―宿屋 食堂―[コエが、聞こえる。ごめんねと、ありがとうと、愛してるという優しいコエが。]聞きたくない、ごめんだなんて―――起きて、ねえ、起きて―――――[それはずっと昔、暗闇の中で眠る人にかけた言葉と同じようなもの。違うのは、あの時のように応えてはくれない事。涙を拭われた手がゆると落ちて、膨らんだ腹に触れれば何も知らない子は楽しげにオトをその手に返した。揺らいだ赤は、気づいただろうか。ここに確かに己の一部が息づいている事に。]