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猟師 スティーヴ に 2人が投票した
烏賊 ラス に 6人が投票した
かぶき者 ケイジ に 1人が投票した
烏賊 ラス は村人の手により処刑された……
次の日の朝、少女 カレン が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、くの一 アヤメ、猟師 スティーヴ、傭兵 カルロス、孤児 オーフェン、学生 エリカ、御令嬢 ロザリー、かぶき者 ケイジの7名。
[纏う雰囲気は、いつものそれに戻る]
うん、すること……しないと、いけない。
……あり、がとう、ロザりんさん。
……あれ?
[変わった左目の色に首を傾げた]
くすくす……
くすくす…
[ 嗤いが漏れそうになるのをぐっと堪える。]
壊すのは、それからでも遅くないでしょう。
[ 小さな相手を侮蔑するような目で見下した。]
[ にっこりと相手に微笑む。]
お元気になったなら良かったです。
貴方がすべきこと、しっかりとおやりなさいな。
[ 不思議そうにこちらを見つめる様子に、首を傾ける。]
おや?どうかしましたか?
さて、私はそろそろ行きますよ。
大丈夫ですか?
[ 羽根を動かした。]
[硝子の砕ける音に、身を強張らせる。
それでも、問われれば立ち上がり、その笑みを睨む]
まさ、か…アンタ、全部知って……その上であんなこと言ってたのか!?
それじゃ、ラスは――…っ。
[言葉を飲み込んで、視線を伏せた。
いつかのように名を呼ばれれば、呼吸すら止めて]
…俺は、ただ。
アンタの命令に従う、それだけで……。
[言うべき言葉に逆らうように、震える声。眦から零れる一滴]
逃げたいか、なんて…俺の意思を聞いても、しょうが、ない、だろうっ。
……気のせい、かな?
ううん、なんでも
もう、平気
[動く羽根に目をやったあと]
……僕も、聖殿……行かなくちゃ
あり、がとね。
[もう一度礼を言い、頭を下げる。ひょこりと動く白い翼に、落ちた影は薄れ]
知らないと、俺は言ったか?
そう、
――知っていたさ、最初から。
[面を外す。くちびるは弧を描く。]
ラスは、堕天尸の一人だということくらい。
[放り置いた面には見向きもせずに、狐は手を伸ばした。
こぼれてゆく涙を指先ですくう。]
命令が、欲しいか――?
[飛来する羽音と、紫星の気。
見上げた視界は、やはりぼんやりとしていたけれど]
……旦那……?
[それでも、そこに来たのが誰かを見誤る事はなく]
[地面に転がるラスと、アヤメを目だけで見比べる。
漆黒の翼に警戒を払いつつ声を投げた。]
………よくやった、アヤメ。
早く元に戻してやろう。……ラスも、結界樹の皆も。
[アヤメの目元に光る雫は見えぬ振りで、呼びかけに頷く。
ベルトポーチから獲物を縛る縄を取り出し、堕天尸の力を少しでも抑えるべく手足を縛ろうとラスの側に膝を突いた。]
[愕然とした思いで、それを聞き。
けれど、告げられれば何の違和感も無く、腑に落ちた]
――…もし、俺がこれから邪魔をするようなら、アンタはどうするつもりだ?
[顕になったその顔を、その冷えた双眸を見返すのは、射竦められたような眼差し]
俺は…、俺は、アンタの隷属者のままで、いたい。
[ 聖殿に行くというオーフェンに手を振る。]
平気なら良かったです。
お礼は、貴方の道の先を見てからですね。
楽しみにしております。
[ 頭を下げ、去って行く背中をしばらく見つめる。
その口元に奇妙な笑みを貼り付けて。]
[ オーフェンと別れた後、人の気配がない所に身を隠す。]
さてはて…駄目だと言われましても。
全く情けないものですね。
……アヤメ殿の力はそれだけ脅威ということですか。
[ 目を閉じて、虚の気配を探る。
その力には紫星の力が2つ、それから銀月。]
今日は私がやると言いましたし、力を貸しましょうか。
[ 羽根を大きく開く。
その色は瞬く間に闇へと色を落としていく。
感情に抑えきれなくなった虚が羽根から溢れ出していく。
それは生き物のように周りに蠢き、獲物を探す。]
嗚呼、煩いですよ。
[ そう言って、銀月の気配に集中する。
そのまま、一気に虚の気配を飛ばした。]
……ん。
そ、だね。
このままじゃ、いけない……から。
[消え入りそうな声で言いつつ、こくりと頷く]
『虚』の力は、アタシの縛で抑えておける……から。
それがある内は、そんなにがっちり締めなくても、大丈夫だよ。
……それに、もしかしたら、体痛めてるかもだし。
[縄を取り出すスティーヴの様子に苦笑しつつ、何とか、いつもの調子を取り戻して行く]
[ 虚は走った。
その表現よりは、追い求めたというが正しいか。
凄まじきスピードで、銀月の少女の下へと。]
―――――――…。
[ 虚は一気に少女を包み込み、一気に霧散した。
銀月の少女を結界樹へと封じ込める。
そのまま、虚は縛られた仲間を助けようと残りの2人を捉える。
もっとも銀月の少女を消したことでその力は弱まっている。
光の力にすぐに消えてしまうだろう。]
……嗚呼、すいません。
助けられそうにないですね。
[ そう言って消えゆく虚から自分の気配を消し去る。
力の残滓が読み取られないように。
やはり、術は苦手なようで息が少し上がっている。]
[ 虚は尚も叫び続ける。]
ハカイシロハカイシロコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセハカイシロハカイシロハカイシロハカイシロコワセコワセコワセコワセハカイシロハカイシロハカイシロハカイシロハカイシロコワセコワセゼツボウゼツボウゼツボウゼツボウコワセハカイシロハカイシロハカイシロコワセコワセハカイシロハカイシロハカイシロハカイシロハカイシロコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセゼツボウゼツボウゼツボウゼツボウゼツボウゼツボウゼツボウゼツボウ!!!!!!
[ 聞こえる声に1人ごてた。]
煩い。
文句あるなら自分でおやりなさいな。
[ それは虚との会話。
嗤う声は空に消える――――――。]
邪魔をするなら、ねェ。
[くれないは三日月に。]
すくなくとも、そんな使えない奴は、必要ない。
――とでも言おうか。
[冷えた声音で言って、わらう。]
……うん。がん……ばる
[微かに頬を朱に染め、ロザリーに手を振り返すと、聖殿へと飛び行く。誘惑を断ったことを恨むかのように、体中の痛みは増し。飛空中、微かに金の光が見えたろうか]
[ひかりの鳥は、
空を往く翼を追うように舞いかけて、
途中、宙に留まり、明滅――闇は、長く。
再び、現れた金は、先程よりも一層、薄い]
[分かっていた筈の言葉。けれど、 痛い ]
…だよ、な。
[力を抜き、またぺたりと床に座り込む。
とてもとても簡単に、ケイジが捨ててしまえる事も。
もしかすれば、自身が既に飽きられ始めた存在である事も。
分かっていて。それでも、縋るような問いだった。
片手が、無意識に瓶を探して彷徨う]
………命令、くれよ。
[アヤメが頷くのを見、警戒しながらラスを縛めて行く。
少し調子の戻った声には、振り向きもせずに声を投げた。]
………念の為だ。
もう動かないと思った獲物が一番恐い。
[仕留めたと思った獲物が急に息を吹き返したというのは、猟師なら一度は経験する事。
だが体を痛めているかもとの声に、手首足首を縛るに留める。
深い息を吐くと元気な鳴き声がして、跳ねる小さな体が纏わりついた。]
………お前もよくやったな、疾風。
カレンも急に渡してすまん。預かってくれて助かった。
[振り返り、銀の月の翼の少女に礼を告げる。
その遥か後方から、黒い影が踊り出した。疾風が吠える。]
……はい、はい。
まったく、旦那の慎重さは……敵いやしない……。
[軽口めいて言いつつ、妹分を振り返り、声をかけようとした矢先]
……っ!? 『虚』の気!
