―― 回想 絆が生まれた訳 ――
[目を閉じる。ゆっくりとした、音楽が聞こえた]
[低音が、ずっと静かに流れて。
どこか不安な音色を湛えたそれは、徐々に音が大きくなる。
けれど、曲調は激しくなることなどなく]
(ああ、これは)
[凍りついた眠りの中でずっと頭の中に響いていた、音]
[そのときは、それが何なのか知ることはなかった]
[伝染病メドューサが、脳に到達して外側からゆっくりゆっくり染みこんでいく、音。
冷たい冷たい眠りの中で、本能をつかさどる中枢は、脳みその一番真ん中で、ただ眠ったように動いていた]
[一見それは止まっているようで。でも確かに生きていた]
[ソレは、知る。本来なら病を止める、冷たい眠り。けれど、病がその中枢の近くを蝕んだがゆえに、目に見えないほどゆっくりと、でも確かに動いていることを]