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そう。
[呟く少女に、一つ、頷く。
彼女がそれをどう受け止めているかなど気づく事はないままに]
安定ばかりでは、世界は保てないが……。
だが、今ここに在る不安定さは、不自然に織り成されたもの。
正さなくては。
[言いつつ、剣戟に目を向ける。
少女の視線が向く先には、気づかぬままに]
[火と氷――水の欠けた二つの力が、
陽と影――二つ欠けて一つしか残らない闇へとぶつかる]
乗っ取られたのも…不安定になっていたから、か…?
[ベアトリーチェの呟きは聞こえても、その想いには気付かずに]
不安定?
[けれども、ベアトリーチェにはわかりません。ある意味では対たる時空が居るためか、元もとが不安定な存在のためか、それもわかりはしませんでした。]
わからないよ。
[その応えはアマンダに向けたもののように聞えたでしょうか。]
チッ!
[大地に手をつき、鉱物の盾でナターリエ、否、魔剣が切り払った氷の刃の破片を防ぐ。氷の精霊の力の篭ったそれは、鉱物の盾と相殺し、煌きながら砕け散った]
危ないな。もう少し下がって。
[ベアトリーチェを肩越しに振り返りながら見れば、その視線はオトフリートの胸を見ていた。
けれど、アマンダはそこに何があるのか知らないまま、下がるように促すだけ]
くっ
[強引に剣を引き戻すと、剣の腹で切り上げを受け止める
その勢いを利用してひらりと後方に飛んで着地]
……いいね。いいね、いいねぇ。こいつは楽しめそうだ
さあ、もっと俺を楽しませろ
言っておくが、俺は最初から最後までクライマックスだぜ
手を抜いて楽しませないうちに死ぬんじゃねぇぞ
[そう言ってぶおんと剣を一振り]
[アマンダの言葉に、ふとそちらを見て]
恐らくは。
交わされていた契約がどんなものかはわからないが、ブリジットがいなくなった事で、俺たちの間の均衡が崩れているからな……揺らぎが生じたのかもしれん。
[それから、視線は再びベアトリーチェへ]
落ち着かない感じ……と言い換えてもいいかな。
ぐらついたり、震えたり、ね。
[黒き剣に灼熱の刃は受け止められ、澄んだ音と共に火花が散る。
お互い飛び退って開く間合い。]
むしろ、最初から最後までエピローグにしてやるぜっ!!
[燃え盛る刃を真っ直ぐに向け。
だが、その刀身は既に小さく欠けていた。]
……厄介な。
これだから、黒き剣は面倒なんだと……。
[響く声に、やれやれ、と息を吐き]
エターナル・ロンド、守護方陣!
[鎖に、護りの型を取るように命じる。
戦えぬものに影響が及んだ際に、素早く対処可能な防御の形を]
……そこに?
[唐突な言葉に、戸惑いつつ、視線を辿り。
昨夜、取りあえずは、とポケットに放り込んでおいた指輪の事を思い出す]
君は……これが何か、知って?
ん、そうだね、わからないね…
どうしてなのかも…鍵の書が、今どこにあるのかも…
[アマンダはベアトリーチェがわからないのは、無理ないと思う。
子どもだから、そして、口にしてるアマンダ自身も推論でしかなく、当事者ではないはずの子どもに答えられるはずがない、と。
だから、気付かない、気付けない。
子どもだって、14の内の一つであるのに。
天聖という、稀有な力の持ち主であるのに]
[辺りの喧騒もまるで気にならないふうに、ベアトリーチェは一点を見つめていました。けれども訊ねられれば、わずかに首をかたむけます。知らない筈もありませんでしたが、素直に答えてはいけないのはよくわかっていました。]
……それは、元は天聖界にあったものだよ。
[ゆっくりと言葉を選んで、紡ぎます。
アマンダの声が耳に、右手で袖の上からそっと左の手首の辺りを押えました。]
ひゃはっ、上等!!
じゃあ、俺を楽しませてくれや。そして美味しく食べさせてくれよな!
[そう言うと、目にも止まらぬ速さでダーヴィッドに袈裟斬りに斬りかかる]
[オトフリートの説明には、視線は闘いの方に向けながらも一つ頷く。
永き時を見てきた竜の言葉は、静かな重みが詰まっていたから]
そう…ブリジが、
いないから…
ハインも、エーリヒも、アーベルも、イレーネも…皆いない…
神父は…迷宮から出る術を知っているのかな…
だったら、内側から…みんな出てこれないのかな…
[容易く解く事の出来ぬ迷宮。
その内で生きてはいるだろうとの影の王の説明の後からは、あまり口には出していなかったけれど、心配して居ない訳ではなく。
鍵の書を探すしかないとの言葉を忘れ、つい、そんな弱気な呟きが零れた]
[ほんの一瞬だけ、アマンダへと眼が向けられます。]
大丈夫だよ。
きっと、大丈夫。
[なにをもって大丈夫というのか、それもやはり、定かではないのですけれど。]
[左手首を押さえる姿に、僅かに首を傾げるものの。
返ってきた答えには、さすがに驚きは隠せずに]
天聖界……に?
何故、そんな物が、人の世界に……。
[天聖界。
ある意味では、人の世界に最も近く、そして遠い場所。
そこに存在していたものが、何故、ここにあるのか。
それは、ごく自然な疑問と言えた]
…くっ!!
[早い!
