― 客室 ―[自分の手とは異なる、大きくてゴツゴツした手。部屋で腰かける時にも手を借りれば、肌にチクリと何かが引っかかる。覗き込むとまだ出来たばかりの擦り傷があった]痛くない?お薬、見つけたらつけてね。[見上げると、聖堂で転ぶと老尼僧がつけてくれた軟膏を思い出す。もう聞くことはできないのだと、少し声を震わせぎみに言って、見つからなかった時のおまじないに、そっとキスを落とし]じゃあ、少しお休みする。[手を離して布団を*引き上げた*]