―大広間―
[その部屋に佇むのは、女、ただ一人のみだった。
ああ、二人じゃなくて良かった。そう思い直したのは、目を付けていたものが、思いの外入り口から遠くにあったからだ。
声をかけることもなく、やはり足音は極力立てずに、するりと室内へと入り込む。
気付かれても構わなかった。だって、彼女は一人で、非力な女だ。
迷うことなく、暖炉へと向かう。彼女はこちらに気付いただろうか。
「なんだか寒くて」そう嘯いたかもしれない。嘘ばかり!
どうしようもなく、身体中に火がついたように、火照っているのに。
警戒されても構わなかった。すぐ傍に備え付けられた、火かき棒に手を伸ばす。
あとは、やっぱり、何も難しいことはない。ただ、適当に距離を詰めて、それを振りかぶって、勢い良く振り下ろす。
ただ、それだけである。それだけのことであった。事は、1分にも満たない内に終わった。恐らく。]