……あー……やりにくい。
[抵抗なくなった身体をベッドに横たえて、やれやれ、と息を吐く。
鼓動の源狙った刃は未だ、突き立てたまま。
引き抜く際、抉るように動かした刃の上には、紅の跡以外のものも残っていたけれど、構う事はなく。
裂いたシーツに包み込んで、ベストの裏に押し込んだ]
……こんな状況ですから?
自分が生きるためにも、誰かを殺さないとならないんで。
[自分が殺めた女性に向けて、囁く言葉には悔いるような響きはない。
やらねばならない理由が己の内にはあるから、躊躇う必要も余裕もないのだが、そこまで口にする事はなく。
優美ともいえる仕草で一礼した後、客間を出て。
足早に、自身の客間へと戻っていく。**]