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言ったでしょ、”今は”殺さないって。
そうやって上からも言われてるのよ。
アタシだって殺す方が楽だわ。
手加減する必要無いもの。
[面倒そうに肩を竦めて。
その様子は随分と気楽なように見えるか。
かと言って油断をしているわけではない。
相手が倒れていながらも得物を離さないなら尚更。
手負いの獣は何をしてくるか分からない]
殺しちゃったら後で怒られるのアタシだしぃ。
へぇ〜。
キミのご主人様も、ややこしい事言うんだねぇ。
[ルージュに言いつつ、他に人がきたならばそちらにも視線は流すだろうか。
体は、動かないが。]
あらやだ、回収スタッフの前に別のが来ちゃったわね。
[現れたアーベルの姿に真紅の瞳を瞬かせる。
その後ろを見れば、先程自分が模倣した少女が見えて来るか]
あははー、イレーネじゃないってバレちゃったわぁ。
[先程までユーディットと話をしていたことを口に出し、楽しげに笑った]
うっさい!
[それこそくわっ、と勢いのありそうな表情で軽く日碧を睨む。
ぷりぷりと怒り散らす様子がなんとも機嫌の悪い猫にも、夏の夜に冷えたアスファルトの上で転がって涼む猫にも見えた]
…よく言う。
お前みたいなのが一番こええんだよ。
済ました顔して、何考えてんのか、何したいのかまっじわっかねえんだもん。
[物凄く困った顔をして。
ふとアーベルのしていたことを思い出す]
…泣かないでくれ。
[同じような優しい言葉は出てこないけれど。
数歩近寄ってその頭を撫でる、というかその上に手を乗せようと]
[銀の軌跡を追うにつれ香る。
この匂いは何だっただろうか、何処で嗅いだのだろうか。
そんな思考に答えが出る間もなく、目にする光景に]
ユーディ――ット。
[紅に沈む見知った姿。
素足がぱしゃりと、血に降り立つ]
どうし、たの――?
[スカートが汚れるのも構わず、その傍らに座り込む。
翼が触れる事を躊躇する手の代わりに、彼女の方へと]
おいおい……。
確かに、好き勝手に、って話にはなってたけど、お前。
[挙句にいきなり落ちるかよ、と。
笑うユーディットに呆れたように声をかけつつ]
……あんた、は……。
[そこに立つ、真紅に蒼を細める。
ナターリエから聞いた話との齟齬。
意識の奥を掠めるのは、以前裏の仕事場で耳にした噂]
[オトフリート、否、見知らぬ女性の言葉には]
私じゃ、ない――?
バレた――?
[この光景の前で笑う姿には、険のある眼差しで]
どうして、私を知ってる、の。
うちのご主人様は我侭言い放題よぉ?
じゃなきゃこんな『遊戯』なんて無かったわよ。
[ぶーぶーと膨れて文句を言う。
その最中、ブリジットが現れると真紅の瞳だけを向けて。
特に何かを言うでもなく笑みを浮かべる]
あははははー。
ボク、やられちゃった、せっかくキミには不戦宣言したのに、ごめんねー。
[アーベルにはにっこりと笑いつつ、傍らにきたイレーネを見上げるように見て]
ん、やっぱりイレーネさんはイレーネさんだねぇ。
偽者だったんだ、そりゃそうだよねぇ。
やられちゃったんだ、けど、まだ死なないらしいよ、ボク。
なんだかそろそろ痛みも感じなくなってきててやばそーだけど?あは。
[赤い姿の向こうに、動く影が二つ。
赤の海に、何か――誰かが、沈んでいた。
鉄を含んだ、知らない、否、よく知っている臭いがする。
視界がぐらぐらと揺れる。
まるで縋るように、端末を強く、握り締めた。]
[何処までも猫に近い相手の言動に、
あはは、と小さく声を上げて笑う。
続く言葉に、笑みを浮べたままゆるりと首を傾いで。]
…あれ。随分な言われようですね。僕。
何をしたいかなんて、決まってますよ?