……カレン!
[陣を、と思うものの、先ほどの縛で力を使いすぎていた。
集めた光は僅かなもので、それは到底、護りのそれとは成りえずに]
―――カレン…っ!
[立ち上がるより早く、それは起こった。
振り向こうとした小柄な姿を闇が飲み込み、一気に霧散する。
何も誰もいなくなった空間。
そこに再び影が集まり、薄い紗の様に紫星二つを覆わんと。]
……くっ!
[苛立ちを帯びた声が上がる。
それでも、集めた光を自分たちの周囲に散らした。
深紫の煌めきは、こちらに迫る影を打ち消し、退ける。
それと同時に、力が抜けた。
軽い、眩暈]
……なんて……こと……。
[そして、零れ落ちるのは、掠れた呟き]
……?
[羽ばたく翼を止め、追い来る金が明滅し、薄れるを見る]
―『堕天尸』にとっては、『虚』を読み取れる者は目障りになりがちなのさ―
[アヤメの言葉が脳裏に浮かぶと、辺りを窺うように注意を向け]
[床に座り込んだ姿を少し見る。
命令をと求めることばに、三日月をすこし崩した。]
カルロス。
[名を呼びながら、手をその頭に。
身を屈め、視線を合わせようと。]
良い子にしていたら、ご褒美をやろう。
男が拗ねていても、目の保養にはならないぞ。
[地上にある金糸雀色の瞳も、それを、目にした。
されど、視えぬものを、見ることは出来ず。
やがてひかりの鳥は、ゆらりと、高度を下げていく]
アイラ……?
[足早に、その元へと向かう。
同時に、眼差しは、その上の白の翼を捉えた]
[ 虚を集めようと気を集中させる。
疲れてしまった身体を回復させるために。]
―――――――…。
[ 目を開けると同時に羽根は金の光を取り戻す。
瞳は両の目とも、バイオレット。
頭の痛みを抑えていた手をそっと降ろす。]
[懐に入れた手を抜くより早く、深紫の煌めきが影を散らす。
鋭く息を吐き、辺りを警戒しつつ立ち上がった。
足元の疾風は小さな声を漏らしながら、尻尾を垂らしている。]
………今のは、なんだ。
ラスではなかった。もっと別の方向から……カレンを。
[悔恨に奥歯を噛み締める。
己がこの場に巻き込んだ様なものだ。]
………アヤメ、どうした。大丈夫か?
[不意に零れ落ちた声に、渋面のまま視線を向ける。
頼りない様子に肩を掴もうと手を伸ばした。]
[ 気配を察することができても、光景を確認する力はなく。]
まだ、封印は始まっていないようですが。
聞こえていたら返事をお願い致します。
[ 声が返ってくることはない。
ある程度、予想はしていたが。]
弱りましたね…。
[ 心配する素振りだけはしておく。]
[肩に手が触れる感触。
唐突なそれに、身体が震えた]
……旦那……。
アタシ……まもれなかった……カレン……。
目の前にいてっ……手、届いたのに……っ!
[一緒に育った、妹分。
自分を孤独から救ってくれた者の一人。
その存在が、目の前で消された事が、心に衝撃を与えていて。
スティーヴの手の反対側の肩に止まったラウルが、くるる、と案ずるよに鳴いた]
[ほんの少しの間の沈黙すら苦痛で、見上げることはできなかったから、その表情が変化したことには気付き得ず。
名を呼ぶ声、衣擦れの音に顔を上げれば、頭に掌の乗る感触。
つい最近、くしゃくしゃとかき回された感覚を思い出せば、連想されて浮かぶのは眼を細めて笑うラスの顔で。
思わずまた、一つ、二つ、頬に滴が零れる]
そも、そも…23にもなって、良い子があるか…。
…拗ねてなんぞ、ない。
[けれど零した滴は意識的に無視して、呟く言葉は常に似せた]
頭数があること越したことはないので。
当てにはしていたのですが。
[ 広場ではまた人が集まり出しているか。]
封じられると決まったわけではありませんが。
………やはり、間違いないのでしょう。
[ 頭を上げる。
捉えたのは先の見えぬ闇。]
まぁ、仲間でも何でもありませんし。
助ける必要はないでしょう。
寧ろ、結界樹の中から是非汚してみて下さい。
そう、全て壊すのですから――――――。
[ 闇のその先を見ようと首が傾く。]
[荒れる感情を吐き出させる為、その慟哭に黙って耳を傾ける。
ラウルの鳴き声に合わせて、疾風も小さく鳴いた。
やがて言葉が途切れた頃、その肩に置いていた手を動かした。
緩く拳を作り中指を曲げて、綺麗に切り揃えられた額へと。]
………何でもかんでも一人で出来ると思うな、馬鹿娘。
[中指を軽く弾く。]
お前はさっきラスを…堕天尸を捕まえただろうが。
それに俺も守ってくれた。
………何も出来なかったのは俺の方だ。
[眉間の皺を深くし、銀色の消えた場所を見る。]
[ 暫くの間、ぼうっと目の前を見つめる。]
広場に…また人が集まりだしているでしょうか…。
[ 空を仰ぐ。
目に映りこむのは何色であるか?]
……行ってみますか。
[ と言っても広場からそれを見る気にはなれず。
あまり人が来ない、広場の見える場所へと身体を浮かせる。]
― 聖殿 ―
『また、お前か。今度は何の用だ?』
[長老の前に出ると、付き人をはじめ周囲から浴びせられる、うろんな者を見る視線。その数に圧倒され、ごくりと唾を飲む。小さく深呼吸をすると、口を開き]
……堕天尸の影、見つけた……
確認……したい……から、同席、して、欲しい
[確認とは何のことだ?と周囲はざわめきたち。躊躇いがちに、それでも薄金の羽根の持ち主、ラスの名前を口にして]
証拠……
呼ぶなり、出向くなり、して……
……僕の力を、使うから……見て……欲しい
疑わしい、だけで、人を封印するの……は、止めて
[信用がないのは百も承知で、長老に告げる]
[降りて来た鳥は、手の器の上に。
白が、村の方角へと往くを見送る。
眉が深く、寄せられた]
封印の……
それとも、誰かが、捕らわれた、影響?
[独り呟いて、視線を落とした。
撫ぜようとしても、ひかりに感触はなく。
代わりに、ふっと――何かが、失われた感覚を得る。
それは、己と近しいちから。
見上げた月が、翳ったような気がした]
まだ十分と子どもだと思うが。
[くつりと哂って、一度、撫ぜる。
そのまま手を離し、]
――虚ののぞみは聞いたか。世界のことわりを壊す、というらしいぞ。
その望みがかなおうがかなうまいが、俺はどうでもいいが。
――その望みに、エリカ嬢は魅かれかけた。
完全に、堕としてこい。
[囁くことば。]
あァ、それと、羽根を見せてみろ。
ずっと見てやってなかったからな。
[痛がるようなら、*癒してやろうと*]
[額に与えられた衝撃に、思わずきょとり、と瞬く]
……んなこと、言ったって……。
[ぽつり、反論しかけるも。
深くなる眉間の皺に、続く言葉を飲み込む]
……ん……ごめん。
それより、早く、戻ろう?
