Ave Maria, gratia plena…――
[生の世界を見つめながら、
ユリアンとイレーネの会話を聞くとはなしに聞く。
ふっと、唇から低く小さく零れたのは、アヴェマリア。
イレーネが最期に弾いていた曲だったろうか。]
罪深い私たちの為に、
今も、死を迎える時も祈りを……か。
僕は…――。
[見つめる先、せめて祈りを
――彼女たちが精一杯生きて死を迎える時まで。
しかし、その祈りは、
ハインリヒの手が少女の首に伸びたところで、途切れる。]
ツヴァイさんっ!!??
[見開かれる緑。届かぬ声で叫んだ。]