――ずっと前から、ね。
[翠を瞬いて、ぽつりと言葉を返す。
尤も――何をしたいのかと。其れを問われた所で、
笑みしか*返って来ないのだろうが*]
[アーベルとイレーネが飛び去っていったあと、屋上に一人残された形。
だがそのことを気にする様子もなく、虚空を見つめる。]
……私は…ナターリエ・ヘルゼーエン。先見の神子。
組織から、Schwarzes・Meteorの総帥アルトゥル=ウルリヒの未来を見るために送り込まれた。
相棒は組織のスパイ。でも、ここに来る途中。森を移動していたら。突然襲ってきた黒い影に襲われて。彼は私を守ろうとし。私は逃げたけど。黒い影は追いかけてきて。体力のない私。すぐに追いつかれ。名前を聞かれて。目を覗き込まれて……
[ぶつぶつと空言を呟く。
その間にも彼女の中では、ぽろぽろと『ナターリエ・ヘルゼーエン』の殻は剥がれ落ちていき……]
[球体は意志を失ったのか、コロコロと転がり。
言葉には頷くものの、むしろ先程より酷く
少女はてぃるが近づくのにも気付かず
……触れられて、気付いて、顔を上げて。]
…………会いたいのに……
[と、呟く。
呟きにモニターにちいさなノイズ。]
あら、何かしら。
そんなに見つめないでよ、照れるじゃなぁい。
[アーベルが目を細めこちらを見てくる様子には、頬に手を当て軽くしなを作り。
手を当てた頬は僅かに朱に染まるか。
イレーネの問いには]
どうして?
アタシもこの『遊戯』に参加してるんだもの。
他の参加者を知っててもおかしくないでしょお?
[こてりと首を傾げる]
にせ、もの。
私は、私――私しかいない。
[ルージュに向ける視線の険しさはそのままに。
やられちゃったんだ、と言って相変わらず口癖のように
笑うユーディットには――泣きそうに――少し眉を顰めて]
こんな痛いじゃんけん、知らない。
どうして――?
どうして、痛くないようにできなかった、の。
[それとも、これが理不尽な現実]
…会いたい?
[ぽふり、と少女の頭の上に手を置く。
けれどそれ以上はどうすればいいのか分からず。
呟きを拾うとただ尋ね返して]
…何だ?
[ノイズの僅かな音が耳に入り首を傾げた]
ま、仕方ねぇだろ。
勝負なんざ、時の運だし。
[別に謝る事じゃない、とため息混じりに言って]
ま、取りあえず、当分殺されはしねぇだろうから、今の内は寝とけ。
[それだけ言って、意識は目の前の真紅に集中……しかけて、なんだかがくっときた]
……野郎にんな反応されても、嬉しくねぇよ。
う え ええぇぇえ……
や だやだやだ、
[気持ち悪い。
泣き出すのでもなく、顔を顰める。
頭を抱えて、蹲った。
世界が、遠い。]
[イレーネの言葉には、口の端を上げて笑顔を作りつつ、]
あははは。
ボク、人が痛い顔するの見るの好きだからなぁ。
自分が痛いのは、やだけどさぁ。
でも多分、これが「遊戯」なんだよぉ。
[眉をハの字にしながら言った。]
[当然、と言わんばかりのルージュの仕草には]
さんか、しゃ。
ゆう、ぎ。
[――遊戯――遊び――戯れ――]
こんな遊び、知らない。
こんなの、遊びじゃない。
こんな遊びなら、私、やらない。
[威嚇するように、翼が毛羽立つ。
冷めたその羽先は文字通り、刃先のように]
あは。
ただ、ボクの目下の困りごとは…、ご主人様に捨てられちゃうかもしれないって、事、だよねぇ…。
[ブリジットにも目線を流した後、言葉はだんだん小さくなり。
手に握った大きな鎌は、ぐなりと揺れるとその形を変え、持ち主の手首に腕輪のようにして嵌った。
そのまま、ゆっくりゆっくりと上瞼が下瞼に近寄り――]
あー…ねむ……
[広がる赤い海の中、黒鳶色の瞳は瞼の裏にその姿を*隠した。*]
[コクリ]
……………ユリアンに
[頭上の僅かな重みに、言葉が零れる。
……また、モニターの画像が瞬時乱れ。
モニターにはグリッド上に赤い点と青い点。
赤い点の脇にはユリアンとエーリッヒの名
そうね、アナタはアナタ。
アタシはアタシ。
けどアタシは時には他人に成りすます。
アナタの姿、ちょっとお借りしたわぁ。
[険が篭ったままの視線を向けてくるイレーネにクスリと笑いながら告げる。
楽しげに真っ赤な唇の両端が吊り上がったが、聞こえたアーベルの言葉にそれは下へと下がる]
あー、差別はんたーい!
