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村は数十年来の大事件に騒然としていた。
夜な夜な人を襲うという人狼が、人間の振りをしてこの村にも潜んでいるという噂が流れ始めたからだ。
そして今日、村にいた全ての人々が集会場に集められた……。
村の設定が変更されました。
『それは、万聖節を控えた10月』
『空を覆う鈍色の雲を遠く閃く稲妻が切り裂き、重く湿った風が嵐の先触れを告げる、そんな夜』
『自警団長アーヴァイン=ファリーは、今や日課となった町のパトロールを終えて、家路につこうとしていた』
『嵐に備えて早じまいした店が軒を連ねる、閑散としたメインストリートを抜けて、自宅へと続く路地を曲がろうとした時』
『しかし疑念は長くは留まらなかった』
『雲の間から落ちてきた大粒の雨と、雷鳴の轟きが、アーヴァインを自宅へと追い立てたからだ』
『何も知らず無為の眠りを貪る者達は、やがて知るだろう』
『彼らの恐怖を、怒りを、悲嘆を、そしてある者には恐ろしい歓喜を携えて……彼らが、やって来たことを……』
書生 ハーヴェイ が参加しました。
[決して照明を落としているわけでもないのに薄暗い、裏通りの骨董品店。
骨董品店……と言えば聞こえはいいが、ようは古い物好きの店主が趣味でやっているにすぎない小さな店。
その店内、訪れた客に紅茶や菓子を振舞うのにも使われるテーブルの上には、今は重苦しい沈黙が張り詰め。
それを挟んで、店主の老人と、彼の孫である青年とが、言葉を交わしていた]
……で。
少ない稼ぎの大半を注ぎ込んで、素性も知れない相手から買い取ったのが、この奇妙なナイフですよ、と。
そう、言いたいんだな、じいちゃん?
[ため息混じりの問い。
祖父は先程までの勢いはどこへやら、もごもごと決まり悪そうに口ごもっている。
二人の間にあるのは、気まずい空気と奇妙な形をした一振りのナイフ。
どうやら色々と装飾が成されているらしいが、すっかり汚れたそれは見る影もない]
まったく……。
[食うにも困っているようだったんでなあ、と呟く祖父に、またため息がこぼれる。
お人好しというか、なんというか。
その気質のせいで、一体何度ガラクタを掴まされたのか。
そう、言いたい気持ちもあるが、しかし]
まあ、買い取っちまったのは、仕方ない。
しかし、じいちゃん、頼むから金を動かす時は、俺に連絡してからにしてくれよ?
無駄遣いさせてる、って、俺が親父や姉貴に怒られちまう。
[苦笑めいた表情で言えば、祖父はわかっとるわい! と返してくる。
いつもと変わらぬ反応に、はいはい、と言いつつ、テーブルの上のナイフを下に敷かれた真紅の布ごと拾い上げる]
……とにかく、これは俺が預かるから。
[じいちゃんに任せると、今度は捨て値で手放しそうだし、とはさすがに言わなかったものの、意図は伝わったらしい。
むすっとする祖父の表情から読み取ったその感情にくつり、と笑いつつ、丁寧に布に包んだそれを鞄に入れる]
じゃ、俺は買い物行ってくるから。
[にこりと笑って言ってから、外に出る。
背後で祖父が何かぶつぶつと言っているのは、聞き流した]
[店から出れば、鳴き声と共に飛び込ついてくるしなやかな黒。
愛猫のウィッシュだ。
じゃれ付いてくる猫を引き連れるようにしつつ、嵐の跡の残る道を、歩く]
昨夜はだいぶ荒れたようだが……割と、平和なもんだ。
[呑気な口調で呟きつつ。
さて、怪しい通りすがりから、祖父の年金と引き換えに押し付けられたというこのナイフをどうしたものやら……と。
そんな思案をめぐらせて]
お嬢様 ヘンリエッタ が参加しました。
[町の中、こぢんまりとした小さな家。
白熱灯が寝台に座る部屋の主を照らす。
月の煌きと星の輝きよりも近い、
人工の光に映し出される少女の姿。
肌は白の陶磁器、円い睛は燃える紅玉、
膝の上にはブラウンのティディベア。
ぐるぐる幾重にも巻かれた髪に、
ふわふわ裾の広がるワンピース、
ゆったり羽織ったケープは暖かく、
リボンとフリルがたくさんで、
真赤で彩られて、
真白に飾りつけられて、
まるであまい苺のケーキのよう。]
[小さな机の上の、小さな長方形の箱。
吹き荒れる砂嵐の音が人の声に代わり、
きょう一日の出来事を綴っていく。
けれど少女の耳には届かずに、
虚空で、むなしく、霧散した。
だって、遠くの話なんて、何の意味もない。]
[室内の音が跡絶えれば、
室外の音が聞こえてくる。
開かれた窓の外へと手を伸ばす。
昼の空気とは違って、
夜の空気は冷たくて、
秋も深まり、雨に浸されれば、
なお、いっそう。
顔だけ出して、息を吐く。
白くは染まりはしなかったけど、暖かい。]
村長の妻 エレノア が参加しました。
今日は風がすこし、湿っているようね…?
[彼女の話しかける先には、誰もいない]
あら、それでも出かけたいの?
しょうのない子…。
[部屋の中で独り、ころころと笑って]
そうね、お友達に会いたいものね…。
勿論わかっているわよ、シャーロット。
[白のロングスカートを捌き、階下に下りる。
メイドの差し出した白の帽子をかぶってから、誰かを待つ仕草]
それじゃあ、いってくるわね。
[送り出すメイドにほほ笑んで、家を出る。
楽しげに笑いながら歩く姿は、まるで娘と出かける母親のよう]
[けれども彼女は、独りで道を、歩いているのだ*]
学生 ラッセル が参加しました。
はい、勿論。
読むから借りて行くんですよ。その為の図書館でしょう?
それにあまり毎日長居しても迷惑でしょうから、残りは部屋で。
[柱時計の長針は、赤毛の彼――ラッセル=ダウエルがここを訪れてから丁度6周目に差し掛かったところだったろうか。]
雑貨屋 レベッカ が参加しました。
あら…雨?
[学校帰りの子供たちの相手にくたびれてレジカウンターで眠ってしまったのだろう、頬にカフスの痕をつけ、ごろごろと遠くで鳴る雷鳴に身を起こした。
腰がギシ、とバネ仕掛けの玩具のような音を上げた気がした。]
…避雷針でも入荷しておけばよかったわね。
[くす、と笑みを零して不安げに色の漂う空を見上げ、カーテンを引いた]
見習い看護婦 ニーナ が参加しました。
[ぱしゃん。
水溜りの端を散らして、小柄な足が跳ねる。
それに合わせるように、ふわりと短く切り揃えた髪が揺れた。
昨日の嵐が嘘の様に青く澄んだ空の下を、少女が軽く駆けていく。
まだ少し強い風が湿って、僅かに雲も残ってはいるけれど、
この風の強さなら、暫くすれば快晴も拝めるだろう。
空を仰ぎ見ながら、手に鞄を提げたまま小さく笑んだ。
何処かの帰り道なのか、特に急ぐ様子も無く歩を進めていく]
[街外れの広場を通り過ぎようとして。
テントに、移動遊園地の様な建物も幾つか並ぶという、
見慣れない状態に思わず足を止める。]
…?なん、だろ。
この季節に、何か、興行でもするのかな。
[昨日の内に来たのかなぁ。嵐だったのに大変だなぁ…。
緩く首を傾げ遠巻きに眺めながら、独り言を零した。
まだ到着したばかりなのか、準備に取り掛かる音が響くだけで
祭りの様な騒々しさはまだ無い]
…サー、カス?
[簡易柵に貼られたポスターを、大きな青で見上げて。
派手な彩色で飾られた文字が綴る言葉に、僅かに見開いた。
そうして、僅かに眉を寄せる。その変化は、微々たる物だったけれど]
──やだな。
[…あまりいい思い出、ないんだけどな。
そこまで小さく呟いて、ハッと思い出したように辺りを見回した。
嫌だと言われて、いい気分になる人がいる筈が無い。
況してや今この付近に人がいるとしたら、サーカス関係者だろうし。
幸い、周囲に誰かがいる様子も気配も無い様で、安堵の息を吐いた。
もし嫌いな理由を問われたって、説明出来るはずも無い]
…、ん。帰ろ。
[暫く、ぼんやりと辺りを眺めていたものの、
ずっと立ち止まっていても仕方がない。と、鞄を握り直した。
途中で表通りに寄って、頼まれたモノも買っていかなければ。
ひのふの…、と買い出す予定の物を指折り数えながら、踵を返す。
ふわりと、スカートの裾が*揺れた*]
双子 リック が参加しました。
良いか、よく聞けよ。
お前が見たのは、どれ位の規模だっけ?
