[小石が避けられたのを見て舌打ちをした瞬間、すれ違いざまに振るわれた腕。避けようにもそれも適わず、とっさに腕で受け流そうと試みるも、そのまま跳ね飛ばされ桜の樹へと叩き付けられる。辛うじて身体を丸めるようにしたせいか頭を打ち付けなかったものの、背中に激しい衝撃が走り、一瞬息が止まる。]
[鳴り止まない警笛は、更に頭の中響き渡る。]
[それでも、視線はヨウコを見据えたまま。するり、右の手はポケットの中の其れを取り出し、握り締めながらゆっくりと息を吐き。]
貴女は……ただ、奪っているだけ……哀れね。
そんな、簡単な事すら…気づいていない、なんて。
貴女は、誰からも、何も、貰えないわ。