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―個室→翌朝―
[結局部屋に戻ったきり広間に戻ることは無く。
後からライヒアルトが心配して見に来たならベッドに疲れて眠っている姿を見ることができただろう]
んーーー…
[比較的早く目覚めるのは普段の仕事の賜物か。
軽く伸びやストレッチをして、身支度を整えると部屋をでる。
今日はライヒアルトと同じか、少し早いくらいだったかもしれない]
悲鳴?
[聞こえた声は普通ではないことを知らせるもの、外から聞こえた声のほうに向かうと、ギュンターとベアトリーチェ、そのほかにも何名かいただろうか]
ぁ……
[短くもれかけた声を一度口閉じて噛み締め、それからゆっくりとギュンターの方へと近寄ろうとした]
─ 屋敷の裏手 ─
[意識のない人間を抱き起こすのは難しかった。自分は腕力がある方でもないし、恐怖で力もあまり入らなくて。
そんな時だったか、背後からかけられた声にビクッと振り向く。]
あ……クロ、エ。
[自分にとって唯一に近い友人の姿>>107を見留めると、青ざめ強張っていた表情が一転、今にも泣き出しそうな顔になる。]
う、うん。うん……。
[落ち着かせようとするかのような呼びかけに頷き、彼女と一緒にベアトリーチェを抱き起こす。
そして少しだけ落ち着きを取り戻して、ようやく少女の身体が熱いこと>>100に気づく。]
ベアトリーチェ……熱い? こんなに寒いのに……。
[人の気配に振り向くと、ベアトリーチェの悲鳴を聞いてやってきたのだろう人達がいた。
ベアトリーチェの背を支えながら、声を投げる。]
ギュンターさんが…! ギュンターさんが、狼に食べられたん、です…!
早く、屋敷に戻らないと危険、なのに。ベアトリーチェが、意識がなくて。誰か、手を貸してください……!
[誤った認識が混じった言葉で、助けを求めた。]
― 朝・個室 ―
[前夜のように風の音が気になるような事もなく、ぐっすりと眠った。
朝、まだ薄暗い内に目が覚めても。自宅のそれよりずっと柔らかく暖かいベッドから抜け出せずに、二度寝を決め込んでごろごろと心地よい時間を堪能していた]
……え、なに今の?
[けれど。悲鳴が聞こえれば、さすがに飛び起きて。
なにがあったかはわからないが、けが人や急病人でも出たのだろうか…と、服を着るのも面倒で、寝間着代わりの肌着の上に直接コートを羽織って服装をごまかし、薬物詰め合わせのカゴを抱えて部屋を出る]
― →前日/屋敷―
[復路の途中、往路は一度も躓かなかったシスターが三度に渡って転びかければ、男は溜息と共に説教めいた事を口にし。
その間に旅人には先に行かれてしまったかも知れない。もし待たせていれば、謝罪を口にした。
そして屋敷に辿りついて]
そうか。
暫く休んでおくと良い。
[不自然になりかけた呼び方>>74を気にした様子はなく、シスターには頷くのみで同行はせず。
男はその後暫く広間で過ごした後で、階上へ向かった。
己の個室に入るより先に隣室の戸を叩き、返答がなければ短い断りを入れて開く。
ベッドの上に横たわる姿>>123を確認したなら、中に踏み入ることはせずに扉を閉め、その場を去った]
狼に?
[ギュンターへ向かう足が一度止まってから、カルメンのそばによると]
落ち着いてください、カルメンさん!
誰かベアトリーチェちゃんを!
[普段より少し大きな声でカルメンに話しかけ、
ベアトリーチェのことは男の人にそれは任せた方がいいだろうと呼びかける。
自分がいうまでもなく誰かが動いたかもしれないが]
― 外 ―
[玄関を出れば、肌着の上に直接コートという服装は当然寒い。
けれどそんな事を気にしている暇もなく、いくつかの足跡を辿っていけば、すでに何人も集まっていた]
なに、があった…の?