あァ、それ位なんだ。
ならわかるか? 嵐の中でそんなでかいもんを運んでどうするっていうんだよ。
だいたい、サーカスにとっては商売道具だろ、そういう建物って。
態々あんなに酷い嵐の最中に、いきなり運び入れるなんて出来るわけないだろ?
今まで影も形もなかったって?
そりゃおれにもわかるわけないけど、サーカスってのは他人を驚かせてナンボってやつだろ。
隠すのだって得意だろ、きっと。
あら…何かしら?
[小学校へと生徒が続々と走りこんで行く中、いつも通り焦らずに店の鍵を中から開けて出てきた彼女は、自分の店のすぐ隣の柱に張り紙がしてあるのを見つけた。
少し斜めに張られ、一瞬内容よりもそのことが気にかかる。]
…サーカス?
あら、昨日あの嵐の中大変ねぇ。
[そっと人差し指の爪を使って張り紙を一度はがし、斜めなのを真っ直ぐにして張りなおした]
でもきっと子供たちは大騒ぎね。
私も子供の頃、小さなサーカスに行ったけれど…楽しかったわ。ふふふ。
[ホットドッグやドーナツを片手に走り回った事を思い出しながら、店のカーテンや窓を開ける。
空中ブランコの芸を見ながら回転木馬に乗ったっけ、と思い出しながら雑貨-主に文房具等-にはたきをかけながら、こちらがメインなのではと言われかねないカウンターの横に置いた色とりどりのゼリービーンズが入った瓶の中身をチェックする。
人魚姫、と詠われていた下半身魚の少女、とってもきれいだったなぁと記憶をたどりつつ大きな地球儀を乾いた布できれいに拭いた。]
あぁ。
是非後で行ってみましょう。
[大きめに独り言をつぶやくと、レジカウンター内のいつもの椅子に座って新聞を*読みはじめた*]
……と、なんだ、コレ?
[通りを歩く途中、ふと目に入ったもの。
引かれるように足を止めれば、黒猫も怪訝そうに足を止める]
サーカス?
いつの間に来てたんだぁ?
[昨夜は大分荒れていたのに……などと思いつつ、張り紙の内容を眺める。
のんびりとしたその様子を急かすように、猫が鳴いた]
……と、あんまりのんびりしちゃいられんな。
[早く買い物を済ませて、店に出ないと、と呟く。
勤め先での仕事もさしてあるわけではなく、時間の融通はだいぶきくのだが、遅れないに越した事はないのだから。
急かすように鳴く猫にわかったわかった、と言いつつ、*張り紙の側を離れる*]
-大通りのある小さなカフェ-
ん、美味しい。
今日もオムライス、最高ね。
[いつものカウンターの隅に座り、おおきめのスプーンを振り回して中の忙しそうなマスターに笑いかける。
いつものお昼に出て来たのだが、今日はいつもよりも店が繁盛しておりー…見渡すと、見たこと無い顔がチラホラと見える。
なんでだろうね、と笑いかけるマスターに]
あぁ、サーカスの人、かしらね?
昨日町はずれに来たらしいわ。
え?
えぇそうよね、嵐だったけれどー私も張り紙でしか見てないからまだ見てないのだけれどね。
えぇ、店閉めてからね。ふふふ。
―メインストリート―
キッチンペーパー、料理用白ワイン、牛乳、卵と。
…むー、…あと、なんだっけ…?
[ゆっくりと商店街の並ぶ大通りを歩きながら、
落ちそうになった紙袋をよいしょと抱え直す。
弾みで、がしゃんと瓶と瓶の当たる音がして、ぎょっと中身を見やるものの
どうやら中身は無事のようで、ほっと安堵した。
割ったら、大変だ。
今夜の夕食と──主に自分の服が。
しかし、…あと2つぐらいあった気がするのだが
指折り数え直したところで思い出せそうも無い。]
─メインストリート─
[買い物を済ませ、道を歩く。
常に黒猫を連れて歩く彼は、この五年ですっかり町に馴染んだと言えるだろうか。
もっとも、幼い頃にも幾度となく訪れているので、その頃から馴染んでいる、という部分も少なからずあるのだが]
……さて、これで大体よし、と。
予定外出費もあったし、切り詰めていかんとな……。
[呟きは、妙に切実な響きを帯びていたかもしれない]
……お、あれは。
[メインストリートの至る所に貼られた張り紙。
それに目を留める赤毛の若者の姿に気づいて、短く声を上げる]
……と、こらこら、ウィッシュ!
[それから、ととと、とそちらに駆けて行く黒猫に気づいて、後を追い]
あ。
[声の主はすぐに見つかる。此方に駆けて来るのは“変わり者”――もとい猫。
微苦笑とも取れるような笑みを浮かべ、そしてその主人にも程無く気付く。]
今日和。
お買い物ですか?
[黒猫は足を止めるとなぁう、と挨拶するように鳴いて尾を振って見せ]
や、こんにちは。
ああ、食材やらなにやら、色々とね。
ちょっとあって、切り詰めなきゃならなくなったから。
[言いつつ、肩を竦めて見せる。
町ではある意味で有名人の祖父の事を知っていれば、浮かぶ苦笑から言葉の意は察する事ができるだろうか]
…足りなかったら、また買い物来るの面倒だしなー…。
でもだからといって、思い出せる気配もないし。
[どうしよう。何とかして思い出せないかなぁ。
4つまで折られた指を、眉を寄せながら念じるように見つめてみる。
…見つめたところで、やっぱり思い出せるはずもないのだけれど。
溜息を零しつつ、再び紙袋を鞄を抱えなおして。
ふと、視界の端に入った派手なポスターに、
むぅと僅かに寄せていた眉を、さらに深くした]
……、ここにもポスター貼ってある。
[宣伝するのは、あたりまえなんだけど。
わざわざ気分を損ねても、しかたがないんだけど。
溜息混じりに、ポスターの貼られた通りを、ゆっくりと辿っていくと
視線の先に見慣れた顔を見つけて、緩く首を傾げた。]
…あれ。
ウィッシュも今日和。
[ラッセルにとっては珍しい、挨拶までしてくれる猫に向けて片手を伸ばす。他の犬猫であれば、その頭に手が届く前に噛み付かれるか逃げられるか、なのだが。]
ああ、色々――
・・・・・お祖父さん、ですか?
[苦笑の意味は通じたよう。]
[黒猫は、特に避ける素振りも見せずに撫でられる。
物怖じというものを全くしないこの猫には、時折悩まされたりもするのだが]
そ、じいちゃんが、ね。
また、謎の品物を買い取ってくれたもので。
[大げさなため息と共に言うものの。
そこには、苛立ちなどは全く感じ取れず]
あ、・・・ニーナ?
[見えた蒼髪に一度猫を撫でる手を止め、そのまま上げて挨拶の意を示す。]
矢張り。
今度は如何なものを?
[返された言葉は予想通りだったらしく、そう続ける。]
[ラッセルの口にした名に、自分もそちらに目をむける。
やあ、と言いつつ軽く手を振れば、あわせるように黒猫も一声鳴いた]
魔除けの短剣……だとか何とか。
まあ、確かに見た目はそう言った曰くのある物と良く似てるんだがね。
[言いつつ、視線は一瞬だけ、それをしまった鞄へと]
[くるくる、回るアンブレラ、
止んだ雨粒は弾かずに、
きらきら、煌くエナメル靴、
降注ぐ陽光を弾いてく。
赤と白の色彩は、
茶色の熊と一緒に、
傘の作る影の中。
たくさんの人の行き交う道なのに、
まるで少女だけ違う世界にいるように、
紅の睛はどこか遠くを見ていたけれど、
壁に張られたポスターに、
視線が留まって、足も止まった。]
…あ。こんにちは。
[ひらりと上げられた手に、振り返そうとして。
両腕が塞がっていることを思い出して、咄嗟に頭を下げ
──…て、袋から、キッチンペーパーが落ちた。]
あ。
[べろべろと転がっていくペーパーを何とか食い止めて
巻き戻し回収しながら、そちらへと歩み寄った]
…えと、二人とも、買い物ですか?
……じゃ、ないね。
[ラッセルの膨れ上がった鞄を見やって、小さく苦笑を零し]
や、こちらもこんにちは。
[キッチンペーパーを回収しつつやってくるニーナにくつり、と笑いつつ挨拶をして]
まあ、俺は見ての通り、買い物だけどね。
そちらも、かな?