ローディに、このバカの頭、冷やしてもらわないとね。
……兄さんも、きっと、こっ酷く叱ってくれるだろうしさ。
……それに、『堕天尸』は、他にもいそうだしね。
やれること、やらない、と。
[落ち込んでいる暇はない、とばかりに言いつつ。
肩のラウルを*そう、と撫でて*]
[ 少し高い所にある其処へと腰を降ろす。
足は宙へ投げ出し、手で地面を握る。
眼下に少し遠くある人の輪を見ようと首を傾けた。]
――――――…。
[ ただただ黙ってその光景を見続ける。
其処に、男が連れて来られるのはまもなくだろう。]
………そうだな。
このまま転がしてたら馬鹿でも風邪を引いてしまいそうだ。
[ラウルを撫でるアヤメから転がるラスに視線を投げ、呟く。
紫紺の翼を仕舞い、闇色の翼に触れぬ様に肩に担ぎ上げた。]
……歩きで行くぞ。疾風もいるしな。
[疲れて飛べないだろうアヤメに短く告げて、足を踏み出す。
ゆっくりと、だが確実に踏みしめて、儀式の間へと運んで行く。]
[詰問は始まる。力があるなら、それを今まで黙っていたこと、先刻の密告について、名を上げた青年を確認したいと思った経緯、そして、お前は何者か、と]
……っ……
虚を、視る……者……
[婆様から聞いた話を告げる。本来は、堕天尸がその素質のある仲間を見つけるために使った力。虚に引き寄せられ、取り込まれる者も多いと言う。話すたび、嫌悪の視線は増し、周囲からは拘束して結界樹に封印すべきとの声がちらほらと聞こえてくる]
――…虚の望み……?
それ、に…、エリカちゃんが。
[ふと、考え込む。彼女が以前、何を考えていたかと。
翼を厭ってはいなかったかと]
…ああ、分かった……。
[翼が無い世界なら、この関係はどうなるのだろうと思い至り、声は小さく掠れた。
手入れもしたばかりで、翼に痛みは無かったけれど、緩慢にそれを広げる。
今はただ、穏やかな*眠り*に付きたかった]
−聖殿−
[辿り着いた時には既に人垣が出来ていた。
それを無視して大股で進み、アヤメとラウル、疾風が続く。
肩に担ぐ細長い背に濡れた光を放つ漆黒の翼を見、競うように道が開かれていった。]
長老、ラスを連れてきた。
………お前、こんな所で何を。
[見覚えの在る小さな子供を見下ろし、眉を寄せる。
資質のある事は薄々感付いていたが、それが何かは知らず。]
……ラス、さん……?
[耳に聞こえた名、担がれたラスの姿に、思いがけず裏返した声をあげ]
……役目、と……禊。
[緊張から喉をごくりと鳴らし、意味不明な単語をスティーヴに告げる]
[闇色の翼に、戸惑いや恐れ、好奇などの喚声で場が満たされる。ラスの体がスティーヴの肩から降ろされ、スティーヴと長老が何かを話しているのが見える。やがて長老がこちらに向かって頷くと、それを合図にラスの前に歩み寄る]
……ラス、さん……
どうして……なの?
[闇色に染まった翼に、唾を一つ飲み。長老に顎で促されると、自らの白き翼を軽く撫で、ラスに手を翳す。徐々に縦に細められていく深紅の瞳に、かの者の姿が映し出される]
……っ
[白翼から湧き漏れる光は一点に凝縮し、やがて一枚の黒い羽根を地面に残す]
……終わった。
ラスさん……虚の、虜……だった。
[それを示す儀式に、様々な声が上がる。半数以上は非好意的なもののようだが、どうでもよかった]
……はぁ……っ……
[間近で触れた虚の気配は濃く、その甘美な誘惑に頬を紅潮させ、恍惚とした表情を浮かべて、定まらない視線をゆらり泳がせる。必死で意識を保とうと耐えながら、ラスの封印の準備をするスティーヴの姿を*眺めていた*]
[ 聖殿の中のできごとを捉えることができず。
広場の人々のざわめきなどから、到着を知った。]
嗚呼、やはり。
残念ですね。
[ 気が抜けていたのか、羽根は闇に紛れる。
虚が踊るように自分の周りを飛ぶ。
極力、気配を消すように。]
肝心なところは見られませんね、これでは。
[ そう言って首の傾きが増す。
言葉に反応するように、虚が踊った。]
[ やがて光の波動が聖殿から漏れれば、虚は羽根へと姿を隠す。
それと共に、幻視を強めると金色に輝きを取り戻す。]
気配が消えましたね……。
[ 淡々と事実を述べた。]
全てのものは表裏一体。
それは結界樹ですら同じこと。
強い光の傍には底のない闇が潜んでいる、と。
私はそう思うのですが。
まぁ、救われるのでしょうか。
結界樹の中で。
[ 立ち上がり、羽根を広げる。
結界樹に向かって言葉を紡いだ。]
どちらにせよ……。
アレをコワさないカギり、このシマハコワセナイ。
[ 睨みつけるように言った後。]
お疲れ様でした。
お達者で――――――…
[ 戻るのは自分の部屋。
今となっては、この島で一番虚が濃い場所。
ベランダには、割れた硝子と水のシミ。
ほんの少し、男の虚の気配が残っていた。]
………喰らいたいなら、お好きなように。
[ 闇はまた、蠢きだす。
自身はベッドの上にその身を投げる。
これからのことを考えると愉快なのか。
その唇を持ち上げた。
部屋の中は酷く*暗く感じた。*]
[オーフェンが儀式を終え、熱に浮かされた様子で下がる。
長老へと視線を投げると、ラスを封印するとの声が響いた。
重く頷き、縛ったラスの体を儀式の場中心に移す。
背に視線を感じたが振り向く事なく、準備を終えた。]
……家族の事は心配するな。
きっちりジョエル達に謝って、帰って来い。
………長老、頼む。
[アヤメの縄の為か暴れる事のないラスに囁きを落とし、下がる。
長老の重々しい声が響き、儀式の開始を告げた。
封じの言霊が紡がれ、ラスの顔に苦悶の表情が垣間見える。
目を逸らす事なく、ひょろ長い体を光の陣が取り巻き、光の渦となって飲み込むのを見ていた。]
[オーフェンの側についていた様子のアヤメに頷き、儀式の場を見回す。
あの日、目に付いた者達の姿は他に見えない。
無言のまま眉間の皺を深くする。]
…………結界樹の様子を見てくる。
そいつの事は任せた。
[未だ名を知らぬ子供に視線を投げ、アヤメに背を向けた。
扉から外に出て階を蹴る。紫紺を羽ばたかせ、夜空へ。]
[かすれた声の承諾のことば。
狐の面を外した顔で、わらう。
紺碧の翼が開かれて、それが大丈夫そうなのを見てとると、噛み切られたくちびるに指を伸ばした。]
こっちも治してやろう
[白のちからがふわりと舞う。
回復に長けたそれは、ほのかな温かさをもって、部屋に満ちる。
つ、と指を離すとそこに傷はなく、面を拾った狐は立ち上がった。]
[そうして扉はしまる。]
[再び、ゆるりと歩んだ先には小高い丘。
仰いだ天には深い闇が広がっていた。
月と星の光は、何処か、遠い。
森からも海からも村からも、近くも遠くもない場所。
最早慣れた動作でぺたりと地に座り、手のひらを当てた。
銀の翼が伸び、淡い金が消える]
[――その頃、広場で儀式が行われていたのは知らず。
銀月のちからを、追うのみのつもりだった。
だからこそ、探り出すとほぼ同時に流れ込んで来た存在に、まばたいた]
……、…………っ?
[暮れゆく空、
落ちゆく陽、
包みゆく闇を、幻視する。
輝く金が染まりゆくさまを]
[話した事は、少なかったけれど。
少しだけ嬉しそうなふうと、かけてくれた言葉。
記憶のかけらが、浮かびあがっては、沈んだ]
……、どうして――……
[ぐらり、視界が揺らぐ。
は、と短く息を吐いて。
地から離れた手が、羽根を掴んだ。
一度は弱く、二度目は強く引いて、銀をちぎる]
[手を広げる。
銀が舞って、空を往った。
戻ったひかりの色は薄く、
入れ違いに一枚の羽根へと還る。
その根元の闇は、濃い。
抱くように、包んだ手を引き寄せる。
* そして、風に揺れる銀翼は、緑ふかき森へと隠れた *]
[いまだ焦点の定まらぬ目に、ぼんやりと封印の光が映る]
……ラス、さん
[思い出す笑顔。虚の虜となりし彼の苦悩にも気づかず、歯痒さに唇を噛む]
……また、会えるよ、ね……
その時は、違う人に、なってる……?
