[ カーテンも開けずに身支度と簡素な食事を済ませると、
いつものようにカメラを弄り始める。
残数ゼロを確認して、別のフィルムへ。
御多分に漏れず昨日も撮っていたわけだが、
かしましい状況は一切撮らずに、
他者が興味を持ち難い、日常の隙間が収められた。
傍から見れば撮影失敗としか思えないような、
他者の後ろ姿だとか、半分だけだとか、そんなものばかり。
準備を済ませると、パーカーを羽織って家を出る。
特に行く当てもなく、MTBに跨っての気侭な旅。
件の“流浪の旅”の時には、置き去りだった愛車だが。
間際に開いた携帯は何件かの着信を知らせるも、
其処に残された特定の名は見ずじまいだった ]