─ 現在・客室 ─
……戻したくとも戻せないこのもどかしさ。
[少女は事故を経て、青年として生きることを定められてしまった。
引き取ってくれた義父母が生きている限りはこの名、この姿で。
幼いエルナ──エーリッヒは生きるために従わざるを得なかった。
当然最初は抵抗もあり、動きにぎこちなさもあったが、今や板につくまでになっている。
慣れとは恐ろしいものだ]
おばさんも気付かなかったみたいだしなぁ。
[この別荘を管理している老婦人にも、以前顔を合わせている。
けれど老婦人は未だにエーリッヒがエルナであることに気付いていないようだ。
幸いと言うか何と言うか、胸の膨らみは事故の怪我と栄養が縦に行き渡ったためかあまり育たず。
更には胸と背中の傷が服を透けないようにと包帯を巻いているため、青年として振舞うに好都合となっていた。
溜息も思わず出てしまうと言うもの]