[ぽつりと独り漏らす。傍に複雑な表情のアヤメの姿があれば、手を差し出しかけて、見えない壁に当たったように止め。虚の酔い覚めやらぬまま、人々の嫌悪と畏怖の視線を受けながら、独り聖殿を後にする。カレンのことは、いまだ知らぬまま]
……虚……って、どこから、来ると、思う?
[去り際、すれ違う長老に、ぽつり。長老は何も聞こえなかったように、無言で奥へと消えていく]
……
[黙って空を見上げ。ましろの翼を拡げて、あてもなく広場から*飛び去る*]
[唇に触れる指。もしも今、この指を噛み切ろうとでもすれば、目の前のこの人間は驚くだろうか。
出来もしない、外れた思考に辿り着くのは、呼吸すら侭ならぬこの状況を直視しない為。
或いは、傷を癒すその優しく暖かな光が、けれど毒杯の様に思える錯覚を無視する為]
………。
[去る様子に掛ける言葉は持ち合わせておらず。
扉が閉まっても、ただ、その向こうを見ていた]
―聖殿―
[飛ぶどころか、歩くのも億劫な状態でたどり着いた聖殿。
そこにいた少年の姿に、目の前で消された銀との約束が過る]
……く。
[崩れそうになる。
が、ぎりぎりで押さえた。
少年の力の行使と、その後の封印の儀式と。
その双方から、目を反らさずに見つめて]
おかしく変わってたりしたら……また、引っ叩いてやる……。
[微かに捉えたオーフェンの呟きには、低く、呟いた]
[結界樹を見てくる、というスティーヴ。
任せる、との言葉に頷いた矢先に、当の少年は側を離れて飛び去り]
ちょいと、お待ち……。
[後を追おうとするも、引き止められた。
『虚』を弾き、『堕天尸』を捕らえた力。
それがなんであるか、の問いが投げられる]
……ま、これ以上隠してても、ねぇ……。
[ため息一つ。
周囲を見回し、告げる。
自身の血脈と、そして、力の事を]
[ざわめきは大きかった。
向けられるのは畏敬と……それから、期待。
出自の知れぬ余所者の遺され子、と。
陰で謗っていた者からも向けられるそれに。
微か、募ったのは苛立ちか]
……。
[何か言いかけて、止めて。
疲れているから、と短く告げて、広場を立ち去る。
家に帰る気にはなれず。
向かったのは、森の奥にひそりと築いた両親の眠る場所]
[部屋に戻り、外には出ず。
狐は翌朝、屋敷の者の騒ぎで知る。
――彼が堕天尸だったなんて。]
彼、ね
[聞いてわらう。もう一人はまだ、見つかっていないらしい――。]
−結界樹−
[夜の中、大樹は静かに佇んでいた。湖面に銀の月が揺れる。
その根元へとゆっくり歩み寄り、幹に布を巻いた手を当てた。]
………来るのが遅くなってすまん。
早く出してやりたいんだがな…俺では力が足りないようだ。
[俯きがちに口の端を歪め、目を閉じた。
夜風に木の葉がささめく音だけが耳に返る。]
………やっと一人見つけて送る事が出来た。
だがまだ他にもいるらしい。俺はそちらを探しに行く。
ラスが目を覚ましたら、俺の分まできっちり叱ってやってくれ。
………またな、とは言わん。
次に会う時は樹の外でだ。
[挑戦的に口の端を上げて背を向け、湖へと地を蹴る。
大きく重い翼を強く羽ばたかせ、再び夜空へ。]
アヤメ嬢が守護天将の血を持つ者とはねェ。
守り手とはさぞかし手を焼いていることだろうな。
[喉の奥でわらいながら、狐はふわりと空へと舞い。]
手伝ってやろうか。
匿うだけではなく。
[浮かんだかおは、狐の下。]
[白い羽根をはばたかせ、狐は慣れた道をゆく。
もう一人と話をするために。
やがて家の姿が見え、
彼女のいつもいる、そのベランダへと。]
― 自室 ―
[ 相変らず目覚めは悪く。
起きてからも憂鬱で仕方がなかった。
水を飲もうと水差を探したが、其処にはコップしかない。]
嗚呼、そうでしたね。
[ 水は既に乾ききっていて、其処には硝子の破片のみ。
いつものようにベランダに出たところで気配に気付く。]
……おはようございます、ケイジ様。
さて、何のお話でしょうか?
[ 見当はついているが。
男が堕天尸、己のことを知っていることを自身は知らない。]
おはよう、ロザリンド。
気分は悪いか?
[問いかけ、狐はわらう。]
そうだな――名目は、見舞い、だ。
何のかは、さて。お前がよく知っていると思うが――
[ 相手の様子にくすりと笑いを漏らす。]
はい、夢見が良くなかったようで。
気分転換にベランダに出ようと。
お見舞い……ですか?
くす…ありがとうございます。
名目と言われると困ってしまいますが。
[ 己の正体を隠そうと笑みを作り続ける。]
あァ、――もしや、聞いていなかったか
[ようやく気づいたとばかり、狐はわらう。]
彼にも困ったものだな。
伝えておいてくれたなら良いものを。
アヤメ嬢の事も、聞いてないンだろうな
[笑うロザリーへと手を伸ばす]
俺は、 知っているぞ。
――最初から。
[ 伸ばされた手に瞬き、首を傾げる。]
アヤメ殿のことは聞いています。
手を出さぬほうがいい、とは。
嗚呼、けれど彼のことをご存知だとは……。
最初から知っている、とは。
[ 伸ばされた手をただ見つめ返す。]
それは……どういう意味でしょうか?
[ 冷静を装うも、何処か動揺を隠しきれない。]
[抵抗もない。
その髪に触れる。すくう。]
わからないふりは、しなくてもいいぞ。
俺には何も言うつもりはない、 いままでのように
隠すのは、疲れないか――?
[ 触れられた部分を視線だけで追う。]
――――――…。
何も言うつもりはない…ですか…。
[ 信じていないわけではないが。]
女には秘め事の1つや2つあるものですよ。
まぁ、疲れはしますが。
ケイジ様。
全てをご存知のうえで私と話をされていると?
[ 笑みを浮かべた表情は先程までのものと変わる。
何処か奇妙で、何処か歪んだ、そんなもの。]
世界のことわりとやらを、
[その表情を見ても、狐の調子はかわらずに。]
壊す、のだろう?
目的は。
――そう、すべて、知っているし、知っていたさ。
[ 何処まで知っているだろうか。]
嗚呼、よくご存知で。
[ 隠す必要がないと感じたのか。
背中の羽根を大きく広げる。]
……私を脅しているのでしょうか?
知ったうえで、黙っているとは。
もしくは…またお戯れですか?
[ 気持ち悪い笑顔のまま訊ねる。]
脅し?
[くすりと、わらった。
背中の翼――色を見て。]
そんなことはしないさ、ロザリィ。
ただ、そうだな。戯れ――というよりも。
どちらが愉しいかとおもっただけだ
[ 納得したように1つ頷く。]
成程。
ごもっともな理由ですね。
[ 頷いた後、くすくすと嗤う。]
では、ケイジ様。
このことは内密に願いますね。
お約束頂けないなら。
その時は貴方様であろうと――――――。
[ その先の言葉は押し殺した。]
言っただろう?
何も言うつもりは、ない。
[くすり、わらって]
こわいことだ。
その時は、訪れないだろうが。
あァ、そうだ。
邪魔なら、手伝おう。――必要か?
[ 言うつもりはない。
綺麗な笑顔を浮かべて謝礼を。]
ありがとうございます。
そのお言葉に偽りがないことを信じておりますわ。
[ けれど、後に続いた言葉に思わずきょとんとしてしまう。]
お手伝い……ですか??
嗚呼、アヤメ殿は邪魔ですが…。
[ 手伝いという響きに不思議そうに話す。]
守護天将の血とはねェ。
[わらう]
そう、手伝いだ。
気をそらすなりなんなり、してやろうか?
