[洞窟内の端の方、家族が住む住居とするには比較的小さめの穴がいくつも開いた壁に、大工の手によって階段が作られ柱で補強され整えられて、一部屋毎を区切った形の集合住宅になっている一画がある。
そのうちの一室を借り、ゲルダは3年前からこの地に住んでいた。
その時からの、役場の名簿にはこう書かれている。]
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■名前:ゲルダ=カーラー Gerda=Kahler
■年齢:25歳
■職業:刺繍師
■経歴:ふらりとひとりで訪れた刺繍師。
この地が気に入ったようでそれからずっと居着いている。
作るのは刺繍による「絵画」。
刺繍を施した布を縫い合わせ額に入れ絵として飾るもので、街ではそれなりに売れるらしく定期的に画廊の者が買い付けに来るらしい。
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