[大人しく休んでいるよりも、動いた方が気がまぎれると思い、
それに…あの自警団長をあんなふうにしたバケモノが隠れているのならば、見つけなければならない。
そう思って客席へ出ると、テーブルを拭き始めてみたり。]
あら、ブリスせんせ。
…塔は、天目指し積み上げるほどに揺らぎ、
倒れる事を恐れて地へと並べれば、それは塔にはならず。
…そういうの、でしたっけ?
……我慢するにしても、手首を痛めたら、ピアノが弾けんだろうが。
[アーベルの軽い言葉に、真顔で返し。
それから、呼びかける声を捉えてそちらを振り返る]
ああ、ユーディ。
[刹那、掠めたのは安堵の色か]
……騒ぎが起きたから……どうしたかと思ったけど。
そっちは、何事もないみたいだね。
ん、ああ。
しかし塔は容易に崩してしまってはいけない。
木の棒で成った塔ならともかくもだ。
そう、ともかくも!
[アーベルに話しかけられると、そんな事を言いつつも]
そうだな。そういえば喉が渇いた気もする。
何でもよい、貰おう。
[頷いて答え、ざわめきに続く戸の開く音にそちらを見る。ハインリヒの姿に]
やあ、今晩は。好調かい。不調かね。それも事実。
ブリジット=フレーゲがお邪魔しているよ。
[次に入ってきたティルやユーディットに向けても手を振った]
[見え隠れした小さな動揺の念。
それを発したのが、ついさっき己と同じ世界に足を踏み込んだ人物と知れば、それに対してさえ愉しげな哂いが漏れる。
低いそれは、赤き世界に小さな音として広がった]
で、噂をすれば――ってところかな。
随分、賑やかになったね。
[次々に入って来る面々に、そんな事を言いつつ]
厭なら面倒臭がらずに防衛手段を講じろ、
しなかったなら報いと思って我慢しろ、って、
言ってるだけですけど?
[真顔で返される場違いな言葉にも、口が減る事は無い]
[にこにことしたまま、オトフリートの正面に座る]
―――無事?
それは、私が人狼に襲われなかったってこと?
それとも、私が人狼だと思って、誰かに殺されていないかってこと?
[笑顔のまま、すらすらとそう告げた]
[つかつかつか、とエーリッヒの元まで歩いていく。
周りの客のことは見えていない様子。]
ああ、ユーディ。
じゃ、ないでしょうこの馬鹿ご主人様っ!!
[一気に声のボリュームをマックスにして怒鳴る。]
人がどれだけ心配したと思ってるんですか!?
[既に宿にいた数人から挨拶があり。一人一人、誰がいるのか確認をしながら挨拶を返し席に着く。後から入ってきたティルが珍しく自分の席の傍に座るを見て]
よー。ティル。俺のすぐ後に来たって事は…結構近く歩いてたのか?全く気づかなかったが。
[それとなく様子を見て]
村の奴らにひでーこととかされては無いみたいだな。…しばらくは一人では出歩かねーほうがいいぞ。めんどくせー話だけどな。
あ、わりーが煙草吸わせてもらうぜ。
[OKかどうかの返事は待たず、煙草を咥えて火をつける]
ならば、此の世は何より成った塔でしょう。
[ブリジットに目を向けると、彼女に話しかける姉の姿が見えたが、敢えて声をかける事は無く、頷きに了解の意を返して、奥から酒瓶を手にして戻って来る]
ワインは神の血、とも言われるんでしたか。
[卓上にグラスと共に、それを置いた]
[奥から出てきてブリジットに話しかけるノーラの姿を視界の隅に止め。
多少なりとも落ち着いて見える様子に、微かに安堵の息を漏らしつつ]
……はい、そこで理屈をごねない。
ま、今後度が過ぎるようなら、それなりに対処する、って事で。
[アーベルにむけて、こう返しておいた]
[あまりにもさらりと告げられた言葉にこちらが息を飲む]
ああ、ええ。
どちらも、でしょうか。
[しどろもどろな答え方]
私も冷静とは言い難いですが。
自衛団員を始めとして、皆殺気立ってきましたからね。
まぁ、無理もありませんが。
一人で居るのは危険です。
塔は希望の象徴であり絶望の象徴である。
力の証明であり無力の証明である。
崩れないからこそ塔であり、崩れるからこそ塔なのだ。
それ故に!
存在する限りは、祈る事だよ。
[テーブルを拭くノーラを眺めながら、その問いに語るよう返し。空いている方の手を広げ掲げてみせ]
[向けられた怒鳴り声に。
思考停止、数秒。
緑の瞳は、どこかきょとり、として]
あ……ああ。
……すまなかった。
[間を置いて零れたのは、こんな言葉]
そだね。
ギュンターのおじいさんが殺されちゃったんだもんね。
みんなが信頼していた人が……いなくなっちゃったんだ。
みんな……怖いんだよ。人狼が。
……私も、怖いよ。
あの強かったおじいさんでさえやられちゃったんだもん。
……先生も、怖い?
如何こう言う前に、他人に叱られないようにしたら?
