イヴァ………っ、兄貴!![ボクに出来たのは、悲鳴のように二人を呼ぶことだけだった。全てはスローモーションのように目に映っていたのに。優しい兄貴が大好きな恋人へと駆け寄る。手にした鋏がギラリと鈍く光る。馬乗りになる。音を、耳が拒絶した。見開いた目に赤が映る。ぐさりと刺し貫かれ、引き抜かれてまた刺し貫かれ───…地上に血の赤が広がり、天に赤く月が輝く。ボクの目も視界も、すべて赤く染まった]