そうすればお前もやりやすいかと思ってね。
守護天将の血……ですか…。
[ 面倒くさそうに溜め息をつく。]
…と言っても何をお願いすればいいか。
嗚呼、エリカ殿も邪魔ですね、そういえば。
彼女を消すことができたら、とは思っているのですが。
アヤメ殿の術を彼女から外せないかとは思っています。
[ 元より1人でもやるつもりだったが。]
噂話になっていなかったか?
[ゆるりと首を傾け]
なるほど。
アヤメ嬢はひどく、くるしむだろうなァ
[それは愉快げに]
そういえば……
お前たちを見つけられる者もいるのだったか。
あまりいい顔での会話ではなかったが。
噂…ですか…。
いえ、私は初耳ですね…。
[ 決まった人からしか話を聞いてないことを思い出した。]
―――――…。
私たちを見つけられる者ですか…?
そんな方がいらっしゃるのなら、早急に消えて頂かねば。
[ その言葉と共に羽根から黒いものが蠢きだす。
足元にぼとりと落ちた黒は居場所を求めるかのよう昇る。]
さて、いったい誰で、どんな力なのやら
[うごめく黒に触発されたか、狐の額のやみがうずく。
たかぶる感覚は歓喜か狂気か。
しかしそれを持つ男は、それすら愉しみ、わらう。]
どちらを……ねらう?
弱りましたね。
長老殿にまた脅しをかけておいたほうがいいでしょうか。
そんなものに惑わされるな、と。
[ くすくすと嘲笑う。]
何処を狙いましょうか。
今日はエリカ殿をもう一度、とは。
まぁ…失敗すれば彼のようになりますから。
どうしようかとは考えていましたが。
[ 左目に闇が差し始める。
それを隠すかのよう手を翳した。]
長老殿ね
[くつり、わらって]
扱いやすい、長老殿――
エリカ嬢は、うまく運べば、味方をしてくれるかもしれないな
ロザリンドまで封じられては詰まらないから、
そうはならないことを俺は願おうか
[隠す彼女を見透かすような、黄金の狐のひとみ]
味方…ですか?
[ 驚いてばかりいるか、今日は。]
なら、エリカ殿は残しておきましょうか。
詰まらない…ですか。
…私も封じられるつもりは全くありません。
全てをハカイし尽さなければなりませんから。
[ 狐の面をじっと見据える。]
[夜空を飛び戻るも、そこにオーフェンとアヤメの姿はなく。
天将の血脈に対するささやきに、事の原因を察した。]
『……なるほどな。
長老の問いとは言え、余計な事を口にしてしまった。』
[オーフェンの術を行使する前、ラスが暴れないかとの長老の問いにアヤメの力の縄があるからと答えた事に臍を噛む。
青年を戒める力が紫星であり己が術を使えぬと長老が知る以上、偽りを口には出来なかったのでは在るが。]
………皆早く帰れ。
堕天尸はまだいる可能性が高い。
[睥睨し集まる人々を散らせ、重い溜息を吐く。
足元に寄って来た疾風が小さく鳴いて角の根元を摺り寄せた。]
うまくすれば
或いは、な。
すべての破壊、ね。
そうなったその先が愉しみだ
[狐がわらう]
ではアヤメ嬢の気をそらしに向かおうか――……
………疾風、帰るぞ。
行かねばならない所も…あるのでな。
[慰めたいのか寂しいのか。
足元に纏わりついて離れない小さな体を抱き上げる。
円らな瞳が主の消えた場所を見つめ哀しげに鳴く。
その背を黙って撫で、聖殿を後にした。]
[夜空を飛び、ラスの家へ。
不安に暮れる家の者に、淡々と事実のみを連ねていく。]
……ラスは今、結界樹の中で巫女の側近く眠っている。
目覚めた時には元に戻っているだろう。
………しばらく風当たりが強いだろうがあまり気に病むな。
性質の悪い…流行り病にかかったようなものだ。
誰にでもなる可能性があり、命取りにもなりかねん病にな。
[慣れぬ言葉を紡ぎ、その心の負担が減るように願う。
最後に疾風の頭に手をやり、褒めてからその場を辞した。
向かったのは―――施療院。]
困りましたね。
どうしましょうか、今日は。
様子を見るのも一興かもしれませんね。
[ 海を眺めながら嗤う。]
嗚呼、ケイジ様。
お気をつけくださいね。
虚は、―――――大好物ですので。
[ 狐の面を指差す。
憎しみを嘲笑うかのように。]
─森の奥・両親の墓─
[森の懐の奥深く。
知る者の限られた、白の花咲く木の根元。
そこは、異邦人たる両親が眠りの場所として選んだ場所]
……っ……。
[そこまでたどり着くのが限界だった。
身体的も、精神的にも。
未だ花の開かぬ木の下に崩れるように座り込み、はあ、と一つ、息を漏らして]
……くっ……まだっ……まだ、崩れるわけにはっ……。
[ 羽根を羽ばたかせるケイジをいつものよう見送る。]
……ご無理はなさらぬよう。
[ どうだっていいけれど。]
ケイジ様にご満足頂けるよう頑張りますわ。
[ いつものように綺麗に笑うよう心がける。
羽根は黒から淡い金へと*姿を変えていた。*]
[まだ、終わってはいない。それは感じているから。
だから、崩れられない。
そんな風に自分に言い聞かせる]
……ホント……バカだ、アタシは……。
[掠れた呟き。真白がくるる、と案ずるように鳴いて、見上げるのをそぅ、と撫で]
……平気だよ、ラウル……大丈夫。
アタシは、まだ、崩れない。
……崩れちゃ、いけないんだ。
[声に出し、繰り返して。ふわふわとした真白の身体を、両腕で抱え込んだ]
……いなくて、よかった。
こんなザマ見られたら……もう、どうしようもなくなりそうだし、ね。
[呟いてから、小さく、息を吐いて]
でも……ちぃと、寂しい、かな……?
[零れた言葉に。ラウルはまた、くるる、と鳴いて。
案ずるよな響きに、抑えが効かなくなり]
……っ……。
[開いたままの四翼、それで自分自身を包み込んだ。
泣くのを是としない娘の、ささやかな虚勢。
やがて諸々の疲れは、眠りの淵へと*その身を誘い*]
−施療院−
[未だ帰らぬ孫を待っていた老婆に目を伏せ、首を横に振る。
それだけで医の賢者は察した様だった。
急に小さく見えた姿に、低く声を掛ける。]
………すまん。
近くにいながら、虚に襲われるのを助ける事が出来なかった。
[感じる視線に顔を上げる。
こちらを見る目は、感情に揺れながらも理性が光っていた。]
……ああ、おそらく。
他の者と同じく結界樹にいると思うのだが…な。
………確かめに、行ってくる。
[エリカと、そして消えたオーフェンとアヤメも探しに飛び立とうとする背を止められる。
胆力を高める薬湯だと言われ、断れなかったのは負い目から。
部屋を出て数歩も行かぬ内に膝が崩れる。ラスを探し飛び回った疲れもあり、舌打ちする間もなく意識は泥沼に*引きずり込まれた*。]
[鳥たちの鳴く声に目覚めたら森の中。いつの間にか倒れていたようだ。胸の痛みに思わず数度咳き込む]
身体の、病気……は……
……薬、もらいに……行く?
[よろよろと立ち上がり、施療院へと足を向ける]
………………。
サイアク……。
[四翼の作る覆いの下、小さく独りごちる。
手鏡に映して見るまでもなく、今の自分の顔は想像がついたから]
まっずいねぇ……こんな情けないザマ、エリィや旦那には見せられやしない……。
[呟きつつ、それでも袖で顔を拭い、四翼を開いて立ち上がる。
泣き腫らしたと一目でわかる様子は、他者に見せられたものではなく。
誰にも会わぬ内に、家に戻って湯を使おうと、急ぎ、飛び立った]
……ん。
[不意に、くるるとラウルの鳴く声が響き、羽ばたきを止める]
どしたい、ラウル?
[問いに、ラウルはまたくるると鳴いて。
ふわり、真白を広げて下へと向かう]
って、こら、何処へ!
[上空の影は、白。そこから伸びる見覚えのある長い尾羽に]
……らう、る?
