リン、リリン──会場の上を滑るように、鈴の音が渡ってゆく。『月の時間に始まるよ。 祈りの儀式が始まるよ。 おいで、おいで、月の玉座に。 皆で祈ろう、界の平穏』 伝令役と思しき妖精の声が、鈴の音を追って響く。それと前後するよに、玉座の北の離宮では。王と女王が最後の支度に取りかかる。美しき、薔薇の色の『妖精珠』は。百年ぶりに、月の下へと出るのを喜ぶように、きらり、きらりと煌めいていた──。