心はオンナノコなのにぃ。
[酷いわぁ、と言いながら両手で顔を覆い泣いた]
[……振り]
[遠く、ブリジットの呻くような声は耳に入っただろうか。
微かに目を細め、やはり嫌悪が向くのは目の前の紅]
人が痛いのも、自分が痛いのも、駄目。
それが遊戯なら、私は、そんなもの大嫌い。
大、嫌い――。
[ふわりと翼が傷口の上に翳される。
先端に集中する熱、羽根が溶け出し数滴透明な液体が落ちる。
それはそっと傷口に同化するように。
それに気付いたか者がいたかどうかは、分からない]
[虚空を見上げていた頭が、ガクンと落ちる。
俯き、顔色の伺えない状況で暫し静止していたが、やがて細かに肩を震わせ]
………くす。
[小さく笑みを漏らすと、ばっと前髪を掻き揚げる。
そこから現れたのは、ナターリエ・ヘルゼーエンの微笑みとは異なった、嗜虐的な色を多分に含んだ微笑み。]
あーあ。さすがにそろそろ限界やったか。
まったく、最後の最後に銀翼のやつにネタばらししてしまいおってからに。
せっかく、おもろいことになりそうやったのに。
[泣き真似からけろっとした表情に戻すと]
やらないなんて言ってられないわよ。
アナタだって既に参加者。
いずれやらざるを得なくなるわ。
そんな素敵な力があるんだもの。
[イレーネの背中で逆立つ翼に視線をやる。
その少女がここへ連れてこられた大きな要因]
[目端でユーディットが瞳を閉じるのを見れば]
ちょーっとやりすぎたかしらねぇ。
回収前に死ななきゃ良いけど。
[加減難しいわぁ、などと呟いて。
しばらく後、手当て可能なうちにユーディットはスタッフに回収されることだろう]
[ブリジットの声に、視線を一瞬そちらへ流す。
細められる、蒼。しかし、言葉は紡がれない。
ユーディットが目を閉じる様子、イレーネの行動。
目の前の真紅へと視線を戻しつつ、それらを見やり]
……泣き真似すんな、気色わりぃ!
[一刀両断]
…ああ。
[なるほど、ユリアンはこの少女の絶対存在なのだなと。
おぼろげに理解する]
この座標軸だと、廃墟区画か。
大して遠くはなさそうだが。
[脇から操作盤に手を伸ばし、幾つかの操作を加える。
グリッドに合わせるように地図と映像を呼び出して重ねる。
それが簡単にできてしまうのは少女の能力の名残なわけだが]
直接行くか。
或いは君から呼ぶ手段はないのか?
