― 2階・自身の客室 ―
[やがて開く掌には、一柱による跡が赤く刻まれていた。
じっと、視線を落として。
それをポーチの中に放り直して、腰に再び据えて立ち上がる]
……もう、迷うまいよ。
これでは、きっと笑われてしまう。
[サイドボードに放り出したままだったスケッチブック。
殆ど進められていないが、それを手に部屋を出て]
[3階にあるヘンリエッタの部屋の前。
呼んでも返らぬ声に眉根を寄せる。
泣き疲れて眠って居るのか、それとも此処にはいないのか。
前者であれば邪魔になってしまうだろうからと、一時身を引く]
[後、食事の折にふと思い立ち、ネリーに尋ねることもあるだろうが。
時を逸してその日は扉を潜る事も適わぬままに]