よし、いっちょあがり、と。
[軽い口調で言いながら、出来た写本を依頼メモと一緒に置く。
都市の住人は、青年の事を『本屋』と呼ぶ。
と、言っても、本を商っているわけではない。
青年の本来の肩書きは、『筆記者』、古きを伝える書物を写し、次の世代へ引き継いだり、或いは望む者に写しを譲るのが主な仕事。
けれど、それに止まらず書物そのものの管理をしたり複製をしたり──というのが主体となるにつれ、自然、『本屋』と呼ばれるようになっていた]
さて……届けに行くかな。
ついでに、メシもどーにかせんと。
[一通り、道具の片付けを終えると立ち上がり、先に作った本を入れた鞄を肩にかけ。
扉に『外出中』の札をかけると、のんびりと歩き出した。*]