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思わねぇから一発ぶん殴ってやろうって言ってんだよ!
そりゃアタシは頭なんか良くは無い。
だからアタシはアタシなりにやれることをやるのさ!
[背後から狙われているとはまだ気付けて居ない。足元への攻撃をバックステップで躱し、壁を駆け上がる久鷹に対し飛び蹴り。タイミングがズレ、外し着地したところで何かの発射音を聞いた]
げっ!
[見れば高速でこちらへと迫り来る鉄の塊。避けるには体勢が間に合わない。仕方なく、先程鉄球を受け流した時と同じように迫り来る塊をいなそうと腕を掲げる。しかし次の瞬間、鉄の塊──釘の塊だと言うのは近くで見てようやく気付いた──は、瞬時に沸騰し消え失せてしまった]
…な、んだ…?
[呆気に取られていたが、釘の塊が飛んできた方向に見覚えのある姿を見つけると、僅かに口端が持ち上がった]
こりゃ、貸し作っちまったかな。
…それよりも。
[呟き視線を久鷹へと向ける。離れた位置へと立つ相手に、牽制するかのように再び円盤を嗾けた]
[発射された輝きは目に入った。そして釘は電子でまとめる――つまりは電磁石の要領で磁石化してあった。そしてソレを引き寄せる対極に当たるのが、今サキに打ち出した流星錐だ。SとNは引かれあい、サキの胴体に大きな穴を穿つ――筈だった]
な、に?
[それは本当に突然だった。
打ち出された玉が、まるで水に溶かした砂糖のように、一瞬で溶けた。しかも、金属の沸点を一息で到達し、蒸発もしてしまった。
もし、ここでヒビキの姿を見えていれば、舌打ち一つで済んだだろう。だが、不幸な事に、ヒビキは彼の視界に入らなかった。
そのため、思考が一瞬真っ白になり、無防備のままサキの前に着地した――]
[はー、と大きく息を吐き出す。
それは体にたまりこんだ不満を吐き出すかのように。
明らかに、神宮司へ向けた視線は不機嫌そのもの]
…お前等、人のシマで何してやがる…っ。
[シマっていうか、町内会ってだけなんですけどね。
まだ小朱雀を召喚するほどではないにしろ、漆黒の瞳にうっすらと丹朱が滲むが、その場所から今のところ動く気配はない]
[嗾けた円盤を追うようにして久鷹の懐へと潜り込む。無防備な状態なため、難なく滑り込み、踏み込みと同時に勢いを乗せた掌底を鳩尾へ繰り出す]
久鷹から出て行かねぇってなら、力ずくだ。
[す、と瞳を細め、追撃とばかりに反対の手で再び掌底を繰り出す。それは顎を狙う一撃]
[流石に今は響へ反応する余裕は無い]
――しま!
[ほんの一瞬の間に、サキに懐へと潜り込まれた。慌てて流星錐の縄部分をまとめて繰り出された掌底を緩和するための盾とするが……]
ぐは!
[その程度では防げなかった。衝撃はあっさりと盾を抜け、鳩尾から背面まで突き抜ける。
そして、それを合図に心の中で檻に皹が入った。ヒサタカが再度表に出るべく暴れる]
グアアアァァァァァァァァァ!
[内外からの痛みは、最高潮に達しようとしている。数メートル吹き飛んだ場所で、四肢を張りながら、サキを、まるで手負いの獣が復習を企むように、幻影すら相手に与える程の殺気を叩きつけた]
殺す……。生きたまま魂を抜き取る苦痛を与え、数千年の時を持って魂を弄ぼうかと思ったが、今、この場で永遠の闇を味あわせてやる!!!
[本来は久鷹も距離をとり、守りを固め、知略を持って敵を滅するタイプだ。
しかし、今も彼は、それよりも自分に傷をつけられた事が、知略を捨てさせていた]
[思いの他相手が吹き飛んだために二撃目は至らず。それでも相手には相応の痛手を負わせることが出来たか。吹き飛んだ相手を見、次への予備動作をしようとした時]
………っ!
[叫びと、向けられる殺気に一瞬動きが止まった。しかしここで怯んではならない。ぐっと地を踏みしめ、呼吸を整え、意識を集中する]
…やれるもんならやってみな。
アタシは負けない。
マリーのためにも、九尾のためにも。
──……恭也のためにも。
[相手を見据え、動きのタイミングを図る。ゆらり、幸貴に重なるように霊亀の影が揺らめいた]
[相手の本気度合いも肌で感じた。文字通り、空気がビリビリと震えているのがわかる。
だが、その程度の瑣末事など、今の彼には道端に転がっている石と同じくらい無意味だった]
ガアアアァァァァァァ!
[咆哮する。
それは幾多の国を滅ぼしてきた、金毛白面九尾として、大妖として遜色ない巨大さを醸し出す。
そして咆哮に合わせるように、体が変化した。体中から蒸気が吹き上がり、それに合わせて彼の肌がパリパリと電気に包まれるや、電気は巨大なスパークを起こし、白色の巨大な九つの尾を持った狐の姿へと変化した]
こ"の"ま"ま"ほ"ね"も"の"こ"さ"ず"き"え"う"せ"ろ"!
