― 広間 ―[刃が食い込む感触は、影に手が届くよりも前に返った。外から見れば、短いとはいえ深々とブリジットの喉に突き立つ刃が見えただろう。そのまま勢い余って突き飛ばすような形になり、反動で抜けた刃を手にしたまま、真っ赤な血飛沫を浴びる]……何が。[触れられないクレメンスの影を、深緋色がようやく捉えた。形を変えず、世界も白いまま。誰かを抱きとめるような格好で動いている]え……人間?[影の護り手である可能性はまだあると、どこか冷ややかに思いながらも。呆と呟いた]