[やや、首を傾げて問いかける。
視線を向けられた黒猫はゆぅらり、尾を振って]
魔除け――ですか。
まあ、それならまだ良いじゃないですか。
魔物を呼ぶ、とか不吉なモノじゃなくて。
[視線を追うように、何気なく相手の鞄を見遣る。]
うん。
僕は何時もの所。で、今帰り。
[落ちるキッチンペーパーを追う姿を見、愉快だったか小さく目を細める。続く言葉はそれだけだが、苦笑を浮かべた相手には通じるだろうか。]
[ころころ、ころころ、
遠くで転がる白が目に入ったのは、
近くで広がる色を見ていたから?
ゆるゆる、首が傾いで、
ぱちぱち、睛が瞬いた。
白は青の中へと消えてゆく。
その先には赤と茶の色彩、
少女より年上のひとたちが、
集まって、なにごとか、話してる。
高いところから、低いところへ、視線は移る。
黒い猫がいた。]
はい。
おうちに帰る前に、買い物していこうと思ったんですけど。
[何買うか、2つ思い出せなくて。
問い掛けに青年へと視線を向けると、
苦笑を浮かべたまま、小さく首を傾ぐ。青の髪が僅かに揺れた。
ふと、視界の端で揺れる黒のしっぽに、ちらりと再び視線を向ける。
…なでたい。でもなでるには荷物が多大な障害に。
うずうずと葛藤と戦いながら、困ったように眉を寄せて。]
確かにそうなんだけど。
前にもそんな触れ込みで、安物の玩具を掴まされたからなあ……。
[あの時は酷かった、と。
自身の給料日まで豆のスープだけで暮らした日々を思い返して苦い顔。
足元の猫は自身を見つめるもう一つの視線に気づいてか。
なぁ、と鳴いて、紅の少女の方へ、そう、と足を踏み出して]
買う物が思い出せない、か。
それ、家に着いた途端、思い出すんだよなあ……。
[ニーナの言葉に妙にしみじみと呟くのは、自身にも経験があるが故か。
黒猫は少女の葛藤に気づいているのかいないのか、悠然と、でもどこか慎重に歩みを進めていく]
なるほど。
だからそんなに、鞄がパンパンなんだ。
[赤い髪の青年の言葉に、小さく頷き納得する。
少しだけ、その内鞄が壊れてしまわないかと考えたけれど
…黙っておいた。そのときはそのときだ。
転がって、少し汚れたキッチンペーパーを払いながら紙袋へと再び
(今度は落ちないようにしっかりと奥に)入れる。
ふと、自分より、後ろへ視線を向けた黒猫に気付いて
その先を辿るように、振り返る。]
?
おんなのこだ。
[あんな子、いたっけな。
あまり見覚えが無いなぁ、と不思議そうに首を緩く傾げ]
[ゆらり、巻き髪が揺れる。
踏み出す猫に合わせるように、
少女も足を一歩二歩と踏み出して、
青の視線をすり抜けて、
黒の前まで辿り着く。
ぺたんとしゃがむと、
ふわりと裾が広がった。
赤のスカートから白のフリルが覗く。
少女の紅の睛と、熊の黒の眼が、猫を見る。
他のものは、まるで、目に入っていないようで。]
…そうなんです。あともう少しで、思い出せそうなんですけど…
諦めて、でも家に帰った瞬間に思い出すと、何か悔しいのでっ!
[ちょっと粘ってぶらぶらしてるんです。
青年からしみじみと同意を得られた事がちょっと嬉しかったのか
力説するように少し紙袋を持った手に力が籠もった。
と、黒猫を見やる少女に、向けていた視線がゆるりと瞬く。
ちょっと羨ましい、なんて…少しだけ考えたりしたかもしれない。]
[ふわふわ、ふわり。白いスカートのすそがゆれて]
集まる人々に首をかしげる。
何かしらね?シャロ。
行きたいの?
[左の空間に向かってほほ笑むと、
足をニーナたちのほうへと向けて]
……ウィッシュ?
[歩き出した愛猫の動きを追い、鮮やかな赤を目に留める。
黒猫は、自身を見つめる紅と黒を首を傾げつつ見上げて、また、鳴いた]
……?
[町では見かけない子だな、と。
ふと、そんな事を思いながら、首を傾げて]
一番確実なのは、メモを持って出る事なんだけどね。
思い出せる事を、俺も祈ろう。
[力説するニーナの言葉には、楽しげにこう返し]
嗚呼、お金の問題が。
なかなか、――苦労しますね。
[いつも如何程の金が費やされるのか、恐らく分かってはいないが。]
ん。
今日は少なめにしたつもり、なんだけど。
[傍目から見れば十分に膨らんだ鞄に視線を落とす。]
そういう事。
[ラッセルの言葉に浮かぶのは苦笑]
ま、店そのものがじいちゃんの楽しみのためにやってるようなもんだし、良いといえばいいんだが……。
俺が実家の親父や姉貴に怒られるんでなぁ……。
[それがやりきれんかな、と肩を竦める。
黒猫はふいと逸らされた視線にやや、首を傾げ。
それから、新たに近づくものに気づき、そちらを向いてゆらりと尾を振った]
ですよねー…初めは、帰ってきてから買い物しようと思って
メモ、ちゃんと机の上においてあったんですけど。
[結局帰り道に買い物にくるのなら、持ってこればよかったな。
楽しげな言葉に、苦笑を滲ませて小さく溜息を零す]
……いつもは、もっと多いんだ。
…えっと。カバン、壊れない?
[一度は言うのをやめた言葉を、うっかり零しながら
思わず、青を大きく見開いた。
続く言葉には、やっぱり見たこと、ないよね。と首を傾げながら
紅の少女へとそぅと歩み寄ろうとして。
ふと、やって来た女性に気付き視線を上げる]
[視線は、ゆらゆら、定まらない。
彷徨ってからようやっと、
他の色彩をみとめたように、
年上のひとたちを見て、
テディベアを抱えたままお辞儀した。]
……。
[唇は微かに動いたけれど、
音にまではならなくて。
それも茶の毛並みに隠れていたから、
気づかれることもなかったかもしれない。]
[近付いて来る女性と、その“娘”にも向けてか、会釈をする。]
好きなことを仕事に出来るって、羨ましいですね。
・・・とばっちりが来るのは御免ですけど。
[視線を戻し、肩を竦める様子に微かに笑う。]
こんにちは、あら…。
[目の前でお辞儀をする少女に目を向けて、
邪魔にならないように一歩下がる]
こんにちは、すてきなくまさんね?
こんにちは、お嬢さんがた?
[帽子のつばを、ほんのすこし持ち上げて。
ヘンリエッタと、ラッセルたちににっこりと挨拶を]
嗚呼。
これ、三代目なんだよね。実は。
でも今度は結構長く保ってる。
[見開かれる青い瞳に、笑みを苦笑に変えながら、鞄を示した。]
・・・・・今日和?
[クマに隠れた赤い少女の口唇までは読み取れなくとも、お辞儀するのは見えたよう。]
それなら、持ってきた方が早かったな。
[ため息をつくニーナの様子に苦笑して。
お辞儀をする少女に、笑みと共に挨拶を。黒猫が、あわせるように一声、鳴いた]
ま、俺も似たようなもんだし、あまり文句は言えんがね。
[ラッセルの言葉に軽く返してから。
やって来たエレノアに一礼を。
やや、間を置いて、その傍らにも挨拶するように会釈して]
ええ、いつもの散歩なの。
この子、とじこもっているのが嫌いなものだから。
[赤毛の少年に話しかけられれば、隣の娘を指し示し。
'娘'は、面々にぺこりとお辞儀をして]
こんにちは、そちらの貴方は、今日も毛並みがすてきねえ。
[黒猫を見やってにっこりと笑って]
どうにも今日は騒がしいけれども、
何かすてきなことでも、あったのかしら?
――……、ありがとう。
[ほんの僅か零れる、声。
そこには、うれしそうな色。
褒められた熊を抱いて、睛を細める。
返された声に、もう一度、お辞儀して。
けれども、視線を辺りを巡り、首が傾く。]
三代目って、結構、潰したね…。
ここに来て2年ぐらい、だっけ?
[青年の言葉に、早いよ。とくすくすと小さく笑みを零して。
ティディベアの抱えた少女が小さくお辞儀したのを見とれば
小さく笑みを浮かべながら、自らも小さくお辞儀を返した]
うん、こんにちは。
…えと。そのままだとお洋服、汚れちゃうよ?