[濁った言葉が、咆哮と重なり、音の重圧となって周囲を襲う。それを見計らうでもなく、全長数メートルの巨体のままサキに突撃をしかけた!]
[目の前で久鷹が変化する。それは噂に聞く大妖の姿そのもので。こちらに迫って来る様子を見つめながら、静かに息を吸い、ぴたりと止めた]
”坤”!!
[練っていた気を、言葉を発すと同時に解放し、己の周囲に岩壁を作り上げる。それはまるで亀の甲羅のような形をし、狐より発されるスパークも、突撃してくる衝撃も全て受け切ろうと待ち構える]
[衝突の感触に、狐の口元が歪んだ。続く気の攻撃すらも、電気で編みこんだ擬似的な狐の体は貫けない。
勝った!
絶対的勝利!
後は高密度の電気がサキを飲み込み、一瞬にして身体全てを黒焦げにし、天界に召し上げられるところを掻っ攫う! それだけでEND。これ以上ない勝利だ。
――さぁ、神宮司幸貴! 今お前を殺してやろう!
狐の四肢に再突撃用に力が篭る。
そしてアスファルトを砕きながら押し切ろうとしたその時!]
――やめろぉぉぉぉ!
貴様!? 鵬谷久鷹!?邪魔をするな!
――煩い! これ以上、好き勝手させない!
――人の体で、友人を傷つけさせるものかぁ!
[亀の甲羅に似た岩壁を破壊した時、狐の大妖の体がビクリと震えた。それは、そう生命が最後までもがき、苦しみながら絶命して行く様に似ていた。
そしてサキの眼前に牙を立てるべき巨大な口をあけ――。
そこで動きが止まった。
電気の狐は、そのまま白色だった色を赤く、そして黒く変貌し、次第に久鷹へと戻っていく。肌にまとわり付いていた電気がバチィと最後に弾けるのを合図に、彼の体は仰向けに倒れこんだ]
[防御用に作り上げた岩壁を、攻撃用に作り変えるために気を打ち込むも、何故かそのまま岩壁を通過し、相手へとぶつかる。その気も狐を貫くには至らなかったか]
くっそ、練り方ミスったかな。
最悪だ。
[未だ力に馴染めて居なかったのだろうか。十分な硬度を作り上げたはずの岩壁が狐によって破壊される。覗く白き毛並み。眼前に見えた牙に覚悟を決めた──それでも頭を護るべく篭手を掲げている──が、唐突に狐の動きが止まった]
……な、んだ……?
[白かった毛並みが赤へ、そして黒へと変わり、見慣れた姿へと変化していく。半ば呆然とそれを眺め、相手が仰向けに倒れ込んだところで、ハッとして岩壁から外へと飛び出た]
久鷹!!
[未だ悪しき心が支配している可能性はあったが、突然の結果に一つの望みを抱き、久鷹の傍へと駆け寄った]
[流石に、白い獣の出現には焦りもしたのか、神宮司をいつでもサポートできるような位置までは移動していたのだが。
その獣が奇怪な現象を見せて収束し、再び現れた久鷹の姿に軽く目を見開く。
金気の薄れゆく様子にそれほど危なくはないと見たのか、近づいていくのは神宮司とは対照的にゆっくりとした歩みで]
…殺ったのか?
[彼女の背から掛けた言葉は、疑問に満ち]
……アタシは何もしちゃいない。
ただ壁を作り上げただけだ。
[背後からの問いに、視線は久鷹へと向けたまま、ぽつりと言葉を漏らす。壁から攻撃へと転ずるつもりだったのだが、それが成される前に異変が起きたのだ]
……あ、そ。
[ちら、と視線を向けたあと仰向けに転がる男を見下ろしてため息。
それからちらりと神宮司へと視線を向け]
…で、どうするんだこいつ。
このまま放置するわけにもいかないだろう。
[そもそも、放置なんて自分の家の近所でされた日には寝覚めも外聞も悪すぎてたまったものじゃないとばかりに返答を待つか]
[駆け寄ってきたサキを目の端に感じつつ久鷹は自嘲気味に笑った]
けっ……。情けねえ……。お前じゃなく、『ヒサタカ』に負けちまうとは……。
[あの瞬間、ヒサタカは檻の破壊に成功した。そして中から悪しき心を殴り飛ばしていた。尤も、その瞬間、九尾の力が流れ込んで来た気がしたがそれは口にださなかった。
とにかく、久鷹はサキの瞳を真っ直ぐに見据えた]
俺はここまでだ。だがアイツは違う。『ヒサタカ』のように俺を拒絶せず、受け入れた。……お前が一瞬ビビった殺気。アイツは平然と受け流した。それくらい強い。だから……。
[澱みなく語る。そして言葉を切るや、突然サキの頬にキスをした]
……地獄にお前が来るのを待ってるぜ。
[そうして、悪しき心は再び倒れた。後に残ったのは全身が慣れない雷によってボロボロになり、意識を失った*ヒサタカだけが残った*]
[『ヒサタカ』に負けた。その言葉に抑えられていた久鷹が悪しき心に作用したと言うのを理解した。真っ直ぐとこちらを見据え、忠告するような言葉を聞き]
…我妻か。
お前より厄介となると…。
[言葉は途切れ、眉根に皺が寄った。殺気に身を竦めかけたことに悔しさが込み上げる。考え込んでいる隙に、久鷹の顔が近付き、頬を掠めた。流石に驚き、掠めた頬に手をあて、少し後に不敵に笑んだ]
…言ってくれる。
そう簡単にやられはしないさ。
[そう言葉を紡ぎ、相手はそれを聞き取れるか否かのタイミングで倒れ込んだ。如何に相手が強大であろうと、今更引くわけには行かない]
連れてくよ。
治療してやらなけりゃならん。
[響の言葉にさも当たり前のように答え。ボロボロになっている久鷹を起こし上げ、背負うように背中へと乗せる。尤も身長差の関係上、足は引きずることになるが]
[どう見ても引きずっているようにしか見えない様子に呆れて]
……お前な。
治療したいのか、怪我させたいのか、どっちなんだよ。
[ため息をひとつついて、見下ろし]
…どこまで運べばいいんだ?
