[もっと早くに言っていれば。
その想いは事実。
先に言っていれば、即殺されることは、少なくとも防げたはずだ。
恐らくは、自らの命を以て護る形になるのだろうけれど。
そうしなかったことをナターリエは酷く後悔していた。
護るべき者を護れなかったのが悔しくて、悔しくて。
ユリアンの死で、正気を保つための糸が1本、切れてしまっている。
だから、他を殺すも厭わないし、偽ることに抵抗も無い。
そのせいで慎重さが欠けているのか、ナターリエは今日襲われた者がアーベルであると、きちんと確認をしていない。
それなのにアーベルが襲われたことをしっかりと認識している。
その矛盾に気付く者は、果たしてこの中に居るのだろうか**]