――……………、
[涙は零れない。
泣き方を知らないように。]
痛いのは、嫌、
だけれど、わたしは……
それなら。
[ぽつり、ぽつりと、声を落とす。]
[そう言うと、んーっと伸びをして、手足の柔軟運動に入る。]
あー、肩凝った肩凝った。
他人の意識に体使わすと、疲れてもうてしゃーないわ。
出来るなら、もっと効率的な体の使い方してほしいとこやねんけど。
[そこまで言うと、にまりと哂い]
ま、しゃあないか。そんなん『見える』の、うちくらいなもんやろうし。
[そう言いながら、バキバキと凄い音の鳴る柔軟運動を続ける。]
やらなきゃいけないなら、それは遊びなんかじゃない。
貴女にとって遊びでも、私には遊びじゃない。
だから、私は遊ばない。
これは、遊びじゃない――っ。
[死ななきゃ良いけど、という軽い呟きに
翼は制御を離れて鎌首を擡げる。
羽先が針のように、勢い良く紅を縫い止めようと]
いやぁん、アーベルちゃんがひどぉい!
アタシ傷ついちゃったぁ。
[今度はうるうる。
本気なのかわざとなのか。
その様子からは計り知れない]
[あー、こいつ調子狂う、と思いつつ、額に手を当てる。
カッカとしたら負け、そんな事を考えた矢先に聞こえた声に]
……落ち着け、イレーネ!
[白の翼の動きに、とっさに静止の声を上げていた]
[データベースに入れられているデータ。実はその中に、彼女は要注意人物として登録されている。]
名前:フィーネ=ブリアー(Fine=Briah)
年齢:16歳
通り名:終焉
武装:サバイバルナイフと拳銃
スタイル:跳弾をばら撒きながらのナイフでの近接格闘
特殊能力:事象を数値化して認識する能力
「全てが数に見えるねん」というのは、昔潜入を許した際にカメラ越しに当人が言い残した言。
ありとあらゆる組織・団体から依頼を受けては、殺人窃盗誘拐までを呵責なく行なう特A要注意人物。
その目的は一切不明。テロ組織と強い繋がりがあるという情報あり。
[ぐしぐしと涙を止めようと…しながら
てぃるの操作をおともだちを抱えて眺め]
…………行く。
[てぃるの言葉に小さく。けれと、きっぱりと。]
[呼び出すしゅだんには触れず]
……撮影
[球体を一つ拾うと、レンズをモニターに向け]
[地図を撮影保存すれば、そこへ向かおと]
[静止が彼の声でなければ、止まらなかっただろう。
咄嗟に翼の動きに戸惑いが生じる。
その切っ先は空で止まったか、それとも、
勢い余ってそのまま何某かを貫いたか――]
だって――だって――っ!!
[握り締めた拳、何故咎めるのだと訴える表情は
行き場のない感情に歪んで]
そりゃあアナタ達にとっては遊びじゃないわよねぇ。
でもあのお方にとっては遊戯でしかないのよ。
アタシ達はその遊戯の駒。
決着がつくまでこれは続くの。
理解してくれなくても良いわ。
しようがしまいが、ここからは逃れられないんだもの。
[クス、と笑みを漏らす。
イレーネの翼がこちらへと向かって来ると一度瞳を瞬かせ]
ちょっと連戦は勘弁してくれなーい?
これでも結構力使ってるのよぉ?
[針のような羽先が近付いても調子は変わらず。
アーベルの制止も聞かず尚も羽先が近付くようなら、未だに分散していた影の槍がルージュの前に現れ、鍔迫り合いのように押し留めることだろう]
……それでも。
いきるにはそれしかないんだよ?
[ゆらりと立ち上がり、
視線を向けたのは、イレーネに対してだった。]
いきられなかったら、意味が無い。
いきていなかったら、何も無い。
[彼女とは対照的に、声は静かだった。
表情は、負けないくらいに、歪んでいたけれど。]
あたしたち――?
貴女は、自分が遊び道具でも平気なの?
変、変、おかしい、おかしいよ!
もし、それを理解してここから逃げられるとしても。
そんなもの、理解したくも――ない。
[静止しきれなかった羽先は影の槍に阻まれ、
すぐに元の翼の形へと戻される。
まだ羽先は怜悧な輝きを宿したまま]
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