[頭上に手を伸ばすと、くるると鳴きながら、白が腕へと舞い降りる]
[森へと降りたラウルの様子に、っとに、と舌打ち一つ]
何だってンだい、もう……。
[文句を言いつつ、白の後を追う]
[オーフェンの腕に止まったラウルは、くるる、くるるる、と案ずるような声を上げ]
どうしたの……散歩?
[ラウルの柔らかな背を指で撫で、ふわり穏やかな笑み]
……うん、平気……だよ。あり、がと……
[上空から迫る紫の四翼が視界に入れば、そちらを見やり、表情を硬くする]
[散歩、という問いに真白はふるりと首を横に。
それから、硬くなる表情にくるる、と鳴いた]
[他方、四翼は森へと降りる。
目に入るのは、真白と、そして]
オーフェ……って、わっ……。
[真白が止まる者の名を呼ぼうとした矢先、翼の均衡が崩れた。
地上までもう少し、という所で、軽く失速し、落ちる]
ったあ……情けなぁ……。
……っ!?
[いきなり失速するアヤメの身体を抱えようと駆け出した。間に合った所で下敷きになるだけだろうが、多少の緩和はできるだろう]
……アヤメ、さん……っ、平気……?
[落ちた相手の顔を見れば、その異常さに気づき、息を飲む。その音は近くでくるる、と鳴き声に掻き消されたか]
[駆け出すオーフェンに気づき、半ば気合で揚力を生み出して。
下敷きにする前に、軌道を正してふわりと……やっぱり落ちる]
ってて……ああ……平気さね。
まだ、四翼を使うのは、慣れてないからねぇ……。
[口調は常のよに軽いが、浮かべる笑みは苦笑交じり]
……こんな顔になってるの、みんなにはナイショだよ?
[音はかき消されても仕種はさすがに読み取れて。
冗談めかした口調で、口止めを試みる]
[慣れてない、と言う四翼に目をやり、苦笑するアヤメの顔を見て小さく頷き]
……うん、わかった。
[立ち上がるために手を貸そうとして、思いとどまり、その場に座る。一瞬躊躇してから、口を開き]
ねえ、ラスさんって、どんな人……?
[鳥の囀る声。朝の音。
動き出すべき時間と分かり、寝台から身を起こす]
………は。
[とても小さく息を吐く。やるべき事は分かっているのに、どうしても身体は重かった]
女の子を口説き落とす事に、変わりはないんだけどねぇ…。
……ありがとねぇ。
[くすり、と笑い。
その場に座って投げられた問いにきょとり、と瞬く]
……え?
どんなって……。
……一言で言えば、バカ?
[さっくり酷い]
[ゆるゆると身支度を整え、やる気無い足取りで屋敷の中を歩む。
今日の噂の種はその内容ゆえ、先日以上の勢いを見せていた]
…ラスも、オーフェンも、……あやめサンも。
どうしてこんな事の中心部にいるんだか。
そ知らぬ顔、しててくれれば良いのにさ。
[呟く言葉には溜息が混ざる。何かを振り払うよう、頭をわしわしかき上げた。
常のように裏口から外へ。向かう先はアヤメとエリカの家]
……あれ?
バカのひと……カルロスさんじゃ……なかった?
[と首を傾げ、伝染るって言ってたことを思い出して、納得した]
……そうじゃ、なくって……
僕たちの前の、ラスさんって……本当のラスさん、だったの、かな?
……アレは、大バカ。
[更に酷い]
本当も何も……アイツは、アイツのまんまだよ?
お人よしで世話好きで心配性で聡いようで鈍感で。
自分より、まず、人のために動こうとするバカ。
……でも、一緒にいると、あったかくて、安心する。
ちっちゃい時から一緒にいた。
アタシの知ってるアイツは、アイツのまんま。
『虚』に寄ってようがいまいが……変わってなんかない。
[ぽたりと頬に当たる雫。
冷たさに、眼を開いて、身を震わせる。
森で眠る様子も己を包む翼も傍らの鳥も、
護り手たる娘によく似ていたが、
四翼は異形であり、ひかりに器はなく、滴は一粒も零れていなかった]
……そうなんだ。
[最初の一言も含め、説明を聞くと、息を吐いて、安心したように目を細める]
うん、僕の知ってる、ラスさん……と、一緒
……あったかい、の
[自分の頭の、ラスに撫でられた辺りに触れ]
……頑張ろう、ね。
[アヤメに笑いかける]
……返事が無い。誰も……、いない?
[それなりの緊張感を持って訪れた家。けれど、それは空振りに終わってしまい。
また誰かが倒れたのかと施療院に行けども、こちらでも目的の人物は見当たらず。
ただ施療院の主から、カレンもまた結界樹の中に居るのだと言う事を聞くことになり、表情を険しくした。
礼を述べて、施療院を辞する]
…これは、勘で探し回れと言うことかね?
運命の出会いとやらが、現実に存在したら驚くもんだが…。
……『堕天尸』になったからって、その者の本質は変わらない。
アタシの母上が、そう言ってたよ。
『虚』は、誰しも抱えるモノ。
ただ、それとどう付き合うか、どう向き合うか。
それが道を分けるだけ……ってね。
[亡き母の言葉を思い返しつつ。
笑う様子に、笑みで返して]
ああ。
頑張らないと、ね。
[ゆらゆらと中空を漂う、
淡い――薄くなったひかりを見上げ、緩慢に身を起こす]
……どうしようか、な。
[首筋に、色を失った指先を添えて、独り言ちる。
ゆるりと首を巡らせ、
微かに聞こえる水の音に喉の渇きを覚えて、そちらへと歩むことにした。
数日前に訪れた、洞窟の傍と気づいたのは川辺に辿り着いてからのこと]
堕天尸……に、なっても、変われるわけじゃ、ないんだ……
[目を伏せて、つぶやく]
虚は、なく、ならない……
……うん。虚があってもなくても、ラスさんは、ラスさん、だったし。
[アヤメの顔に笑みが浮かんだことに一瞬嬉しそう]
堕天尸、どこにいる、んだろ……?
……知ってる?
[ラウルに向かって首を傾げる]
[それ程多くも無い、エリカとの記憶を思い出す。
最初に出会ったのは、広場]
後は…島の端と、あの洞窟か……。
エリカちゃんは、人目に触れないような場所が好みなのかね。
[そんな場所にばかり向かっていた自分に気付けば苦い顔。
けれど、躊躇うことなく、どちらかと言えば近い森の中の洞窟へと足を向ける]
変わりたくて、そうなるヤツも、いるかも知れないね。
けど、人の根っこなんて、そうそうころころ変わりゃしないよ。
[目を伏せる様子に、静かにぽつりと呟いて]
『虚』がなくなれば、人も世界もおかしくなる……だったかな?
ただ、強くなりすぎると、危なくなる……ってだけで。
ちぃちゃい頃に聞いた話だから、よくは覚えちゃいないんだが。
[嬉しげな様子に、感じるのは安堵]
どこに……か。
さて、島にいるのは、確かなんだが……。
[呟いて、空を見上げる。
首を傾げられたラウルは、くぅぅ、と鳴きつつ、同じ向きに首を傾げ]
−施療院−
[見慣れぬ部屋で目を覚まし、顔を顰めて手の平で覆う。
薬による眠りの強制。常と違い覚醒は鈍い。]
………一服盛られたか。
[諦めの溜息を吐き、顔を洗う。
鏡に映る姿に渋面は更に酷くなり、腰に差したままの狩猟ナイフを顔に当てた。]
…これでいいだろう、先生。
[無精髭を剃り終え、鏡に写る老女へと問う。
頷きに口の端を上げ、感謝の呟きを残し露台から飛び立った。]
[片膝を突く。
揺れる水面に映る己の顔に、表情はなかった。
手のひらの器で水を掬い取り、喉を潤す。
ほぅと、細く息を吐いた。
それから、顔を洗う。全てを流そうとするように]
そう……かも、ね。
服、着替えて、気分変わっても、中身は、一緒……
うん、婆様も似たこと、言ってた。
……必要、あく……とか
やっぱり島に、いる……んだ、よね
……僕の知らない人、かな
[ラウルと見つめあった後、アヤメにつられるように空を見上げる]
……あ、どこかに行くつもり、だった?