[微かに動いた唇には気付いたのかどうか
紙袋を抱えたまま、少女を覗き込むようにして。
女性には、再びぺこりと頭を下げた。
自らの目からは、どう頑張って凝らしても見る事が叶わなかったのだけれど。
居ると聞いたから、いるんだろう。信じていないわけでもない──、というか、
少なくとも魂の状態として存在出来る事は、知っているから。]
えと。町外れの広場の方に……サーカス、が。
来てたので、それで町が少し賑やかなんだと思います。
…多分。
[あれとか、と。ちらりとあちこちに貼られているポスターへと
視線を向けながら、女性の問いに言葉を返す。
サーカス、の言葉に、少しだけ言いよどんだけれど、誤魔化した。]
[エレノアの言葉の意を察したのか、黒猫は嬉しげな声で一声鳴く。
黒猫の主は、女性の傍らに一瞬、微かな笑みらしきものを向け]
サーカスが来たらしいですよ。
ほら、これ。
[言いつつ、張り紙を指で示して]
そうですか。
僕なんか閉じ籠ってばかりなのに・・・健康的ですね。
[相槌を打ち、傍らにも視線を向ける。傍目には自然な仕草に見えるだろうか。]
[少女は俯いてしまったようだけれど、女性にクマを褒められたときの微かな嬉しそうな声色は耳に届いたようで、微笑ましげに見る。]
遅くなっちゃったわね。
お疲れ様でしたー。
[店を片付け終えて鍵を閉める。さっきまで一緒に片付けをしてくれていた彼女に手を振ると、いつもは店の内側から鍵をかけて2階の住居部分に引っ込むが、今日は外へ出て鍵をしめる。]
んーーっ。
[大きく伸び。]
[わずかにこぼれた少女の声に、にっこりとほほ笑み、
すこしかがんで]
お嬢さんと、くまさんのお名前は、なんというのかしら?
私は、エレノアといいます。
[彼女には、娘が見えなかったようだから、
執拗に続けはしなかったけれど]
[覗き込んで来る青、
それを見上げる赤は、
きょとり、
ゆっくり一度瞬きして、
だいじょうぶ、
そういうように、小さく首を振った。
皆の口にのぼる単語、
サーカスの話題に、
意識が奪われる。]
サーカス。珍しいわね…。
動物はたくさん、いるのかしら?
空中ブランコや、象さんの三輪車。
それからお猿さんの輪投げ…………
[興味をひかれたように、傍らに目線を向け]
シャロ、あなたはいってみたい?
['娘'が見えた者がいれば、
彼女が何度も何度もうなづくのが、見えたかもしれない]
サーカス、行ってみようかしら?
[首を翻して町外れを見る。
汽笛の音が耳の奥で聞こえた気がした。
ゆったりと、町を歩き始める。]
ですよねー…。これから、そうします。
こんなもどかしい思い、するのイヤですもん。
[青年から、苦笑と共に返された言葉に、小さく頷いて。
ラッセルの言葉に、更にくすくすと小さく笑みを零す]
…それってもしかして、最初のカバン、
スッゴク早く壊れちゃったの?
…でも、それだけ本読んでるって事だし、すごいね。
[私には無理そう、とふるりと小さく首を振って。
少女が首を振るのを見やれば、
そっか。と小さな笑みと共に頷いた。]
…サーカス、気になる?
[意識を奪われたらしい少女の様子に、きょとんと問いかけて]
[一時、女性へと意識が向く。
片側の肩に乗せていた傘と、
抱える熊の位置を直して、
口もとを半分隠すと、
まるで喋っているのは、
少女自身ではなくて、
テディベアであるかのよう。]
“ぼく”はアリス、
こっちはヘンリエッタ。
……ヘンリエッタ=ダスク。
[茶色の熊が動くさまは、
答えているのは自分だといわんばかり。]
すごく、って程じゃ無いけど。
3ヶ月くらい・・・いや、それより前だったかな。
[指折り数えるような仕草をし、首を傾げる。]
他にすることも無いしね。学校無い日なんかは特に。
スポーツとか苦手だし、さ。
[感心したような言葉に苦笑を返した。]
[まるで、くまが話しかけてきたような様子に、
ぱちりと目を瞬いて。
次の瞬間、くすりといたずらなほほ笑みを浮かべ、
くまに目線をあわせて話し出す]
はじめまして、アリス…お会いできて光栄だわ。
どうぞよろしくね。
[そうしてから、今度はエッタに目線を合わせて]
どうぞよろしくね、ヘンリエッタ。
いっちゃった。
母さん、ちゃんとお礼いった?
……ま、いいけど。
でもサーカスね。
母さんは、信じる? 昨夜の嵐のうちに、あれが全部ここにやってきたって。
[エレノアの傍らで何度も頷く‘少女’の様子に、微か、笑むような素振りを見せて]
それがいい。
……で、まだ、思い出せそうにないのかな?
[ニーナには軽くこんな問いを投げる]
……ん……ヘンリエッタ?
[それから、熊を抱えた少女の名乗りに、引っかかるものを覚えて、やや、首を傾げ]
あれ、もしかして、ルイスさんの……?
[以前、祖父の知り合いからその名を聞いたような気がして、問いを投げかけた]
おれ、ちょっと見てくるよ。
まだ見に行ってないんだ。
だいたい一日で出来るなんていったら、まるで化け物みたいだってのに、みんな浮かれてて面白いな。
それじゃあね。まっすぐ家に帰ってね、母さん。
数日後には、始まるらしい。から。
おうちの人にお願いして、連れて行ってもらうといいよ。
[頷く少女に、きっと楽しい。と笑みを向けて。
ラッセルが指折る様子をマジマジと眺めていたが、
返る言葉に、再び目を見開いた。予想より、ずっと短い]
十分、短いと、思うよ…?
普通…カバンの寿命って年単位だと思う、し。
でも、スポーツが苦手な人って他にもたくさんいるけど
だからって、皆がそこまで本読めるかって言ったら違うもん。
やっぱり、すごいよ。
…。──あ、
[軽く投げられた青年の言葉に、一度緩く瞬いて。
突然、一言声を上げる。うろと視線を彷徨わせて、
所在無さ気に紙袋に、僅かに顔を隠した]
…思い出そうとするのを、忘れてました…。
[会話している内に、そっちに夢中になったらしい。
うー、と慌てて唸るように思い出す事に専念し始める。]
レベッカさん。
さっきは、どうもありがとう。
母さんはね、ちょっと心配だし。ほら、そそっかしいところあるから。
サーカス、ちょっと見てみたいかな。
でも、今はそれより、一夜で出現したとか言われているサーカスが、一体どこに隠れてたかっていうのが気になる。
…………よろしく。
[ぽつり、
小さく落された声は、
少女のものか、熊のものか。
けれど、合わせられる目線に、途惑うように。
一歩引いて、後ろに傾けていた傘を前へと倒そうと、]
グランマを知ってるの?
[横合いから聞こえた台詞。
ぱっと顔を上げて、
小さくともはっきり尋ねて、
紅玉はまっすぐ、声の主を見る。]
医師 ヴィンセント が参加しました。
あれ、そういうモノなの?
[年単位、という言葉に碧色は幾度か瞬く。]
お褒めに預かり至極光栄。
ま、確かにそうは居ないだろね。
[冗談めいた言葉の後に、矢張り苦笑を零す。]
[リックのほうに顔を向けてくすりと笑い]
そうね、今日も…ふふふ。
[思い出し笑いをするが、口をそこでつぐみ]
一晩で出来たってのはすごいわねぇ。
えぇと、なんて言うんだったかしら…一夜城?
忘れてたって……。
[紙袋に顔を隠すニーナの様子に、思わず呆れたような声を上げて]
どうしても必要なものじゃないんなら、明日改めて、でもいいんじゃないか?
[笑いながらこう言った後、向けられる紅玉に向き直る]
ああ……人違いでないなら、俺のじいちゃんの知り合いだよ。
俺も、色々とお世話になってるかな。
…え?ちがうの…?
[問われて逆に不安になったらしく、僅かに眉を寄せて首を傾げる。
…誰かに聞こうかと思ったけれど、誰の意見が標準なのか、判らない]
……おうちのひと、忙しかったりする?
むずかしいのかな。
[少女の浮かべる難しい表情と、くるくる回る傘に、
きょとんと瞬いて緩く問う。]
……また、何かやった?
本当に不甲斐ない母親でごめんなさい。
こっちでも叱ってるけど、どうにも。
……一夜城ね。
どうやったって、一晩で出来るわけなんてないと思ったりしません?
