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[隠すブリジット]
[苦笑が一つ]
俺よりも手当上手い人、いるだろうし。
[悪いけどそっちに頼んで]
[ジーンズのポケットに両手を突っ込んで]
[左にはカメラをかけたまま]
ん?そうだな───望郷の歌、かな。
[呟いて]
[もういちど]
[歌う]
[部屋からかすかに聞こえてきた、声。ヘルムートの>>246もの]
……ヘルムートさ、ん。
しんじゃ、駄目よ。だから、必ず屋上に、きて。
[ダーヴィッドも、とまで言えずに。
それでも願う。ともにいければいいのに、と]
───O for the wings of a dove,(鳩のように飛べたなら)
[微かなテノールは再び]
Far away would I rove.(遙か彼方へ飛んでゆけるのに)
[空気を揺らして歌う]
In the wilderness build me a nest,(荒野に巣を作り)
[瞳を伏せて]
And remain there for ever at rest(永久に休らうだろうに)───
[残響は風に融ける]
――… そうね。そうさせてもらうわ。
[治療が上手な人。
たとえば、この手に布を巻いてくれた人。
たとえば、両の手に包帯を巻いてくれたひと。
伏す眼。
シャッター音は、しない。]
……望郷。
[とおいふるさと。
ここから遥か遠く。
かえりたい。かえるの。なおして、かえって。
そうして、もう、でも、いみなど、な――
歌が届く方向を見遣るように、視線は空へ]
[だいすき。と声に出さずに唇を動かす。]
安易かもしれないけど、あたしはあなたと一緒なら、って。あたしの話じゃなかった。
[腕を組んだまま、先へ進もうとした時にベアトリーチェの問いに返す声は重なって。
歩き出す。ベアトリーチェとノーラがついてくるなら一緒に。そうでないなら急ぐよう促すノーラにそちらもと言い。
屋上への扉の付近、床に横たわってヘルムートの上着をかけられたユリアンと再会する。]
ユリアン、楽しかったよ、からかえて。いじめられてると思っただろうけど。
[ライヒアルトがユリアンに言葉をかけ終わるのを待ち、屋上へ。]
[そして、手にかけられてた両手は離して……]
そういえば、屋上の空はとても綺麗でした。
行く時は、よくご覧ください。
鳥が飛んでいるかもしれません。
[翼があれば]
[――望んでいたのは、エーリッヒだったか。
鳥籠の中の幸せを見つけられなかったと
イカロスのように、
空。何処へ。遠く。]
[空を見る。眼を細める。
記憶の彼方。
区切られた窓
縁取るアラベスク
あれは――鳥籠。私の、鳥籠。]
[ユリアンの名を聞いて、杖で足元を探った。当たる、感触に腰を落として手を伸ばす]
ユリアンさん……。ノーラさんを護ってくれて、ありがとう。ごめんね。
[触れて、離す。もう冷たくなっていた体。
かつりと杖で階段を辿り、上へ上へと上がってく]
[ゆっくりゆっくり]
[目を開ける]
[空を白い鳥が飛んでいた]
[強い風の中]
[風が───]
───鳥になったら、風って見えると思う?
[微かに尋ねる]
[誰にという明確な意思はない]
[唇の動きに気づいたなら、一つ、瞬いて。
それから、微か、笑む]
……一緒なら、むしろ生きる方を望むぞ。
[呆れたような言葉。
促す声には頷き、歩いてゆく。
階段近く、倒れたユリアンの元へとたどり着いたなら]
……じゃあな。
[やはり、短くそれだけ告げて、屋上へと向かう。
風と、それから、歌声が届いた]
――…… わからないわ。
でも、……
鳥は、風に乗るのでしょう。
[白い鳥、が見えた。
尋ねる声に答えただけ。
誰かのそれと重なったかもしれない]
見えているのかも、しれなくてよ。
[屋上へ続く階段の前、腕を壊してしまった石像。ユリアンの姿。
その傍にも、おそらく城の到る所に咲く白い花。]
――…
[階段を上る途中にもそれはあるだろうか]
?
[ ――――― !]