[先客たちに問う言葉が途切れ途切れなのは、雪の中を走ってきて息が切れているからか、寒さゆえか。それとも、雪を汚す血の色に驚いたからか]
狼…?
リーチェちゃん、意識ない…って?
[薬や包帯などが入ったカゴを抱えて、カルメンの言葉>>125にきょとりと瞬く。
すぐに誰かがベアトリーチェを抱えるのでなければ、まずそちらに近づいて様子を見ようかと]
― →ギュンターの私室前―
[翌朝、男が部屋を出たのはシスター>>123よりも少しだけ遅く。
階段の前で一度立ち止まり、下ではなく上へ行く方へと足を掛ける。
家人のスペースである屋敷の三階へは、毎回ではなかったが、主に本の貸し借りの為に何度か訪れていた。
幾つか扉の並ぶ中で、真っ直ぐに家主の私室へと向かい、扉を叩く]
ギュンター殿、いらっしゃいますか。
[中に向かって呼びかけるも、返答はない。
外で叫び声が上がったのはその頃だったか]
─ →屋敷内 ─
了解や!
[カルメンさんから部屋に>>132っちゅー返答聞いて、了承の返事してから屋敷戻った。
ベスん部屋は遊びに行ったこともあるさかい、場所は分かっとる。
やから、桶に水用意したり、タオル取りに行ったり必要そうなもん持って屋敷の3階に上がってん。
ベスん部屋開けて机の上に持って来たもん置いて。
運ばれて来た時に場所分かるよう、扉は開けっぱなしんしといた]
あと用意するもんあったかいな…。
[ベッドはそれなりに綺麗に整えられとったけど、いちお手ぇ加えて直ぐ横に出来るようにしといた。
起きた時に水飲めるよう、水差しも用意しとった方がええかな。
そう思て一旦1階に下りてった]
……ぁー……。
[もっとも、目覚めに到らなかったのは、『エーリッヒ』としての意識だけで]
見つかった、か。
[『ラファール』としての意識は、確りとその叫びを聞いていた]
ま……仕方ない、か。
[そんなコエがぽつり、零れる。
宿る響きは、どこか平坦なものだった]
― 外―
[ギュンターの血の紅が、雪の白に目立つ。
それに近づくのは何となく怖いけど、意識がないベアトリーチェが心配なので、近寄って。
ユリアンが待ってくれてる間に、手首や首筋、額などに触れて]
熱あるね…ショックのせい、かなぁ。
あ、ユリちゃん邪魔してごめんね。運んであげて貰える?
[今すぐここで出きることはなさそうなので、まず広間なり部屋なりへ運んで寝かせてからだ…と。
待ってくれていたユリアンに場所を開け、頼む]
─屋敷:三階─
……なん……だよ?
[裏手から聞こえてくる、幾つもの慌しい声。
中々目覚めぬ意識も、それでどうにか覚醒へと至り、起き上がる。
一度頭を強く振ってぼんやりとした感覚を振り落とすと、外套を肩に引っ掛けて部屋を出た]
……何が、起きてんだ……?
[事態を把握しきれぬ状況で、口をつくのは惚けた呟き]
[闇の中に、少女と同じ背格好の少女がいる。]
[その少女は、背を向けている。]
[これはユメだ、と少女は認識する。]
[背を向けた少女は、少女自身にあまりにも似すぎている。]
[誰だろう、と疑問に思っていると。]
[くるり、と背を向けていた少女が、ユメと認識している少女を振り返る。]
[もう一人の少女の姿に、少女は小さく悲鳴を上げる。]
[振り返った少女の肌は―見えるところだけではあるが―朱い、朱い薔薇とツルに覆われていた。]
[なにより、もう一人の少女の顔は、少女を鏡に映したようにそっくりだったから。]
[もう一人の少女の唇が動く。]
[それを見た瞬間。]
[少女の意識は光の中へと戻る。]
[アタシハ、アナタ]
[もう一人の少女の唇は、そう動いたのだった。]
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