でもそれすらサーカスの一環かなと、思わなくもないけど。
そうでもしないと客を集められないのかな。
うぅん、違うの、違うのよ。へまとかじゃないのよ?
ちょっと噛んだりしちゃっただけ。
ごめんなさいね、笑っちゃって。
そうねぇ、一晩ってのはなかなか。
規模が小さいものなら、大丈夫なのかもしれないわ?
私はこれから見に行ってみようかと思っているのよ。
えっと、だって、その。
お喋りに夢中になって、うっかり…!
[呆れたような声に、あうぅ、と思わずしょげる。
紙袋に隠れたまま、続く言葉に、こくりと小さく頷いた。
多分、青い髪が、もそと動いただけに見えるかもしれない。]
…多分、無くても死ぬようなものじゃないと思うので、
また明日にでも買い来る事にします。
はァ。
それならよかったけど……。
本当になにかへましたんだったらおれに言ってください。
注意して治るものなら、苦労しないけど。
……って、見に行くの?
それならおれもいく。
何か、前から置いてあったものも見れるかもしれないし?
規模もよく知らないしね。
……そっか。
[こくん、頷きひとつ。
ゆるり、紅玉が揺れる。
間接的とは言え、祖母の知人であることに安心したか、
緊張とも警戒ともとれる色は僅かに薄れて。
それから問いかけに、
傘の動きを止めて、
青へと視線を移して、
赤を緩やかに伏せて、
左右に一度、首を振る。]
[丘を下り、町へ入り、メインストリートを歩く。
足取りは軽くも重くもなく淡々と進んでいく。
擦れ違ったチラシ配りの男には、興味無げに擦れ違うも]
…サーカスに、行かれるのですか?
[金茶と女性と金の髪の子供の会話には、興を引かれたか立ち止まって声を掛けた]
[不意に、
或いは釣られて、
少女は天を仰ぐ。
時の移ろいを告げる空の色。
くるり、踵を返すと、
ふわり、裾が翻る。]
ばいばい。
[* 短く告げて、
立ち去って。*]
[しょげる様子に、ちょっとからかいすぎたかな、などと思いつつ]
楽しい事があると、つい忘れるもんだし、ね?
明日、メモを忘れなきゃ、それでいい訳だし、そんなに落ち込まずに?
[軽めの言葉に同調するように、黒猫がなぅ、と鳴いてニーナの足に擦り寄った]
うん。
ああ、俺はハーヴェイ=マクファーソン。
どうぞ、よろしく。
[それから、僅かに警戒を薄れさせた少女に向けて、丁寧な礼と共に挨拶をしてから。
立ち去る姿を、見送って]
嗚呼、そうだ。
一旦帰らないと。
[立ち去る赤に向けて小さく手を振りながら、脳裏に浮かぶは堅物と有名の下宿先の主か。]
じゃあ、また。
[面々に会釈をして、家路へ着く。]
[小さな騎士と姫君めいた会話に、レンズの下で目を細める。
問いには、少し考えてから口を開き]
ああ、興味あるね。
君も気になっているのだろう?
[天幕の天辺になびく旗を見上げ、頷いてみせる]
そうだね。
一夜で来たとか、友人が言うものだから。
面白いと思って、気になってるね。
大きいサーカスだったら、一夜で全部出来るなんて、絶対何かのトリックがあるって思うんだ。
んー…違う、の?
[じゃあ、おうちが厳しいのかなぁ。
更に少女から返される否定に、困ったように瞬いた。
…自分の時は、大喜びで、連れて行ってもらった気がする。
もう随分と、記憶もおぼろげだけれど。
ふと、翻る赤と、告げられる言葉に気付いて、
覗き込んでいた顔を上げた。]
ん、ばいばい。
[両手が埋まっているから、手は触れないのだけれど。
同じように短く声を投げて。
青年から掛けられる言葉に、再びこくりと頷きながら
足元に擦り寄る黒猫に、慰められたのか小さく息を零した。
…もっとも、やはり撫でられないわけだけれど。]
初めましてですかな、お嬢さん。
私はしがない旅の医者ですよ。
[巡廻医師なのだと冗談交じりに告げて、診療所の方を差し]
少し薬を分けてもらおうと思いましてね、あちらに寄らせてもらったんですよ。
リック君が、トリックを暴くのね…
と リック だけに…
ぷっ…くすくすくす…。
[独り言をつぶやき、くすくす笑い出しつつ、笑いが止まらないままヴィンセントの方に涙を浮かべた目を向けて]
旅の…お医者様。それは、大変なお仕事…ですわね…。
っと、ごめんなさい、私笑い上戸で…っふふ…。
[ふと、青年の言葉を耳に捕らえて、己も家に帰らなければと気付いて。
名残惜しそうに黒猫と青年に別れを告げて、自らも帰路へとつく。
…途中で少女を見かけたならば、何か云々唸ってたかもしれない。
それでも結局思い出せずに──その晩、忘れた物「洗剤」のおかげで
結局家事が滞るのは、また*別のお話*]
[それからまたリックに視線を移し、その物言いに楽しげに口の端を引き上げて]
さあて、どうだろうね。
あの嵐の中、わざわざ広場なんて誰も見てやしないだろうし…真実は嵐の中ってところか。
ああ、サーカスの人に聞けば判るかもしれないね。
トリックを教えるマジシャンがいないように、教えてくれるとか思えないが。
[尋ねるのは君の自由とでもいうように、声なく笑う]
いやだなぁ。マジシャンもサーカスも、どっちだって種を明かしたら意味がないことくらい、子供なおれでも知ってる。
それに、聞いたら楽しくないよ。
楽しくするなら、自分で、こっそり見つけないとね。
……レベッカさんも笑いやんだようで、良かったよ
…大丈夫ですか?
[問いの意味はきっとグローバル。
やや遅れてから、笑いの止まらないレベッカの背に手を伸ばし、軽く叩いて収めようとしつつ]
…すまないね、恋と笑い上戸の薬は専門外なんだ。
[リックの問いには、お手上げと肩を竦めて見せた]
ふふふ、悪い癖ね、私。
えぇと、お医者様、私レベッカと申しますわ。
もうお嬢さんなんて言ってもらえる年じゃないから、くすぐったいわ。
小学校の前で雑貨屋してるの、もし何か文房具やーそうね、ゼリービーンズやコットン・ケーキに興味があったら、是非いらして?
恋の病は不治の病って?
そういうものに出会えたら、それはまたきっと楽しいんだろうね。
笑い上戸もものすごく楽しいんだと思うけど?
専門家とかいないものかと思うよ。いるときっと儲かる。
……ああ。おれは、リックっていいます。
ところで、サーカス。
早くいかないと、こっそりとはいかなくなったりしないかなと。
[賢しい事を言うリックには、そうかと頷いて。
笑い止んだレベッカの様子をざっと確認して離れる]
落ち着いたようで何より、レベッカさん。
私はヴィンセント。ウィンセント=ウィスラーだ。
お医者様なんてそんな様付けしてもらうようなものではないさ。
[よければウィンセントと呼んでくれる様にと言って]
できたら君もおじさんではなく名前で読んでくれると嬉しいね。
[リックに笑って見せた]
上手いことを言うね。君は頭がいいんだろうな。
そうか、リックくんというんだね。よろしく。
サーカスはきっと逃げやしないさ…始まるまではね。
[貼られたチラシの近日公開と書かれた場所を差して笑う]
さて、デートの邪魔をしてはいけないね。邪魔者は去るとしよう。
幾ら儲かるからといって専門の医者になるつもりもないしね。
では失礼するよ、リックくん、レベッカお嬢さん。
ヴィンセントの方がいいね。
ドクターと呼ばれると常に仕事中の気分だ。
そして今も実は仕事に行く途中なのだよ。すまないね。
[リックにはそう言って、レベッカの誘いには丁寧に断りを入れる]
わかったよ、ヴィンセントさん。
オンとオフを使い分け、ってこと?
医者は疲れそうだしね。
……ま、頭がいいならうれしいことかな。
近日公開の近日ってのがいつかまではわかんないけど、医者のあなたに言われたんだし、少し自慢に思っておくよ。
デートなんて恐れ多いけど、お仕事がんばってね。 ドクター?
近日の近日がいつかってのも教えてくれやしないし。
ったく
いい具合に丸め込まれたのかな。
……ま、いっか。
たいした問題でもないし、一度、戻るか
吟遊詩人 コーネリアス が参加しました。
―メインストリート・レストラン―
[カウンター席に腰掛けた男が、マスターに向かって頷いた]
そうですね。私は運が良かった。
前に居たサーカス団が潰れてすぐに、新しい職場を見つけることが出来たんですから。
ええ、部屋はまだしばらく御借りしますよ。サーカス団には、まだ私の部屋はないんです。
ありがとう。そうだ、初日の招待状を、置いてもらえますか?
