[珠樹以外誰も居なかったはずの脱衣所。その中央に、大広間に居たはずの綾野が横たわっていた。髪は乱れ、身体は紅く染まり。ひかりを移さぬ瞳は綾野が既に事切れていることを示している。死を想起させる鮮烈な紅い色。それを目にして珠樹は絹を引き裂くような悲鳴を上げた。途中まで回していたドアノブは扉を開くに十分で、動かぬ綾野から離れようと動いたために珠樹の背に押されて扉が大きく開く。同時、足を縺れさせた珠樹は尻餅をつくようにして廊下へと転がり出た]