[いや、そもそもユリアンへかけた言葉ではなかったのだろうか?
ユリアンはぼんやりと知覚する。
ライヒアルトがユリアンの答えを待たずに、「カルメンさんを見掛けなかった?」>>3:157と続けるのを。
イヴァンが首を横に振りつつ「俺は見てねーなー…」>>3:158と返すのを。]
(遠い。)
(どうしてこんなに遠いんだろう?)
[距離を感じる。
ふたりだけではない。
廊下の壁も天井も、急速に遠さがっていく。]
(ぼくが、遠くへ……?)
(……それに、暗い。)
[ユリアンは壁に背中を預けた姿勢のままずるずると下がり、やがて床に倒れた。
何に対しても反応せず、眼を開いたまま意識をなくしていると判断されて、ふたたび部屋の寝台で寝かされるだろう。]**