子供の居るお客さんにでも差し上げて下されば助かります。
ええ、初日の賑わいというのは、大事ですからね。
[白の帽子が、すこし傾いで。メインストリートにある、
大きな木の下に誂えられたベンチに、腰を下ろす]
すこし、天気がよくなったみたいね。
暑くはない?そう、大丈夫...。
[隣の娘のうなづきに、にっこりとほほ笑むと、
のんびりと空を眺めた]
嵐がよくないものをつれて行くみたいね。
ほら、雲が流れて......シャロ?
どうしたの?
[隣の娘は、賛同をしなかったようで。
小さく首を傾げて、娘の意図を知ろうと身を乗り出した]
…………。
ごめんなさい、わからない…。
[娘の意図は、わからなかったようで。
視線をくもらせて、謝って]
言葉が話せれば、いいのにね。
さて、と……。
[やれやれと、ため息ついて、鞄を見やり]
……真面目にこれ、どうしたもんかね……。
[祖父が勢いで買い取ったという短剣。
文字通り、磨けば光るような気もするのだが。
それからどうするか、というのは、それなりに問題で]
にしても……。
[呟いて、視線を動かした先には、サーカスの張り紙]
どこに行っても、貼ってあるなあ……。
[少し貼りすぎだろ、と。ふと、そんな事を考えて]
そうだ、このポスターも貼っていいですか?
新しいのが刷り上がったそうなんですよ。
なかなか綺麗でしょう?
[広げたポスターには、一面の星空と、仄かに輝く氷柱が描かれている。良く見れば氷柱の中央に、ぼんやりと女の肢体が浮かんでいるのが見えるだろう]
[少し膨らんだ鞄を手に道を行く。
公演はもうすぐらしいと擦れ違いざま耳に届いた言葉よりも、大きな木の下のベンチの"二人連れ"へと興味をそそられた]
ふむ…。
[町外れへと向けていた足を、何気なくそちらの方へと変えて歩く]
[とりあえず、知り合いの美術商にでも頼んでみるか、と。
そんな事を考えながら、レストランの前を通り過ぎ……]
……お?
[ようとして。
新たに貼られたポスターに、目が止まった]
[掛けられた声に、まるでたった今気付いたかのように笑みを見せ]
ん…? ああ、リックくんか、こんにちは。
それから、そちらのご婦人方も。
[エレノアとシャーロットに順に笑みを見せて、ゆっくりと近づく]
ヴィンセント=ウィスラーです。よろしく。
[茶色のレンズの下、興味深げな色が浮かんで消えた]
サーカス?ええ、来てますね。
いや、何時来たのかは分かりませんけど。噂を聞いたのはあの嵐の後で。
そんな。
確かに不思議ではありますけど、怪しいって程じゃ。
・・・・・そうですか。
─メインストリート・レストラン前─
[中々派手なのやるんだな、と。
そんな事を考えつつ、ポスターを眺めている所にかけられた、声]
……え?
[瞬き一つした後、振り返れば、見慣れぬ男の姿]
まあ……全然興味がない、と言えば、嘘になるかな?
中々、派手な事をやってくれるようだし、ね。
―レストラン前―
ええ、我がサーカス団の団長は、神秘学の権威ですから、そんじょそこらの紛い物とは、ひと味違いますよ。
[唇に人差し指を当てる]
何しろ本物の魔術師…
[リックの故障への問いには、鞄を軽く叩き]
これが必要ならドクターで構わないよ。
健康ならヴィンセントと呼んでくれた方がいいね。
ああ、今はもう仕事は終わっているが急患がいれば受け付けるとも。
注射も苦い薬も望みのままだ。
[喉が笑いを堪えるように震えた]
[小さな少年と、眼鏡の男。そのどちらもが自分へと挨拶をしてくれたのが嬉しいのか、ほんのりと’娘’の頬は上気した。
一方、ベンチに残っていたエレノアは、声をかけられれば]
シャーロット…?
[あわてて周りを見回して、二人のほうへと歩み寄っている’娘’を見かければ、ゆっくりと頭を下げた]
エレノア・ガーシュインと申します。
娘は、シャーロットと申しますの。
娘とお友だち…というわけでは、ないのかしら?
うっわぁ。
苦い薬なんておれ必要ないから、ヴィンセントさん、って訂正しておく。
ドクターって呼びかけないよ、本当に
あ。でもほら。
ほれ薬とかあるなら、必要って言うのは多いかも?
[告げられた言葉に一瞬きょとり、とするものの。
声を潜められ、続けられた言葉に、思わず笑みが漏れる]
それは中々……。
行けば行ったで、中々に楽しめそう、かな?
[くつり、と笑う、その仕種にあわせるように、黒猫がゆらりと尾を振り、一声鳴いた]
―レストラン前―
ええ、是非とも楽しみにいらしてください。
そうだ、招待状を差し上げましょう。
初日だけのご招待になりますが。
[招待状を二枚差し出す]
申し遅れました。私はコーネリアス=ブラン。
今朝からサーカス団の一員です。このホテルに泊めて頂いていますので、どうぞ御見知りおきを。
[二人を見比べつつ、エレノアの言葉を繰り返すように]
エレノアさんと…シャーロットさんですか。
…なかなかにお美しい。きっとお母様ゆずりでしょうね。
[シャーロットの染まった頬から姿全体へと視線を移し、鑑賞するように呟く。
しかし、また愛想のよい笑みを見せて]
いいえ、残念ながらお初にお目にかかります。
薬の調達にこの町に立ち寄った所ですので。
リックくんとは医者以上、お友達未満といった感じでしょうかね……くく。
[ドクターを撤回したリックの様子に、耐え切れぬように笑いが零れた]
[差し出された二枚の招待状にゆるく瞬いて]
わざわざどうも。
とはいえ、二枚もらっても、ねぇ。
猫にも招待状がいるなら、話は別だけど?
[冗談めかした口調で言いつつ、足元の黒猫を見やり。
視線を再び、目の前の男へ戻す]
俺は、ハーヴェイ=マクファーソン。
しかし、今朝から、っていうのも凄いもんだね。
いくら嵐がやんだからといって、ミスもミズも、注意したほうがいいと思うよ。
ほら、風邪を引いたらお医者のヴィンセントさんが、苦い薬をくれるから。
……って笑うようなこと? ヴ ィ ン セ ン ト さ ん 。
[笑いを収めつつ]
惚れ薬は専門外だと言ったでしょうに。
…それともご入用ですか?
[茶のレンズの下、目を細め]
ありませんけれど。
[また同じように肩を竦めて見せた]
おれには必要ないって。惚れ薬なんてね。
でもほら、町の中を見ればさ……?
ま、ないものを強請るような人はいないと思うけどね。
……と。
ちょっと母さんが不安だから、一度家に戻るよ。
それじゃ、またね。
ミスもミズも、お気をつけて。
ヴィンセントさんは、手出ししないようにね?
惚れ薬のかわりに。
―レストラン前―
どなたか、誘いたい方がいらしたら御一緒に。
なければお知り合いに差し上げて頂いて構いませんよ。
猫さんは、きっと無料だと思います。
[真顔で言って]
ハーヴェイさんですね、どうぞよろしく。
実は前にいたサーカス団が潰れてしまいましてね。
このサーカスに知り合いが居たものですから、泣きついて雇ってもらったというわけです。
丁度魔術の助手を捜していたそうで、おかげで飢えずに済みました。
[医師の言葉を聞くと、少女の頬はさらに赤く染まり、
こっそりと少年の後ろへと隠れてしまった。
エレノアのほうは、そんなに仕草に笑って]
そうでしたか。
仲良くしていただけたら、嬉しいわ。
あの子は、……あんまり、お友達が、いないから。
くすくす。
お二人は、仲がよろしいのね?
[笑う母。
娘のほうは、医師と患者のほほえましい会話を聞き取ってか、
リックの頭を、そっと撫でるような仕草をしようとして]
さあて、どうだろうね。
レベッカさんがうつったのかもしれない。笑いは伝染すると言うし。
[そう呟くも、リックの言葉を受ければご婦人方に真面目に]
まあ、それはさておき。
体調を崩されたのならもちろん手は差し伸べますが、体調を崩さない事が肝心ですよ。
誘いたいような相手はいないが、まあ、そういう事なら、ありがたく。
……まあ、猫の入場料を要求されても、正直困るけどね。
[冗談めかした口調で言いつつ、二枚の招待状を受け取って]
なるほど……それはまた……。
中々、大変だったようで。
[飢えずに、という物言いに妙に切実なものを感じたのは、気のせいだったかも知れない]
[惚れ薬が必要とやらの例に笑って]
ほう、この町の中にはそんなに片思いが流行っているのかね?