[一瞬、下の方から嫌な音と城全体が揺れるのを感じた。]
[笑ったまま、至近距離で顔を見合わせる。
今はダーヴィッドを見詰めていて振り返る事のない扉の前を、幾人かが通り抜けて行く気配を感じる。慌ただしい音。その中に、ノーラと、ベアトリーチェの声が混じっている気がした。]
何でも。
無謀なくらいで、良いんだ。
ダーヴィッド。
[ダーヴィッドの首筋をなぞる指先が感じるのは、随分とゆっくりに感じられる動脈の音。首輪にかける手が震えた。サファイアブルーの両眼は強く見開かれたまま。]
屋上の空なら、知って──
鳥?
確かに空に鳥は居るかもしれないが。
そうだね。
[目を細める]
きっと鳥には風が見えるんだ。
[うしろから現れる姿]
[ちらほらと姿が見えた]
[ノーラ]
[ベアトリーチェ]
[金の髪の女]
[偏屈な男]
でも───リーチェみたいに素直な子なら、風が見えるかな。
[呟く]
[開いた扉から、風が吹き込んでくる。それを感じると同時、地面が揺れる]
あぶ、ない。ノーラさん、身を屈めて。ゆっくり上るの。
[杖で身体を支えて、階段から転げ落ちないように。一歩一歩、確かめて屋上を目指す]
[嗚呼。時間が、ない。
やってくる人たち。
ヘルムートの、ダーヴィッドの 姿が ない]
―― いそいで
[その場にいる者たちに
そして姿の見えないものたちに]
……急ぐのよ
あたしもライヒアルト、あなたと一緒に生きたい。
[初めて正確に名前を呼んで言った。
屋上につけばライヒアルトの腕に少し体重を預けて休んだ。]
白いいばらの花があって、白い鳥が飛んでる。
[解説するように言った。]
……ヘリに乗ろう。生きる為に。
[ライヒアルトを促し、ヘリに乗り込む為に歩き出した。]
…、痛っ
[階段途中でどこか打った。
じんと痛みが身体に広がる。
けれど揺れを感じた、それはつまり時間がないという事。]
…そうね。
[ゆっくり、そう言われれば頷いて]
[転びそうになったノーラの身体を支える。しっかりと。
風に乗って聞こえていた歌は止んでいて]
アーベルさんの声。もう屋上にいたのね。
[最後の段を後ろ足に、屋上へ。ノーラの手はしっかりと握って]
>>264
[そう、もう身体はとても冷たくて…
めぐらなくなる。生きていくための血液が……]
……議員、お気をつけて……
貴方を見るといったのに、もう、実は、見えません。
[空色の眸がどんどん消えて……]
ベアトリーチェ。
ヘリコプターに乗ったら…
[思い出す。薬を見つけた時に、中にもパソコンがあった事。]
ダーヴィッドから貰ったカードを
パソコン…四角い箱があるから
そこにカードを差し込むの。
そうするとヘリコプターは動くわ。
[よたよたとながら少女に伝える。
空が――星空が、近い。]
私はとても弱いのかもしれない。
[ダーヴィッドはいらえを返しただろうか。
そこから、最後の瞬間まで、
ダーヴィッドを見詰めたまま、瞬きもしない。
今まで数値を何度も確かめた、
ダーヴィッドの首輪を握り、
──力を籠める。
丈夫なそれに悲鳴のような裂音が走り、
首輪を通じて指先と掌に感じる、抵抗が無くなるまで。強く。
引き千切って、
失われ行く、生命を──奪った。]
───いたよ。待ってた。
[なんてね]
[冗談ぽく]
[ベアトリーチェに答える]
そういえば───ダーヴィッドと議員は?
[二人の姿がない]
[人を車椅子に乗せる気だったあの男は]
[焼野原の写真を撮ると言っていた男は]
[どこにいるのだろう]
[伝わる振動が何を意味するのかは、すぐに覚れた。
ゼルギウスからの返答。
城の崩壊の兆し]
……時間がない、な。
[呟いた所に、耳に届いた声。
初めて名を呼ばれたな、などと思いつつ]
……ああ。
一緒に行こう、ナターリエ。
[小さな声で名を紡ぎ。
振動でよろめく様子に、迷わず抱き上げた]
……上手く、見えん。
先導してくれ。
[まだ、見えてはいるけれど。
視界には、霞みがかかっていた]
[ヘリの扉を開く。
ノーラとベアトリーチェには手を貸そうとして。
アーベルにも手を伸ばすだろう。]
――… はやく!
[いない。 足りない。
扉の方を見る。嗚呼。]
パソコン? わかるといいけど。やってみる。でも、ノーラさんも行くのよ。
[ノーラの手を引いて、足に負担の掛からぬよう]
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