[眼差しにも声にも、笑みを含んで言う]
言われても言われなくても解らないんだから、
たっぷり言ってやるといいよ。
[ユーディットの大声に、少し笑みを漏らしつつ。
タバコを吸うハインリヒの様子を伺いながら、話しかける]
うん。おっちゃんの後ろあたりにいたよー。声かけようと思ったら、宿ついちゃったし。
[こっそり尾行してた事は、あいまいに隠して]
ん?俺は大丈夫だよ、おっちゃんも心配してくれてあんがと。
[タバコの煙に軽く顔をしかめるが、何事もなかったように話し続ける]
そーいえばおっちゃん、しばらく顔みなかったけど、どーしてたの?村の入り口の騒ぎとか、気にならなかった?
表裏一体…かしらね。
塔は聳え立つが故に塔であり、いつか崩れる事で塔で居られる。
けれど、崩れてしまえばそれは…塔ではないということかしら。
[少女めいた容姿を残した小説家の、緑色の瞳を覗き込んで。
相変わらず一貫したものを、彼女は持っているような気がした。
それは少し、周りからはズレてはいるけれど。]
すまなかったで済んだらいいんです。
いいんですよ、本当に。それで何事もないならば。
[早口で捲くし立てる。]
でも何かあるかもって思うじゃないですか!
今日何があったか……状況が判ってないわけじゃないでしょう!
私がどれだけ……。
[はぁ、とため息をついて。]
ちっちゃい子供じゃないんです。考えてください。ちゃんと。
[ゆっくりと、それこそ幼い子供に言い聞かせるように言った。]
自衛団の方は……大丈夫だったんですか。
何もされませんでしたか。
[努めて感情を抑えて、冷静に聞こえるように声のトーンを調節して尋ねる。
が、それが逆に怖いことには気付いていない。]
…怖い、ですね。
日常が壊されて非日常を強要されるのは。
[ミリィの左手に手を伸ばす。
傷の治り具合を確かめようとするように]
しかし私は人狼よりも。
人間の方が怖いと言ったら…笑いますか?
[なるべく人通りの多い道を、と思って選んだ道だったが、殆ど人の気配がしない。
あんな事件が起こった後だから、皆家に篭っているんだろうとは今更だった。
窓の隙間から感じる冷たい視線だけは、時折感じる事ができた。
7年前から日常的に晒され感じてきた視線は、今が一番きついように思えた。
変わらないでいてくれたのは極一部。
もしくは、昔の自分を知らない人達。]
小さく、溜息をついて。
いつもより早く、歩き出した。]
[足早に前かがみに、歩いていたらドンと誰かにぶつかった。
軽くよろめいたが、辛うじて倒れずにすんだ。]
ご、ごめんなさ…。
あ、っ、ユリアン。
[申し訳なさそうな顔が一変して、嬉しそうなものへと変わっていったが。
彼から感じる穏やかでない雰囲気に、心配そうに見上げる。]
…どうしたの?何かあった…?
[ユーディットの大声にそちらに顔を向けた後、二人のやり取りに笑みを浮かべ]
まあ、場合によっちゃあんな風に怒鳴られる事もあるかもだしよ?
[冗談めかした後で、ティルの問いに小首をかしげ、数秒後に何か勘付いたらしく]
…どうした探偵ごっこか?
まあ、別にかまわねーけどな。
俺はこの宿に居るとき以外は大抵は家で寝てるぜ。
酒かっくらって帰るから、何かで目が覚めるまではぐっすりって奴だ。
…もっとも証明してくれる奴も居ないけどな。
お袋もどっかに連れていかれちまったしな。
[そう答えてから、少しだけ視線を外しティルを避けるように煙を吐きだした]
[笑う幼馴染姉弟には、一瞬だけジト目を向けたかも]
……状況はわかってるよ、嫌というほどね。
本当にすまない……迂闊だった。
[捲くし立てられる言葉に、静かに返し。
諭すような言葉には、頷いて。
最後の、抑えた問いに思わず右手を後ろに回したのは、多分無意識]
ああ、まあ。
丁寧な扱いは受けられなかったけど、大事はないよ。
[空腹と先程の自警団の言葉に不機嫌さを撒き散らしながら─と言ってもいつものように無表情なのだが─、広場を横切り宿屋へ向かおうとする。
と、横からの衝撃に少したたらを踏んで、ぶつかって来た人物に視線を向ける。
それは半ば睨むようなものになりかけたが、ぶつかって来た人物が誰なのかに気付くと、直ぐに掻き消えた]
…イレーネ。
……いや、さっき自警団の奴に捕まって。
[何か、と聞かれて不機嫌である原因を簡潔に話す。
その中には襲われたギュンターのことや、技師が戻ってこないことも含まれていただろう]
この世は何から成った塔か?
怒りだよ。
怒りは出来るものではなく溢れるものだ。
全てに内在しているものだ。
だからこそ鎮めるためには祈らねばならない。
祈りは流出を止める。
止めなければ……影は満ちる。
[アーベルに向けても返しつつ、持ってこられた酒瓶とグラスを見]
「このパンは私の体であり、このワインは私の血である」
[食せよ! とは宣言するよう高らかに言い]
聖餐。
神を食すのもまた、祈りでありしか。
そうかー。
やっぱり、先生でも怖いのかー。
[なにやら、うんうんと見当違いに頷いている。
後半の言葉には、些か神妙な面持ちで答える]
……笑わない、かな。
先生の言いたいことも、分かるつもりだから。
だけど、先生。
きっと、私の言葉のほうが、笑われる、かも。
[少しだけ、恥ずかしそうに目を伏せる]
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