薬などに頼らずに頑張ればいいものを……と、釘を刺されてしまったね。まったく賢しいものだ。
[その背に隠れたシャーロットとリックを見比べて、楽しげに笑う。
帰るという言葉には頷いて]
ああ、気をつけて…だが舌を出すのは診察の時だけで十分だよ。
[駆けて行く元気のよい姿を見送った]
[ヴィンセントの言葉には、母のほうはころころと笑って]
ええ、お医者様と患者として仲良くなるのは、
できれば遠慮したいところですね。
でも、人と人としてなら……あら?
[隠れる場所を失って、
おろおろ自分の背に隠れる娘にほほ笑んで]
隠れていたら、お友達はできないわよ?シャーロット?
旅芸人というのは、浮き草稼業ですからね。
ですが、楽しい仕事ですよ。
[ハーヴェイの感じたことを読み取ったように言う]
明日はパレードが有る筈です。どうぞそれも楽しみにしていてください。
浮き草稼業……か。
昔は憧れたもんだったな。
[くつり、と笑いながらの言葉は冗談めいて]
パレード、か。
ああ、楽しみにさせてもらうよ。
[笑いながらの言葉に続くように、黒猫もゆらりと尾を振って一声、鳴く]
……と、つい話し込んじまった。
それじゃ、俺はちょっと用事があるんで、これで。
公演、楽しみにしてるよ。
[招待状を持った手をひらりと振って。
黒猫と共に、*雑踏の向こうへと歩き出す*]
[エレノアの微笑みにレンズの下で目を細め]
こちらこそ、ご婦人方に親しくしていただければ光栄ですよ。
ほう…シャーロットさんはデリケートなのでしょうね。焦る事はありませんよ……ええ、きっと。
[変わらぬ笑みのままに頷く]
…さあて、どうでしょう。
あの子はとても賢しいので、話していると楽しいのですが。つい、からかってしまって…嫌われるのは時間の問題かもしれませんね。
[肩を竦めて見せた]
元気でいてさえ下されば、医者でいる必要はありませんからね。
仲良くして下さるなら、是非とも体調にはお気をつけて…おやおや?
[隠れるシャーロットに揶揄するように呟き、エレノアへ笑って]
どうやらさっそく嫌われてしまったようです。
初対面で長話しすぎたのが失礼だったかもしれませんね。
そうですね、まだ小さいのに、しっかりした子…。
からかえるのも、きっと今のうちですよ?
あっという間に大きくなって、もっともっと賢くなって、
簡単に言い負かされるようになってしまいますわ?
[くすくすと笑うが、少しずつそれは小さくなって]
そうですね…。
少しだけ、デリケートなだけ……。
[最後の言葉は、さびしそうで]
いいえ。
恥ずかしがってるだけですわ、きっと。
[そうヴィンセントの言葉に返すと、
後ろの娘を振り返って]
帰りたいの?
……もう。あなたが外に出たいって言ったのに…。
わかったわ、ご挨拶なさい。
[そういって女が横にどけば、
遮蔽物のなくなった少女は、またさっと頬を染め。
ぺこりとお辞儀をすると、足早に歩き出す]
あらあら、ごめんなさい。
本当に…。
[少女の行動に、困ったように、首を傾げて]
失礼致しますね。
通りの一番奥の家に住んでおりますの。
よろしければそのうちにも、お茶に招かれてくださいな。
少年の未来に幸あれ、でしょうかね。
[言い負かされるという言葉に大いに頷きつつ、鞄を大事に抱え直す。
そして失礼しますと言いかけるも、エレノアの笑いが小さくなるのに目を細めて]
…私でよろしければ、相談に乗りましょう。気が向かれたらどうぞ。
[ほんの少し寂しそうな様子に、医者らしい思いやりの表情で告げて。
先に帰ることにしたらしいシャーロットの御辞儀に笑みを返す]
さようなら、シャーロットさん。また、お会いしましょう。
…次なら少しは慣れて下さって、恥ずかしくなくなっているかもしれませんし。
[そう残されたエレノアに言って、そろそろ私も失礼しますと笑んだ]
お気になさらずに。では、いずれまた。
[正体に礼をいい、笑みのままに見送って]
…ふむ、美しいものだ。きっと…エレノアさんもだろうな。
[どこか逆の言葉を呟いて、その場から立ち去る]
[メインストリートの端のレストラン、連れもいない男はカウンター席で簡単な食事を取る。
食後のコーヒーの話題は、貼られたばかりの真新しいポスター]
…ほう、それでポスターが貼ってあったんですか。
縁は奇なるものですね。
[隣の町唯一の宿で幾度か擦れ違ったことのある銀髪の男との経緯を聞き、笑みを見せて面白そうに頷く。
噂をすれば、影ならぬドアベルの音。振り向けば笑みを向けて]
ああ、噂をすれば。ご就職おめでとうございます。
いえいえ、そちらのポスターの話のことですよ。
そう言えば、ご挨拶は未だでしたね。
私はヴィンセント=ウィスラーです。よろしく。
[初めまして、と愛想良く*自己紹介をした*]
ふあぁ…。
[大あくびをしながら、体を伸ばす。
サーカスでリックと別れてから、ベンチに座って鏡の館やその前で風船を配る足の長いピエロ、そして間を駆け回る子供達とそれを追いかける親を眺めていた。
ずっと見ていても飽きる気が全くしなかったが----]
あら。
[ぐぅ、とお腹がなったので、そっと両手で抑えた。]
[宿を出て、食後の散歩にメインストリートを歩く。
足は当然のようにサーカスの方へと向いた]
ずいぶんと賑やかになってきたな。
もうそろそろ…か。楽しみなことだ。
[子供の手を離れ空を登る風船に、茶色のグラスの下で目を細め]
[あたりを見回せば、ホットドッグやアイスクリーム、それに冷たいレモンケーキの店が並ぶがどれもまだ空いていないようで。
仕方ないな、とゆっくり立ち上がってスカートをぽんぽんと手で払った。]
何か食べにいこうかしら。
[独り言を呟いて、メインストリートへ歩き出した]
[歩いて行くと、空を見上げて立ち尽くす医者の姿が見えた。]
あら…ヴィンセント先生?
何か素敵なものでも飛んでいますか?
[直ぐに名前が出てきた自分の脳みそにちょっぴり感謝しつつ、ヴィンセントの目線の先を追って空を見あげてみた]
[眺めていた男は、掛けられた声に笑みを向けた]
やあ、レベッカさん。
風船が飛んでいたんですよ…誰かが飛ばしてしまったようですね。
[辺りを見回せば、少し先に風船の塊が見えて指差し]
いたいた、やっぱりね。
あれだけ集まると壮観だ…ほら、ゼリービーンズのようですよ。
[言われて指を指された方向を首を巡らせて見上げ]
あら、本当だわ!
可哀相に、風船を飛ばしちゃった子は泣いていないかしら?
でもゼリービーンズの様でキレイ、も本当ね!
…あら、私がゼリービーンズを売ってるのをよく覚えてくださってたのね?
流石にお医者様だけあって、………んー…記憶力抜群ね。
[何か駄洒落を言おうとしたらしく相当間が空いたが思いつかなかったようで、顎に手を当てたまま眉間に皺を寄せた]
[足の長いピエロがそつなく新しい風船でも渡したのか、泣き声は特に聞こえない]
さて…今は聞こえないようですが。
怪我をしてないといいのですがね。
[よく覚えていたと言われれば、少々照れくさそうに笑い]
いやその…ゼリービーンズは好きでして。
色とりどりで美しいでしょう。…売っている人もね。
[実は今度買いに行こうと思っていたんです、と髪を掻いた]
[帰る方向は違うのに、
誘われるように別の道。
まだ開かないサーカスの周り、
たくさんの人がいるのが見える。
ざわざわ、
親と子の会話と団員の声が、
音の波になって辺りに広がってく。]
[思わず受け取りはしたけれど、
右の手にはアンブレラ、
左の手にはテディベア、
風船の代わりにそのふたつ、
ぱたぱた地面に落ちてしまう。]
――あ、
[声をあげてしゃがみこんで、
慌てて転がる傘と熊とを拾おうと。
ふわふわ、
小さな手から離れた風船が、
自由になって太陽へと向かってく。]
[赤い風船、
青い空に昇って、
白い雲に並んで。
大きな円が
小さな点になって、
大人の視線も
子供の眼差しも、
たくさんの目が見ていたけれど、
ひとつの色は吸い込まれるように消えてしまった。]
あぁ、そうね、子供が追いかけて怪我でもしていたら大変だわ。
ヴィンセント先生のお仕事が増えちゃう。
あら、お仕事が増えちゃうのはいいことなのかしら?でも怪我や病気が増えるのはイヤね。
お仕事が少ないコトを願うなんて…ドクターだけに、孤 独だー、なんて。
ぷっ…くすくすくす。
[口元に手を当てて、笑い出した]
あら…っふふ…ゼリービーンズがお好きでしたの?
