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[それから子供はふと気づく。
どうして今までと違うんだろう。
お祭りだから、かわったのかな?
ううん、それはおかしい。
子供は首を傾げた。]
去年もいたのに・・・
[でも、子供は子供。
嬉しいことだからいいやと笑う。]
[子供はとことこ、村の外れに。
いつもの木の実をとりにいった。
はず。]
・・・?
[でもなんだか、同じところをくるくる回る。]
困ったなぁ。
[小さな声で、呟いた。
いつもと同じ道を、
*すすんでいるはずなのに*]
[自身で思っていたよりも疲れていたのか、それとも……他に要因があったのか。
いささか寝過ごしてしまい、飛び起きたのは太陽が真上にかかろうとする頃。]
すみません…でした……。
[恐縮しまくって先輩に頭を下げるも、起こさなくていいと言われていたとの事で。更に頭が下がったのは言うまでもなく。]
[主親子が散歩に出掛けるのを見送って。
寝坊した分まで張り切って、別荘中を駆け回る。
ぱたぱた。ぱたた。
両手に抱えた真っ白なリネンが、花弁のようにひらひら揺れる。]
[少女は、見慣れぬ部屋で目を覚ました。いつもより高い天井、少し広いベッド。森の中とは違う空気。しばらく首を傾げて、ああそうだったと思い出す。今日から祭りが終わるまで、街の宿屋に泊まっておいでと祖父に言われたのだ。毎夜人の数倍の時間をかけて夜道を行き来する孫娘を心配しての配慮だった]
明日になったら、おじいちゃんに何かお菓子を買っていこう。
[お下げを編み直しながら、少女は呟く。森番の仕事に祭りの休暇は無く、祖父が会場にやってくることはない。けれど、土産話をしながら一緒にお茶を飲めば、きっと喜んでくれるだろう。けれど、それは明日の話。今日は1日、祭りを楽しむつもりだった]
[つやつやとした赤い髪を念入りに編んで、少女は鏡を覗き込む]
がんばるのよミリィ、今日こそきっと。
[鏡の中の少女は、僅かに頬を染めている。スカートについた大きなポケットの中には、街でベビーシッターのアルバイトをして貯めた少女の全財産を入れた財布が入っている。どうしても、このお金で買いたいものが、少女にはあった]
……戻ろう。
[子供は、遂に諦めた。
諦めたから、踵を返した。
踵を返したら、なんと迷路を脱出した。]
……なんだろう、これ。
[少し首を傾げて、酒場へ向かうことにした。
出られない理由なんて、まったく浮かばなかった。]
あら?
こんにちは、椋鳥さん、こんなに寒いのに餌を探しに来たの?
そうだ、クッキーがあるわ。食べる?
[真っすぐ祭りの広場に着くのは、やはり少女には*無理らしい*]
─工房前─
[日々、賑やかさを増す通りの一画。
そこに、広場の楽団の奏でるものとはまた違った音色が響いている。
音の源は、宝石工房の前。
ランプの灯りに煌めく細工の並んだ台のすぐ隣。
木箱の上に腰掛けた青年が紡ぐ、オカリナの音色が澄んだ空気に響いて行く]
[音色に引かれた観光客が足を止め、次いで、煌めきに目を止める。
声がかけられれば音色は止まり、二言、三言言葉が交わされた後。
時に、煌めきは足を止めた者の手に渡り。
時に、それらは全く動く事無く。
いずれにしろ、ランプの灯火の下で、キラキラと幻想的な光の粒子をこぼして行く]
ふぅっ……まーまー、かね?
[元より、大した売り上げは期待してはいないけれど。
それでも、造り上げた者たちが誰かに喜ばれるのが嬉しくて、つい、笑みが浮かんだ]
……にしても、なー。
[しかしてやはり。
『今の状況』に対する頭痛は尽きない訳である。
オカリナを吹いている間は意識を集中し、力の流れを辿っているのだが、どう考えても状況がよろしくない。
ていうか、自分的にはかなりヤバイ]
『王も、今回は本気かなー?』
……冗談になってねーよ、それ。
[相棒の突っ込みに、ため息がもれる]
…はぁ…
[小さく溜め息をついた。
外の賑わいは祭りの気分。
自身も心がはずむ…はず、だったのだが。
昨日の違和感、そして、今朝方見た夢。
夢にしてはハッキリと覚えていて…しかも、とてもじゃないが、良い夢とは思えなかった]
…
[ランプを眺めていく人々には微かに笑みを携え…
しかし、心内では何とも言えない…何かがあった]
甘くて、おいしくて、しあわせ。
[子供はにこにこ笑って、
一袋、買った。五つ、入ってる。
ちょっと考えて、もう一袋。
それからもうちょっと考えて、一つ、別に。]
……幸せなきもち。
……だぁいたい、俺がおんでて来たのだって、誰のせいだと思ってんだか、あのバカ親父。
てめーが情けねぇからだろっての、ったく……。
『フェーン……』
なんだよ?
『……同じ血が流れてるんだよ、フェーンにも』
……言わんでくれ。
[その突っ込みは、かなり凹む]
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