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[アレクセイから掛けられた言葉。
いつもの、唇をこつこつと叩く癖が思わず出る]
――…そうか。
[誰に止められても、止められなくても、墓守はアナスタシアの部屋へと入り込む。
幸か不幸か、人の死体は見慣れている。
アナスタシアが事切れているのは、誰の目にも明らかで]
あの旅人と同じだな。
人の仕業ではない。
[動揺するでもなく、たった一言。
人狼に殺されたという旅人の死体を、彼女は墓に預かる時に見ている。
それゆえの一言だった]
/*
どうしようかな。食べる?食べちゃった方がよさそうだな。
人狼として食事に感謝の所まで母親に聞いていれば別なのだが。
[部屋に入っていくのを、彼が止める事はなかった。
どういう状況か知っての上ならば、覚悟はあるのだろう]
――人狼、か。
[アリョールの言葉に、静かに言葉を返す]
この屋敷に、居るんだな。
ああ、確定だな。
[アレクセイへと向き直り、頷きを返す]
二人を任せて構わないか。
私は、他の人間に事情を伝えてくる。
それが終われば、墓守としての仕事だな。
[各部屋をノックし、アナスタシアが人狼に殺された旨を伝えていこうと踵を返す]
わかった。
[二人を、というのには頷く。
立ち尽くすタチアナ、それからうまく立てずにいるフィグネリア。
そんな姿に手を伸ばして、肩をたたく]
行くぞ。
広間に連れて行く。
アリョール、手が必要なら呼んでくれ。
[彼女へとそう言葉を投げて、二人を促して、必要なら手を貸して支え、広間へと向かう。
そうして椅子に座らせ、落ち着かせる為にと、台所に茶を淹れに行く]
あ、……アレクセイ、さん。中で、女性の方が――。
[増えた人影に気付いて顔をあげた。動けるかという問いに頷いて、今度はゆっくり立ち上がった]
アリョールさん……。……?
[続いてやってきたアリョールが部屋の中に入っていくのに目を瞬かせる]
あの、彼女は?
お医者様、とか?
[女性の医者などあまり聞いたことがなかったが、この状況を見ても変わらない様子にそんな疑問を零す。
血の臭いに酔いそうで、口許を押さえ部屋の前から離れることにした]
[アリョールが各部屋をノックして回る様子を見ながら、アレクセイに促されて広間へと向かう。
一階に来れば血臭は弱まった気がしていた。
広間に辿り着くと椅子に座って気を落ち着ける]
……あの方が、アナスタシアさん……。でも、誰が。
旅人と同じって、この中にいるって言うんですか。
でも、つまり、誰かを処刑するって事、ですよね。
[ポケットに手を当てたけれど、寝る時にナイフは出したままでそこには入っていなかった]
[未だ部屋から出ていない人間へ、アナスタシアが人狼に殺された旨を伝えて歩く。
各々の反応はどのようなものだったろうか。
伝え終われば、今度はアナスタシアを、地下へと運ぼうとする。
アレクセイの言葉は覚えていたが、アナスタシアの身体は割合軽く、アリョール一人でもなんとかなる様だった。
もしその際に他者に声を掛けられれば、助けを借りもしただろう**]
アリョールは、墓守だ。
[フィグネリアの問いに対するのは、その一言。
広間に連れていき、座らせた彼女の言葉には、そうだなと一つ頷きを]
あのナイフで誰かを――人狼を殺さなければならない。
とは言っても、誰がそうなのか。
茶を淹れてくる。
[一人暮らしなのだ、それくらいは出来ると。
フィグネリアとタチアナを置いて、台所に向かう。
暫くすれば温かい紅茶を入れて戻ってくることだろう**]
[現れたヴィクトールを、憐れむ様な眼差しで"彼"は見遣った]
おいで。
[聲での招き。
二人、アナスタシアの部屋の中へと入り込む。
アナスタシアを選んだことに、さしたる意味は無い。
ただ、ヴィクトールを目覚めさせる為に、旅人では効果が薄く、親しすぎればショックが強いだろうというその程度]
[狼として、爪牙を振るえば人が事切れるまでの間は、刹那にも近い。
物音一つさせないままに、命を奪い、改めて"彼"がヴィクトールに向き合うのはそれから]
[憐れむ様に。労わる様に。
ヴィクトールへ向けるのは、アナスタシアの肉と血を掬った2本の指]
決めるのは、君だ。
[鋭さと、熱を帯びた声を真っ直ぐに*発して*]
墓守……ああ、それで。
[ああいったものは見慣れているのかと納得して、それでもこの状況を考えればその落ち着きが逆に怖くもあった。
途中で会ったイヴァンにはおはようございます、と小さく挨拶をして。
広間に辿り着き、お茶を入れてくると言うアレクセイが戻るまでの間、タチアナの方を見て何か声を掛けようとも思えど、結局言葉にならず]
……ありがとうございます。
[戻ってきたアレクセイがいれてくれた紅茶を口に運ぶと、ようやく落ち着いた気がした]
[ 止める間はなかった。
いや、止めようとする前に、これが自然なのだという気持ちと口元を抑える微かな意識しかなく、見ているしかなかった。
暗闇の中でも、その爪牙の閃きがアナスタシアの命を速やかに断ったのを、何とか目で追えた。
室内に充満してゆく、食餌の香り。
感謝と驚きと動揺と後悔と。
そして、何事かあってしまったのだという、 無念が。
浮かび混じり合って、血肉の香りの前に消えていった。]
[ 血塗れのふたつ指が差し出される。
滴るのは緋色のそれだ。]
……、君が
[ 言葉にならない言葉を紡いだ。
ヴィクトールは、君が人狼とでも仲間とでも言いたかったのだろう。
差し出された指と選択肢に視線が酷く彷徨った。]
僕は、
[ は、は、と犬の様に舌を突き出し指先に乗る緋色に口付けようとし、
苦痛に身を折るように退いた。]
[ 一口、血を啜れば。
一口、肉を齧れば。
きっと、こんな辛さはなくなるだろう。
村の住人であるアナスタシアの血肉を喰らうこと、
それに纏わる言い訳と人の倫理と、もう、"事が起こってしまったのだから喰べればよい"というのを、無理矢理おいやり聞いた。]
どうして、
目を……閉じた。
[ 森で見つかった旅人の目を閉じた理由。
もし襲ったのが目の前の相手であればとの疑問か。
その質問の返事はどのようなものだったろう。*]
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