ふふ…見かけによりませんのね?
やだ、美しいだなんて…ふふふお上手な……あぁ、私なんかより…ふふ…っ。
昨日いた、リック君のお母さんの方が…よっぽど美人さんで…すわ…ふふふ…。
[相変わらず笑いが止まらなくなっているようで、腰を折りつつ肩を震わせている]
[風船の塊から、またひとつ色が離れて子供の手に渡る。
それに気付くことなく目の前の女性の姿を見ていたが、小さな声と共に空へと舞った赤に惹かれるように再び空へと目を向ける]
――ああ、またひとつ。
[太陽の光は茶色のグラスが和らげてくれるが、目を細めて呟く。
それから、おそらくは風船の主であった声の主を探して]
大丈夫ですか、お嬢さん?
[歩み寄って、怪我はないかと訊ね]
ふふ…でも、ありがとうございます…ぷふふ…っ。
[社交辞令と思っていても褒められて嬉しくないワケはなく、頬が薄く薄く赤みを帯びたのは笑いが止まらないせいか、それとも。]
[ヘンリエッタの傍に跪いて手を差し伸べつつ、笑いの止まらないレベッカへと振り返る]
レベッカさんが先生と呼ぶから、ほら、さっそくお仕事です。
医者なんて必要ないのが一番なんですがね。
[駄洒落には笑みのままノーコメント]
おや、リックくんの…?
それはますますお店にお邪魔するのが楽しみですね。
[にこやかに返して、改めて少女の様子を見た]
[赤を見送っていた赤は、
誰かの声にそちらを向く。
しゃがみこんだまま、
広がったアンブレラを畳んで、
それからテディベアを抱え直す。
答えの代わりに頷いて、
手を見はしたけれど取らず、
立ち上がって目の前の男を見た。
茶色の熊の毛並みや
赤い服の裾は土に汚れていたけれど、
白い少女の肌には傷ひとつない。]
[ゼリービーンズのように、美しさもそれぞれとは心の中で。
レベッカの頬が染まった事に気付いているのかいないのか。
ただ笑いが止まるには少々時間が必要かな、とは考えたようだ]
[アンブレラを畳んでテディベアを抱え直した少女の視線に]
ああ、両手は既にいっぱいでしたね。
怪我がないなら良かった。くまさんもお怪我はないかな?
[白い肌に傷がないのを確認し、服の裾とクマの汚れを埋まった両手の代わりに払おうとする]
[奇妙な笑い声に意識が向く頃、
大きな手に汚れは払われて。
きょとり、
ゆっくり瞬きをして、
びっくりしたままだけれど、]
……ありがと。
[口許を隠した少女の代わり、
抱かれた熊が感謝を述べる。]
[子供の相手は慣れているのか、少女の行動にも笑みのまま]
どういたしまして、くまさん。
お嬢さんがまた転ばないように見てあげていて下さいね。
[風船が飛んだ理由を知らないから、そんな風に言葉をかけて立ち上がった]
……、
転んだのはぼく、
ヘンリエッタはぼくを助けてくれたの。
[続いた声はさっきより抑え目で、
届いたかはわからなかったけれど。
小さく頭を下げると、
一度サーカスを振り返り、
*来た道を戻っていった。*]
[耳に届いた小さな小さな声に、笑みを向ける]
おやおや、それは失礼を。ごめんね、優しいお嬢さん。
では、くまさん気をつけて下さいね。
[きちんと言い直して、去ってゆく姿を見送る。
それから、そろそろ笑いが収まったかな、とレベッカを*振り返った*]
はーっ…
[ヘンリエッタに手を伸ばすヴィンセントを視界の隅に収めつつも止まらぬ笑いに腹筋を痛めていたが、やもすると笑いも収まり]
…そういえば、初めて見る子だわ?
[白いレースの裾を広げながら去りいく赤いひらひらの影を目で追った]
サーカス関係の子…かしら?
ん?そういえば2週間ほど前に大きな車が来てたわね。
あっちが関係あるのかしら?
[ぽつりと、ヴィンセントに話しているのか独り言か定かではない言い方で呟いた]
急に人が増えたかんじがするわ。
事故とか起きなければいいけれど…。
じゃあヴィンセント先生…じゃなくてヴィンセントさん。
あまり上を向いているとコケちゃうから気をつけて下さいね?
[茶色の眼鏡の奥を覗き込んで微笑むと、手を振ってメインストリートの方へと歩いて行った。]
[道行く人々の口に上るのもサーカスの話題が多い。
見た?まだ見てない、という会話に少しだけ得意げな気分になりながらポスター等を見ながらゆっくり歩いていると、棒飴を持ったまま走る子供の集団が路地から出てきて、力いっぱいぶつかった。]
あいたっ!
[まだ乾ききらない道の水溜りに腰から落ちた彼女の上に、つまづいた子供が落ちてきた。
子供を受け止めるように手を伸ばし抱きとめると、後ろから追いかけていた子供が3人ほどばつの悪そうな顔で路地から顔を覗かせていた。とりあえずつまづいた子供を起こし、]
っつー…大丈夫?
あら、えーっと…ああ、私は大丈夫よ。
あっちの3人のも大丈夫って伝えてあげてね?
[名前を思い出せないたまに店に来る子供が心配そうに横に起き上がると、ひらひら手をふりながら起き上がった。
スカートの後ろをはたこうとして]
あー、大丈夫だけど水溜りだったから濡れちゃったわね。
貴方たちは濡れてない?大丈夫?
大丈夫そうね。
[平気そうな子供の様子を見るとほっと息をつき、走り去る姿を満足げに目を細めて見た]
何か食べにレストラン、って思ったけど、とりあえず着替えに戻らなきゃね。
家で食べちゃおうかなぁ〜
でも今日はマスターんとこのシチューが食べたい気分なのよねぇ。
[お尻に泥をべったりと付けたまま独り言を言い、体を翻してメインストリートから少し折れて雑貨屋へと急ぎ足で*向かった*]
……これでいいだろ? ちゃんと名前書いたよ
ソフィー=マクレラン。
綴りの確認なんて必要ないって。なんたってもう13年も母さんの息子してるんだから
―朝・レストラン―
[朝食をとるためにレストランのドアをくぐると、ヴィンセントに就職の祝いと挨拶を贈られた。]
ありがとうございます。
ヴィンセントさんですね。私はコーネリアス=ブラン。
昨日から魔術師見習いです。
ええ、あのポスターはなかなかのものでしょう?
今日は、パレードも繰り出しますから楽しみになさっていてください。
実は、私も初めて見るので、楽しみにしているんですけどね。
[如才なく自己紹介を返しながら、サーカスの宣伝も忘れない]
ええ、ぜひおいでください。初日は無料招待の券を配っているんです。このお店にも置いて頂いていますから、よろしければどうぞ。
私は、これから仕事です。ええ、パレードや出し物の準備ですよ。
[しばらくヴィンセントと雑談を交わしてから*サーカスへと出掛けていった*]
―サーカスの入り口―
[既に顔見知りの門番に微笑みかけて、ゆっくりと外に歩み出る。]
そろそろだな。
[門の脇にもたれかかり、何かを待つように、空を見上げる]
[アーヴァインは、町の噂でパレードのあることを知ると、不機嫌に鼻を鳴らした。彼にとって、怪しげなサーカスが郊外から街中に繰り出して来る事は、不本意以外の何者でもなかったからだ]
[自警団に所属する若者達は、ほとんどがサーカスに浮かれて出掛けてしまっていたので、結局見張りをするのは、アーヴァイン一人だったのだが…]
[賑やかな音楽が、サーカスのある広場から流れ出す。その音の波に乗るようにして、紅白の玉に乗ったピエロが鉄の門から転がり出し、のしのしと歩く火拭き男が、たいまつを振り回す]
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