[言外に、運び役を代わるというようなもの。
最もどこに運ぶかが分からないので一応聞いてみる]
…仕方ないだろ、身長は直ぐには増やせねぇよ。
[久鷹ほどの体格を持ち上げる力も今はありません。どこまで、と訊ねられると、一瞬きょとんとしてから]
…あー、学校の屋上。
運んでくれんの?
[至極意外そうな顔だったとか]
…そりゃそうだけど。
女のくせになんつー無茶を。
[相手がきょとんとしている間に背中から久鷹をはがして、米俵よろしく担ぎ上げる。
決して納得ずくという顔ではなかったが]
…乗り掛かった船だ。
つーかここ、うちの近所なんだよ。
ご近所相手に迷惑かけられないし、救急車騒ぎになっても面倒だし。
[いっそ面倒で朱雀を喚んでひとっとびも考えたのだが流石にそれは憚られたらしい。
不思議そうな顔をしている相手を置いて、さっさと歩きだす]
その「女のくせに」ってのが好きじゃないんでね。
[少し不機嫌そうに言ってる間に久鷹を剥がされた。運んでくれると言うのだから、お言葉に甘えるとしよう]
あ、そうなのか。
そりゃ確かに拙いわ。
[誰かの家が近いから気をつける、と言う問題でもないのだが。響の言う事も尤もだったので一つ頷き。さっさと歩いて行く後ろを慌ててついていく]
運んでもらうってことは、何か礼でもしなきゃダメかね。
[先日生徒会室に差し入れを持って来た時のことを思い出し、冗談交じりに問いかけた]
あーはいはい。
というか、好きかとか嫌いかとか言う以前だろ。
男手があるのに運ぼうとするつーのが既に訳が分かんねえ。
お前だってそれなりに消耗してるんだろうが、馬鹿が。
[不機嫌そうな様子にはもはや呆れるのみ。
そのまま相変わらずむすっとした顔して後輩を担いでいたが、神宮司の言葉に少しだけ彼女を見る]
…別に。
むしろ、何か叶うならぜひとも俺の平穏な日常を返してくれ。
[それで充分だとばかりに見下ろすも、どうせ叶わないんだろう、みたいな顔をして。
足はそのまま動いていたけれど]
運ぶのは、アタシの義務みたいなもんだし。
今までもそうだったから。
[今まで運んでいたのは女の子だったから平気だったとも言うが。馬鹿と言われれば、言い返せず少し膨れたか。問い掛けの返答を聞くと]
あー……うん、しばらくは無理かな。
[至極あっさりと否定し、からりと笑った。しばらくして学校の屋上に着くと、運んでくれた礼を言ってから久鷹を受け取り、ふ、と久鷹ごとその姿を*消した*]
…義務、ね。
[ちらりと見下ろす視線は、何か言いかけたような。
けれどそのまま、何も言わず]
…だろ。
だったら、なんもいらね。
[淡々とした口調で断れば屋上を上がる。
ふっつりと、昨日の鳳同様に消えた二人を見てから、小さくため息]
……ったく…どいつもこいつも…。
[短い呻き。
何もかもが面倒で、何もかもが厄介で、やる気は欠片もおきない。
疲れたようにくしゃりと前髪をかきあげれば、風は少しだけ*涼しかった*]
─瑞雲神社─
[空間を渡り、飛び込んだ先。
最初に聞こえたのは、短い掠れ声]
…………。
[ほんの一瞬、表情を過ぎるのは、苛立ちめいたもの]
……生きてりゃ、十分だ。
[低い呟きが届く前に、啓子の意識は途切れていたようだけれど。
ともあれ、このままここには置いておけず]
陣に、連れてくか……。
[これで何往復目だよ、と呟きながら、気絶した身体を抱き上げる。
抱え方は負担を考えて姫抱きになのはまあ、仕方ないわけで。
一瞬、癒えきらない傷が痛んだのは押さえ込み、*『隔離の陣』へと*]
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