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ロランは、 レイス を投票先に選びました。
…喧嘩なんてしてたの?
[心底不思議そうに、レイスとマクシームを見る]
だって家に来た時は、ずっと嬉しそうだったわよ。
私が気にしてるのは……
[もっと声を落として、レイスにだけ聞こえるように]
いきなり泣き出しちゃって。
不安なんだって言ってたわ。
――旅人さんのこととか、あるし。
多分、疲れてるんだと思うの。
[礼には、ううん、と首を横に振って]
[うっとりと、どこか熱に浮かされたように紅い月を見上げる。
昨夜の酒精の酔いのよう、それよりも尚甘美な血の誘い。
こくりと喉が鳴った。
先まで己を押し留めようとしていた理性の糸は、最早ない]
…ロラン、
[同じく月に刺激されただろう同胞を呼ぶ。
喉は飢えていたけれど、それは大きな期待をも伴っていた]
月が昇ったね───…
[見る者のいない唇が笑みを刻む]
ぁ、ぁ、あ、ア、ア、ア"、ア"……ッ
[聞こえた同胞の声に、堪えていた声が零れた。
作業台にあがって身を捩り、喉の奥から漏れる声。
人の言葉というより、それは最早獣の吼え声に近く。
それでも何処か残るロラン自身は、自分の声に少し驚いて
冷静に見下ろす自分もまた、感じていた]
…タベタ、い
月が…昇ったかラ、
…赤い月が、呼んでいる…――カラ
[熱に浮かされたような声。
壊れた蓄音器のような、冷静に何か教える時のような、
入り混じる其れが 囁きに染みるよう零れる]
───ふ。ふふふ…っ
[喉奥から笑いがこみ上げて来る。
同胞の吼え声に刺激される、灰銀の瞳も朱に染まっている。
彼のように咆哮することはなく、
けれど浮かぶ表情は、もはや常の面影を失ったもの]
食べようよ、行こう?
あぁ…ほら。あの子達も呼んでいる。
狼が、来るよ──…
[遠く、森から狼たちの声が聞える。
人には未だ聞えない、微かな遠吠え。
その音を捉える耳もまた、既に常人のものではない]
[にんまりと笑む気配は、きっと何時ものロランとは対照的。
荒い息を、定期的に着く気配は簡単に届くことだろう。
ひどく機嫌良さげに作業台に上り、仰向けに横になってわらう]
……、来イ…
俺の足に、なレ。
[くすくすと喉奥から、愉しげに喉を鳴らし。
遠く聞こえる声に、耳を傾けるところりと窓へと視線を向けて。
闇にぽかりと浮かぶ、赤いあかい月をみあげた]
[朱い月を烏色の双眸へと落とすと、奥までじわりと紅に染まる。
上から濡れた睫毛が影を挿し、半分伏せた気だるげ。
赤い舌が、自身の弧浮かべた口唇を、円を描くように舐めた。
すいと震える背を逸らし、喉奥を震わせる。
奥底で知って居る、何処の筋肉を使えば良いのか。
人ならざる意識が教えてくれる。
小さく窄めた口唇から細く、息と共に聞こえぬ音が迸る。
森の奥で、狼達がぴくりと頭を擡げる。
暫くそのまま動きを止めて、やがて疾風となり駆けだした。
木々の間をすり抜け、風の如くの速さで集落を目指すのを感じる]
[作業場の窓は換気の為もありとても大きい。
寝そべったまま細く吼える声が、獣に届くを知る。
ピクリと、足の先が動いた気が、した。
窓の外、まだ少し遠くに、獣の荒い息が多数あるのを聞く。
不意に、開いた窓から黒銀の毛並みもつ一頭が、
音もなくしなやかな跳躍で踊りこんだ。
イヴァンの畑の隅に行く時にも背に乗せてくれた子だ。
細い腕をあげて圧し掛かるように跨るその狼の首へ回し、
黒銀の長い毛並みに顔を埋めると、緑の匂いがした]
……、何処にいるのかナ…
[そっと窓から広場を見ると、人影は複数。
複数相手に暴れる気は今は無いから、そっと息を吐いた]
[同胞の鳴らす喉奥の笛の音。
人の耳に届かぬ音を、この耳も確かに捉える。
それに心地良さげに、笑みを浮かべた。
朱に染まった瞳には既に躊躇いの色はない。
沸きあがる飢えさえも甘美に喉を鳴らし、ちらりと舌で唇を舐めた]
…ねえ、そこから見えるかい?
[ロランの家からは広場が見える。
そう知るから未だ動かず、寝室の窓近くに立った。
カーテンを引かぬ窓辺には、紅い月明かりが降り注いでる。
庭が見えた。片隅には、かの白い花の蕾が揺れている]
……多分、レイスにも心配かけたくないんだとも思うし、
私が言っていたなんて、言わないでね。
[少し心配そうにして]
喧嘩したんなら、なおさら、参ってるかもしれないわね…。
[でももう、後は任せる、とお願いして]
ミハイル、気をつけてね。
マクシームは……うん、二人でやるといいと思うのよ。
何もないとは思うけど…気をつけて。
[希望を含んだ言葉。
マクシームにも、最後の言葉は向けた。
そうして手を振って、お皿を回収して、家に戻ることに**]
…見えル。
でも、ミハイルとレイスが居る。
[イライダの姿は少し影になっていて、いるかいないか判らない。
黒銀の毛並みに手を滑らせながらじっと外を見詰める]
弱っタな。
――あまり、時間が無いのに。
[それは人ならざる力を使える時間。
赤い月満ちた今、全身に満ちるそれは、
朝にはきっともう、理性に抑えられてしまうのだろうから。
きゅ、と、狼の首元の毛に顎を埋めて唸り]
…ミハイルは、銃を持ってル…
[少し、睨んだ]
…───ミハイルが銃を?
面倒くさいな……、
…兄貴はまだ帰ってきて、いないから。
このまま固まられると今夜マクシームは狙えない。
[冷静に事実を整理する態で囁いた。
時間がない。その言葉に、頭上の月を振り仰ぐ。
この月が没してしまっては、この力は使えない]
…全部を相手には出来ない……
[声に苛立ちが滲んだ]
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