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[旅人は子どもの答えを聞きました。
うなずくようにまたたく蛍の光を見ました。]
そうか。
[それから、ぼうしを引き下げます。
ぼうしが急に動いたので、小鳥がころりと転げました。]
ならば。
やはり、ドロテア殿か。
[どうして子どもの姿をしているのか、旅人には分かりませんけれど、なんだかため息をつくみたいに、旅人は言いました。]
[夜が明けても尻尾の主は、御隠居の家から出てきません。
朝日に目を細めつつ、木こりはのそりと動きます。
固まった体が、ごきりぼきりと鳴りました。]
……爺さんか。
やっぱ、他所者はいらねえ。
[不寝番した木こりは言って、森外れの小屋に帰ります。
老婆が言うには日中は、狼は人に化けてるのです。
太陽の出てる内に寝て、それから動くつもりでした。]
あ。
[ころりと転げた小鳥に、子どもはびっくりしたような声を上げました。]
……どうして、知ってるの?
[それから、名前を呼ばれてきょとん、とします。
螢火はまた、頷くみたいにきらきらきら。]
[小鳥は地面で羽づくろいをした後、今度は旅人の肩に止まりました。]
覚えていないのか。
[旅人は屈み込んで、子どもとおなじ目線になります。]
生きてる時に、教えてもらったんだ。
木こり ドミニクは、隠居 ベリエス を心の中で指差しました。
[小鳥が旅人の肩に止まる様子に、子どもはほっとしました。
けれど、忘れた事、それそのものを忘れている子どもは、旅人の言葉に不思議そうに瞬きます。]
いきてる時?
いまは、いきていないの?
おばあさまとおんなじなの?
隠居 ベリエスは、木こり ドミニク を力(襲う)の対象に決めました。
そう。
おんなじだ。
[旅人はひとつうなずきます。
黒い目で、子どもの顔を見つめています。]
多分、ドロテア殿も。
[それから続いたのは、さっきよりもいくらか小さい声でした。]
隠居 ベリエスは、おまかせ を力(襲う)の対象に決めました。
おんなじ。
じゃあ、どうして……。
[どうして、お話しできるの、と。
問いかけようとした言葉は、途切れました。]
……わたし、も?
[ちいさな声で言われた言葉。
おおきな瞳がきょとり、と瞬きます。
ふるふる。
それから、子どもは首を左右に振りました。
痛いことなんてないはずなのに、頭が痛くなったみたいでした。
螢火はふわふわ、ふわふわ。
心配そうに飛び回ります。]
/*
と、ところで、
他のお2人引っ込ませてたり、しません か…!
隠れてるなら遠慮なく出てくるといいんだよ![ここで言ってもしかたない]
[ふんわりふわふわ、羊雲。羊飼いは空の上。いろんなことをふわふわと漂いながら見ていました]
ああ、たいへんだ。ベリエスさんも人狼だ!
[ごっくんとドロテアが飲み込まれた時には、それも思い出したのですが、やはり誰にも聞こえぬ声は、なんだかうつろに響きました]
/*
昨日は22時以降に66発言。
それ以前よりも多いから、大丈夫だろうとは思いますが。
……うーん、何かあったんでなければいいけど。
そうだ。
アルベリヒ殿も。
[旅人はひとつうなずいて、羊雲のような羊飼いが浮かぶのを見上げました。]
それからきっと、牧師殿もな。
[今は辺りを見回しても、メルセデスの姿は見つけられませんでしたけれど。]
[旅人につられるように、子どもは上を見ます。]
あるべりひ。
[ふわふわ浮かぶ羊飼い。その名前はよく知っている気がしました。]
……ぼくし……さま?
[ちいさく呟いたら、急にどこかがずきり、としました。
きゅ、ときつく眉が寄ります。]
[村の様子は、ほんの4日前とはまったく違うものでした。
誰も彼もが、相手を人狼ではないかと疑っているのです。
その中でただ一匹本物の狼は、満足そうに頷きます]
そうじゃ、そうじゃ。誰も信用してはならぬのじゃ。
人を喰うやつ、人を裁くやつ。
果たしてどちらの罪が重い?
[狼を退治したら、物語はめでたしめでたしなのでしょうか?
そうでない事を、おじいさんのふりをした狼は知っています]
狼は本当にいなくなったのか?
狼はもう二度と来ないのか?
[ひひひ、ひひひ。狼はひっそりと笑います。それはそれは楽しそうに]
/*
延長、ないんだよねぇ。
意図的襲撃ミスすれば決着を後回しにする事は出来るけど、誰かは処刑されてしまう訳だし。
……いや、実はとっくにわしに票入ってたり。
ベリエス殿が、人狼だって。
[見上げた時にアルベリヒの声が聞こえて、旅人は小さくつぶやきました。
首を振って、もう一度子どもを見ます。]
そうだ。
アナ殿が、牧師殿を。
[子どもが表情を変えるのをじっと見つめながら、旅人は途中でことばを止めます。]
[途中で止まった言葉は、どれだけ聞こえていたのでしょうか。
なんだか物凄くいたくて、子どもはふるふる、ふるふると首を振ります。
螢火は心配そうに周りをくるくる、くるくる。]
……くろいの、きらい。
だから、からす、きらい。
[やがて、こぼれたのはちいさな声。]
黒いお花は……かなしいから。
だから、きらい……なの、に。
なのに、さかせた、の。
みたく、なかったのに。
−−宿−−
[弔いを済ませたゼルマはベリエスがまだ居るのではないかと用心深く裏口からそっと宿屋に入ります。
宿にベリエスが居ないことを確かめると窓を閉め、扉に閂をおろします。]
昨夜はあの人と一緒だったのに、よく食われなかったものだわ。
[くるくる回る蛍とおなじように、小鳥もぱたぱた、子どもの肩に止まって、心配そうにちぃと鳴くのでした。]
かなしい。
どうして、かなしいんだ。
[子どものことばを繰り返して、旅人はたずねます。
真っ黒になった花のことは、小鳥だった時に見ています。]
隠居 ベリエスは、木こり ドミニク を力(襲う)の対象に決めました。
――宿の外――
[おじいさんは、おばあさんの顔を見にいく事に決めました。
扉に閂が掛かっているのに気付くと、どんどんと扉を叩きます]
おうい、ゼルマや。開けておくれ。
またお前さんの飯を食べに来たんじゃあ。
[ご飯なんて、本当はいらないのですけれど]
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