― 宿入口 ―
[多勢に無勢となって、団員>>6は逆上したようだった。
元歌姫は普段よりずっと気丈だったけれど、やはり大声を上げたりはできなかっただろう。その分まで学者が言い返したりしていたか]
えっ。
[元歌姫の向こう側にデザイナー>>7が立っているのに気がつくのは遅かった。それが誰なのか分かる前に視界が揺れた。
体は揺れていない。ただ瞳が熱くなって、元歌姫から目が離せなくなった]
…… weiße.
[瞳の色は夜空のような黒になり、一筋だけ白い線が走った。
しろ、と小さく呟く。
行商人>>15に抱えられる元歌姫を身じろぎもせず凝視していた]