[さくりさくり。森の中、踏む草の音は先日と変わらず。
重い気持ちの一人歩きであることも、変わりは無く。
変わってしまったのは――…、]
いや、本当は何も変わってないのかもね…。
ただ…、俺がバカだってだけ、で。
[自嘲して。近くのせせらぎの音が、乱れたのを耳が捉える。
人か、獣か。覗き込む先、見覚えのある探し人の姿]
/*
ここは墓下赤は見えるのかな??
グレイ殿。
今日も私は襲撃に悩んでおります…_| ̄|○ il||li
誰を…誰を…襲えばいいでしょうか…。
空襲撃でもやろうかなぁ(笑)
そ、そんな感じだろうさね。
[服の例えに、くすりと笑って]
アンタの、婆様が?
必要悪……か。
まあ、例えそうだとしても、迷惑極まりないし。
さっさと頭冷やさせるに限るさね。
ローディが結界を張ってから、外に出たヤツはいない……つまり、『堕天尸』は島にいる。
知らない人とは……限らないだろうさ。
良く知ってる相手が、って可能性は、まだまだ、ある。
[静かに言って。
問いかけに、あ、と短く声を上げる]
そうそう、エリィや旦那に見つかる前に、化粧直しをしないとって思ってたんだ。
急がないと、見つかってバレちまう。
−上空−
[上空の冷たい風が、体に残る倦怠感を吹き飛ばす。
風に乗り体力を温存し、地上に探し人の姿を求め目を凝らす。]
………高度を落とすか。
[森の上、生い茂る木の葉に阻まれ人影が探しにくい。
少し高度を落とし、緩やかに旋回した。]
や、エリカちゃん。
こんな所で会えるなんて、運命かな。
[常に似せ、飄々とした態度を作る。
手持ちのハンカチを差し出して、]
水も滴る良い女なのは良いけど、ほら…顔拭きな。
うん。婆様……
……自分に、言い聞かせてる……みたいだった、かも。
さっさと……うん、見つけてから、考える
あ、知ってる人……も、そうかも、しれないんだ。
……どう、しよう。
[ラスの笑顔を思い出し、小さく息を吐く]
……あ、急いでたのに、引き止めちゃった?
心配かけたくないから、内緒、だね。
― 自宅ベランダ ―
[ ケイジが飛び立つのを見送った後、自分も羽根を広げる。]
結界樹でも…見に行きましょうか。
[ 逆に部屋から出れば疑われるだろうか。
けれど、自分の行動を気にする人間もいないだろう。
羽根を動かし、空へ飛び立つ。]
運命?
[はたりと瞬く。
流れぬ涙の代わり、落ちる雫]
ん――……
[差し出しされた布と相手を見比べるも、
ゆるりと首を振り、己の服の袖で顔を拭った]
……、……封印。
されたの、知っている?
……ふぅん?
[オーフェンを育てた老婆の事情は知らぬから、首を傾げつつ]
……ま、知り合いだったら、その時はその時さね。
[息を吐く様子に、苦笑しつつ、ゆっくりと立ち上がる]
いや、いいさ。アンタと話したいって思ってたし。
……その様子だと、大丈夫そうだしね。
そうだ。ラウル、アンタはこの子と一緒にお行き。
どうにもすぐにふらつくようだし……危なっかしくて、ほっとけやしない。
[何でもない事のようにさらりと言えば、ラウルはぴぃぱた、羽ばたいて]
んじゃ、ひとっ走り行って来るから、口止めはよろしくね?
アンタも、無理はするんじゃないよ!
[ハンカチを断られ、肩を竦める。残念めいた顔。
本題のすぐ近くの話題に、少し考えて]
…それは、昨日の?
あんまり…詳しくは知らないかな。
カレンちゃんと……ラスだった事は、知ってるけど。
[名を呼ぶ前に、微かな躊躇い]
…その事で、エリカちゃんに会いに来たんだ。
……そう。
封じられたのは、堕天尸。
また、気づけなかった。
[ぽつり、
零す声にも感情の色は見えず。
ただ、眼が揺らめいた]
そのこと?
あれは…アヤメ。それに…ああ、あの子供か。
[遠目見つけた姿に、昨夜から一緒だったのかと合点する。
そのまま空を滑り近づこうとして、視界の端を掠めた淡い金色に反射的に振り返った。]
…………ロザリンドか。
[昨夜封印した人物ではない事に、安堵と落胆の混じる感情を抱えつつ、空に留まりその姿を見た。]
うん。大丈夫……
[むっとしたように口を尖らせて、天を指さして]
危なっかしいのは、アヤメさん……だよ?
……さっき、落ちてきた、のに……
[ぴぃぱたと羽ばたくラウルに、ね?と同意を求めて]
うん、内緒
……アヤメさん、も、無理しないで、ね。
[口の前に指を一本立て。ラウルへの言葉に違和感を覚え、駆け出すアヤメの背中に向けて]
ごめん、なさい……
[なかなか告げられなかったその言葉は、果たして耳に届いたか]
結界樹…ですか…。
[ やはり、考えることは好きなようで。]
……少しでも汚せるよう、根元に虚を埋めてみるのも。
それは、それで愉しいかもしれませんね。
――――――…。
ケイジ様がご存知だとは。
悪い方向に働かなければいいですが。
[ 視界には結界樹が。]
…そおね。ラスは、堕天尸だった。
[鈍い痛みと共に、浮かべるのは苦笑]
……また、って事は、前にも気付けなかったことがあったんだ?
[その口ぶりを気に止めて、顔を覗きこむ。
感情の無さ、けれど、揺らめくものが其処にはあって]
うん、その事。まだ、この島には堕天尸がいて。
それだから、エリカちゃんに、俺の味方になって欲しくて。
[駆けながら、肩越しにちらりと振り返る。
指一本立てる仕種に、くすりと笑みが零れた。
それから]
……エリィといい、オーフェンといい……。
なぁんで、揃いも揃ってアタシに謝るかなぁ……。
[微か、捉えた言葉に。困った子たちだ、と呟いて]
そんな言葉、いらないよ。
謝るなら……笑って。前、見て。
[紡がれるのは、願い]
………いや。
[一度横に首を振り、紫紺を広げ近づいてゆく。]
………………よく見るなと思ってな。
[それがいつからかを思い、目を眇め淡い金色の翼を見る。]
……鷹の目殿ですか…。
[ 暫く考えた後。]
嗚呼、彼を消すのもまた面白いかもしれませんね。
[ 最近の様子を見ていると、長老には信頼されていそうだ。
と、するならば。
彼が長老に封印される可能性は低いだろう。]
……ここでやるのは目立ちますね。
[ 羽根の金色が暗く明滅する。]
[小さな頷きは、肯定の意。
前に向いた眼差しは過去を見つめる]
……どういう、こと?
[まだいるという事実を彼が知っていることと、
その後のまるで繋がらない台詞に、眉を寄せた]
[走り去るアヤメを見送った後、くるる、と鳴く声に]
……ラウル、どうしたの?
アヤメさん、心配?
うん、大丈夫、だよね。強い、から……
[嫌な予感を振り払うように、ラウルの嘴をちょんとつつき、微笑む]
[家へと駆け戻れば、さっと湯を使って身体を流し、身支度を整える。
泣き腫らしの顔も、多少はマシになっただろうか]
さぁて、と……。
あの子ら、二人を一度には護れはしない……なら。
アタシ自身が盾になるのもまた、一興かね。
……旦那やら兄さんやらには、怒られちまうだろうけどさ。
[期せずして、それは巫女の思いと同じものだが。
それは、知る由もなく]
……行って、みるか!
