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…───ううん。
[明確な意思をもって首を振る。
きゅ。と、餌になり得る幼馴染を腕に抱いたままに]
… 厭なんかじゃ、ないよ。
―― 村はずれ ――
人狼
[ぽつりと呟いた。狼の仕業でないことは、旅人の遺体を見たときから分かっていた]
…………くそ
[がん、と積み重ねられた板を蹴り飛ばす]
[別に隣に人食いが生きてようと、殺人者が生きてようと、構いやしなかったのだ。自分が堕落と退廃の影を持っているように、母や祖母が自分に見せる顔とは全く違う嫌らしい表情で互いを罵り嫌がらせを積み重ねたように、それらを知っていながら父や祖父がそれを放置していたように]
……………
[たとえ村の中の誰かが人を食ったのだとしても、もっと上手く隠せばよかったのにとしか思わなかったのに]
…大丈夫?とはとても、言えないけど…
――、ん。
[カチューシャは、思っていたよりしっかりしていると思って
かける言葉も上手く見つからず、首を傾けた。
そっと手を伸ばすと、彼女の腕に指先は触れるか]
…もう、いっぱい、泣いた…?
[問う声は優しげ]
[運ぶのに手を貸せと言われれば頷く。他には劣るけれど、非力では無い心算だ。
カチューシャの元に行くキリルとロランを見送って、再び前方に目を向ける。]
……。
[マクシームに声を掛けるユーリーを、黙って見つめる。
そちらへの答えは、当然ながら返せない。]
……空いた小屋なら、確か川辺に。
[代わりに、心当たりを一つ告げる。
昔僕が教えを請うた老人がいた場所。今は誰も使っていない筈だった。]
ゆっくり悼んで遣れなくて済まないな。
[一人紡ぐ声は幼馴染と話す時の音調。
いつもなら直ぐに返るはずの声は聞こえず
募るのは寂しさだったろうか]
僕は――…
シーマ、キミを襲った犯人を赦せないかもしれない。
仮令、それがこの村の誰かだったとしても……
[マクシームの亡骸の傍で思いを吐露する]
[代わりに泣いてくれる人がいるから、落ち着いていられる。
キリルの背を軽く宥めるように叩き。
優しい声で問いかけるロランに小さく頷いた]
うん……まだ、お兄ちゃんは、見てないけど……
[伸ばされるロランの手が腕に触れる。
幼馴染二人から与えられる温もりに、じわりと涙がにじんだ]
―― 一見獣の仕業に見える。
だが、声…悲鳴は聞こえなかった。
マクシームが用を足しに立って、俺は篝火の近くに残ってたんだ。
火の燃える音以外は、聞いてねぇ。
聞いてたら、ここまでなる前に、……ッ。
…ロラン、
[幼馴染を抱きしめたまま、同胞の囁きに眉を寄せる。
悲しいのだか辛いのだか、感情は混乱するけど]
だい、じょうぶ。大丈夫だよ。
[揺らぐ心のままに揺れる声]
そっか。
泣かずに我慢、してるんじゃないかと思って。
[和らげた声の侭に、指先だけ彼女に触れて。
すいと撫で降ろしてそっと離した]
…最後、見たいなら、行く?
後悔しないように…
[見ておけばよかった、と思わないか、と尋ねる]
[レイスが心当たりの場所を言うのが聞こえた。
マクシームへと向けていた意識がレイスへと向く。
一瞬眸が揺れてしまうのは
語るを聞かれたらしい事への気まずさゆえ]
ん、川辺に……?
[小屋の存在を思い出そうとはしてみるものの
何処にあったかは浮かばなかった]
そ、か。
あるなら、其方に運ぶのも良いかな。
[こく、と頷きをみせる]
[優しい幼馴染の声が、身体を通して響いてくる。
とん。と、宥めるような優しい感触。
ボクはスンと鼻を啜った]
ごめんね…カチューシャ。
泣くのは本当は、ボクじゃないのに、
[間近に幼馴染の顔を見る。
彼女の目が泣き腫らしているのをみとめれば、
またじわりと新たな涙が滲んだ]
───…うん。ありがとう、ロラン。
[優しい響きに、一度瞳を閉じる。
再び目を開けた頬に、苦笑が滲んだ]
ボクが守るって、言ったのにね。
――お兄ちゃんに、会いにいこう、とは思う、けど。
一人じゃ怖かったから……
一緒にいってくれる?
[ロランが尋ねたことへの返答として幼馴染二人に、頼んだ]
もちろん。
…車椅子、押してくれる?
[幼馴染の声に、笑み作って頷く心算だったけれど、
少し顔はゆがんでしまったな、と、自覚する。
キィと高い音を立てて車輪を回し、玄関へと向け方向を変えた]
[ミハイルから聞いた未明の状況。
マクシームを襲ったのが獣である可能性は薄れ
人狼という存在がじわ、と大きくなっていた]
――…自分が襲われる、って状況で
悲鳴をあげない理由って、何があるかな。
[広場にいる者に問うように言葉を紡ぐ]
気付く前に口を塞がれた、か。
――…いや、篝火を焚いて警戒してたのに
近づく足音に気付かない、なんて……
[考えを打ち消すようにゆると首を振り]
……、……マクシームが警戒しない、相手。
[自分を含め、村の者には警戒せぬだろう。
甘い幼馴染の事を思えば、は、と溜息が漏れた]
[キイ。と、高く車椅子が軋む。
先は押した車椅子の背後の位置を、
今度はもう一人の幼馴染へと譲った。
震える息を吐いて、袖で目元を擦る。
気がついて扉へと駆け寄り、車椅子の先へと扉を開いた]
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