咄嗟に受け流すべく剣を凪ぐ。
高い金属音。 焔を纏っているとはいえ、素体はただの剣。
刃は耐えられず砕け散り、肩へと迫るその黒い刃。
だが、左手は既に、腰の拳銃を抜いている。
鋼の筒へと込められてあるのは、幾千度もの熱い息吹。]
[アマンダの呟きに、一つ息を吐いて]
……結界は、もし破られたなら、その様相を変える。
あのおっさんがどんな方法で入ったかはわからんが、少なくとも、同じ方法では開けられない。
……書を返還しようとすれば、迷宮自体が口をあけて……まあ、こう言うとなんなんだが。
自分にとって不要な存在は、弾き出すだろうが……な。
[肩へと刃は深く喰いこみ、肉迫した至近距離から、
引き金によって解き放たれるのは、
鉛の玉ではなく、火竜の咆哮。
がら空きの腹を狙って火球は飛び出す!]
……それは、ベアトリーチェは知らない。
ただ、それを追って来たのだと、云っていた。
そのために、永き時を巡って来たのだって。
[主語のない、誰かから聞いたような言葉。]
だから、返して欲しい。
[文字通り火花散る、激しい剣戟。
オトフリートの鎖がとった護りの型に、少し安堵して後ろを見やる]
…天聖界? ベアは…よく知ってるんだね。
[精霊にとってはごく当たり前の【界】の話。
ただ、何を指すかはわからずに不思議そうに問う]
【これ】って、なに?
[呟きはオトフリートが持っているらしい、ベアトリーチェの視線の先にあるらしいものに対して。
けれど、アマンダの視線は偶然、抑えている左の手首の辺りを見ているように思えたかもしれない]
[眼だけを向けたベアトリーチェにアマンダの見ている先をきちんと知ることは出来なくて、弾かれたように顔を挙げました。]
……なんでも、ないよ?
[それは、不自然に見えてしまったことでしょう。]
[アマンダは、一瞬だけ向けられたベアトリーチェの視線と言葉に、微笑んだ]
……うん。そうだね、信じてあげないと。
みんなに、怒られちゃうよね。
[元気付けてくれてるのだろうと、茶色の目を細めて]
…………。
[どこか、遠くから聞こえてくるような言葉に、左の手をポケットに入れて、指輪を取り出す]
天聖界にあるべきもの。
それを、あるべき場所に返そうとする者がいるなら、それは均衡を、安定を保つために必須だけれど。
でも。
何故、君がそれを?
やはり、鍵の書…なんだね
[オトフリートが息を吐いた様子に、やはり甘い考えなのかとアマンダは肩を落とす。
ベアトリーチェの不自然な様子に何か言おうとして――視界の端で、鈍い音を立て飛び散った赤が見えた]
…ダーヴ!
[視線は一瞬、ベアトリーチェから逸れる]
!?
[ダーヴィッドの肩を切り裂く感触に目を細めるが、第6感が危機を告げる
腹腔に放たれる火球をかわそうとするが、さすがの吸血鬼の反応速度でも避け切ることは出来ず、腹腔部の一部を持っていかれる
一旦跳び退き、喀血する。苦しそうに手を当て、修繕を試みているがその顔には狂気の笑み]
げはっ。……はは、いいね楽しかったぜ
だが、もうお終いだ。美味しく食ってやるから安心しな!!
[そう言って止めの一撃を加えようと飛び掛る。その刀身がダーヴィッドの体を貫こうとした瞬間]
!? な、てめっ何をしやがる。邪魔……すんじゃねぇ!!
[ぴたりと止まった刃先。困惑と苛立ちを浮かべる歪んだ顔]
[苦しそうに唸っていたが、右眼の金色が薄まったかと思うと]
私を……殺…して
んなっ、てめっ。フザケタこと……言うんじゃ…ねぇ!!
[肩に埋められた刃。
痛み以上に、強烈な脱力感。
思わず膝を付き、目を上げるが動けず。
その剣が胸を、貫いたと…思った。]
…な?
[数ミリ手前で止まる切っ先。]
だから、返して。
それがないと――……
[声には少しばかり、焦ったような響きがありました。けれどもその続きは、遠くから聞える鐘の音か、近附く力の奔流に消えてしまうでしょうか。]
[遺跡の方から、力が高まるのを感じる。
胸の紋章と、左手にはめた指輪が輝きだす。
うねるその封護結界の力へ、干渉できるだろうか!?]
[苗床はただ見ているしかできず
重くあつい息を吐く]
……ちからを
[戻さねばなにも出来ない。
その視線を森へ向けると、瓶を握ったまそちらへゆこうとした]
[オトフリートの声に、逸れた視線は再びベアトリーチェへと戻る。
そう、勝負はあちらに任せることが出来るけれど、小さな少女は…]
…ああ、どうしたの? ベア。
なにが…?
[自分の言葉を思い出し、首を傾げつつも。
手でも繋いで力づけようと、重ねられた手へと指を伸ばして]
―墓地―
[今日もやってきた。うねりは力のあるものを飲み込もうと虎視眈々と狙っている]
今までの僕だったら、何もできないと嘆いていたかもしれないけど。
僕には「約束」があるから。早くこの喜劇を終わらせる!
いけ!風よ!
[...がさっとうねりの方向に腕を翳すと、風がうねりに向かって襲い掛かった]
[これが初めて「ユリアン自身の願い」で起こした風とは本人も気付いてなかった]
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