[先の事はわからない、けれど。
決意を込めた呟きの後、外へ]
コレが、ねェ
[空に舞いあがり、浮かべた微笑。
狐の面に隠されて。]
餌とは。
――さすがというやら、おろかというやら。
喰らいつくせなど、しないものを
2度も気付けないでいるなんて、本当は、エリカちゃん…無意識に気付くことから逃げてるんだったりしてね。
[浮かべる笑みは偽悪的なものへと変わって、]
…エリカちゃんが、この間、翼を要らないって言ってたの思いだしてさ。
それで、君はこの世界のそういうコトワリも含めて壊してみたりしたいのかなぁ、って。
もしそうなら、手伝って欲しいんだ。
もう一人の堕天尸を残すことと、結界樹の中の人数を増やすこと。
[自らの立場を明確にせず、けれど頼む内容は明確に]
[かけられた、声。
視線がつい、と上を向く]
……おや、狐の旦那。
アタシだって、たまにゃ一人の時もあるよぅ?
[口調は軽いが、しかし。
瞳には、底知れぬ男への強い警戒の色]
……で、何か御用かい?
おもしろいことを、知っているものだからねェ。
[警戒の様子になお愉しげに、狐はわらう。]
――かれが、なぜ、付き人殿を おしこめたか
[ 大げさに溜め息をついてみせる。]
……普段は確かに出かけませんからね。
かといって、家に篭っていても仕方ありません。
[ 癖になってしまったのか、左目を隠した。]
昨日、堕天尸が封じられたと聞きました。
それからカレン殿のことも。
まだ堕天尸はいるようですね。
[ 相手を牽制するかのように問いかける。]
逃げて……、
[揺らぎは大きくなる。
きつく眉を寄せて、己の胸元を掴んだ]
壊し、たい。
……わからない。
どうしたい、のか。
[小さく、左右に首を振る。
ただ、その単語に思い出すのは、昨日の会話]
――……狐の?
[頼まれた事に、是とも否とも答えず、問いを返す]
本人から……って。
[ふと、過ぎるのは。
結界樹のところで、二人が話していた、というエリカの言葉]
……アンタ……アンタは、一体、何なんだい!
一体、何をしようとしてんのさ!
[手に集めるのは、紫星の煌めき。
眼差しは凛、と、狐面を睨みつけ]
[ぴくり、とラウルが天を仰ぎ、くるると一声鳴いて羽ばたく]
……あ
待って……
[その白い翼は差し出した手をすり抜け。同色の翼を羽ばたかせ、慌てて後を追い上空へ。ラウルの向こう側、遠くに二つの異なる色が見えれば、そちらへと近づいていく]
[大きな溜息にも動じる事はない。
何も見逃さぬと、鋭い目でその動向を見守る。]
………ああ。ラスが堕天尸だった。
[覆われた左目からこちらを見る右目に視線を移す。
問う声は低い。]
…カレンの事は、誰に?
[知っている者は少ないはずと、警戒の色を浮かべた。]
[動揺する様を見据える眼差しは、観察するようでもあって]
分からなくて辛いなら…他人に委ねると楽になれるよ。
そうして丁度良いことに、君の重荷を背負うという人間が此処にはいるんだ。
…うん、そう。ケイジ。
アイツは優しいから、君を気遣ってくるようにって。
[ゆるくゆるくわらう。投げる言葉は、いっそ穏やかで]
それで、どうする?
……ついているのが、わかる……人。
[ぎ、と。
噛み締められる、唇]
はっ……つまりは、一番タチの悪い手合いってわけかい……!
[吐き捨てるように、言って]
……ようするに、長老の揺らぎにつけ込んだ、と。
『堕天尸』より先に、アンタを結界樹に叩き込むべきかねぇ、これは……。
……どうして?
[男へと返す金糸雀色の眼差しは、
揺らいではいるものの、真っ直ぐに相手に。
変わらぬ表情は何を思うか、他者には捉え切れぬだろう]
そいつは遠慮しよう――
といいたいところだが、お前のようなのを相手に俺が逆らえるわけもないな。
[狐はわらう。わらうだけ。]
タチが悪いとはひどいもんだ。
ただ、俺は退屈がきらいなものでね。
――あァ、それで本題だが。
付き人殿は、 大事なものだから先に壊したんだと。
[ 隠した左目に一瞬、闇が差す。
けれど、それは気付かれない程度であり。]
―――――…。
鷹の目殿は堕天尸は何処にいると?
[ 質問で返す。]
はっ、わかってんじゃないのさっ……。
『堕天尸』になるでなく、でも、その領域に身を置く者。
……アンタみたいなのが、一番、天秤を揺らすって、母上が言ってたんだよ!
だから……っ!
[威勢のいい言葉は、しかし。
ささやかれた言葉に、止まって]
……なにさ、それ……?
……俺が。そうしたいわけじゃ、無いよ。
[呟きと共に、表情は消える]
でも、俺は…そうしないと、生きられないから。
…ごめんね。
だから、頼んでる。
おやおや、まるで俺が諸悪の根源だというようだ。
[くつくつと哂う]
たしかに、餌だといわれたからな。
――否定はしまい。
[しかしアヤメはその言葉を聞くのか。
狐は哂って、呆とする彼女に近づく。]
すべてを壊すために。
――アヤメ嬢にも水を向けてみたんだが。
もう一人にも伝えていないようだったが。さて、一体なぜやら。
そうしないと……?
[どうしてと、
声にはならぬ疑問のことばが発された。
向けた眼差しは、少し逸れて、男の肩の辺りへ。
今はなき翼をみるように]
[白い翼に追いつくと、ラウルはふわりと頭に乗る]
……あれは、ロザりんさんと……
[見慣れた紫紺の四翼。珍しい取り合わせに目を瞬き、二人の間の緊張した雰囲気に、やや距離を置いて宙に停止する]
何……話してるん、だろう?
……腹の探り合いは嫌いだ。ケイジと違ってな。
[苛立ちに紫紺の翼が大きな音を立てる。
左目の闇には気付かず、見える右目を睨む。]
巫女が告げた時、ざわめき立つ人々の中で目に付いた者がいた。
今、残っているのは一握りにも満たない。
半分は長老が封じ、半分は堕天尸に封じられてな。
―――その中に、お前も入っている。ロザリンド。
[言葉はほとんど素通りして、ただ]
……壊すために……。
[ふと過ぎる、昨夜の問答。
どこかが痛むような、嫌な感触。
しかし、それらは近づく気配に対する本能的な反発から、途切れ]
……そう言われて、はいそうですかと引き下がるほど……。
アタシは、素直な女じゃないよっ!
[鋭い、声。
紫星の煌めきが舞う。
目の前の狐を捕えようと]
おや、
[狐は避ける様子もまったくなかった、ともいえるほど、すんなりとその力に囚われる。]
もう少しほうけていてくれたらよかったものを。
[わらう、哂う。]
[紫星の縛を繰り、狐を抑える。
舞い散る光の粒子が周囲を飾り立て]
……悪いねぇ、狐の旦那。
天将の血筋……ってのは、特に『虚』を強く、持つらしいから。
同族嫌悪で、目が覚めちまったようだよ……!
このまま、大人しく、聖殿まで付き合ってもらおうかね……!
[エリカの疑問は当然で。けれど、答えを口にするのは難しすぎた。だから、]
これが、あるからじゃ…ないかな。
[臆する事無く、ふわり、透明に近い紺碧の羽根を広げた。
拒まれなければ、エリカの手を取り、そこに触れさせようと]
俺は、多分…これがある限り、自由にはなれないんだよ。
[ 睨まれれば微笑みで返す。]
おやおや…コワいですね。
[ くすくすと笑う。]
他に疑わしい者がいるなら、長老に進言されれば。
私が入っているのは心外ですが。
[ 左目から手を離す。
その瞳はバイオレット。]
私は貴方を疑っております。
長老が貴方を頼っていることは知っていますので。
同属嫌悪。
おやおや。
そいつは、面白いもので。
[ぞわりと狐の下でやみがうごめく。
虚に場所を教えるように、どろり、どろり。]
まァ、
聖殿ねェ。
[抵抗らしい抵抗はせずに、わらう。]
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