― 広間 ―
ビーチェ。
[身を捩って逃げる姿を、正確に追いかける。
体格の差か、手が伸びてその首筋に触れる]
……人狼。
君は、人狼だ。
[触れた瞬間に視界が真っ暗になった。
恍惚となるほどの高揚感が湧き上がってくるが、それを忌避する意識が抗おうとした。クレメンスとの会話で気付いてしまった。自分はウェンデルの分も、この少女を生かしたかったのだと]
ぅっ。
[そのまま握り締めようとした手から力が抜ける。
足からも力が抜けて、ベアトリーチェから手が離れる。
五感全てを一時的に失ったようになって、崩れるように倒れた]