[アヤメが頷くのを見、警戒しながらラスを縛めて行く。
少し調子の戻った声には、振り向きもせずに声を投げた。]
………念の為だ。
もう動かないと思った獲物が一番恐い。
[仕留めたと思った獲物が急に息を吹き返したというのは、猟師なら一度は経験する事。
だが体を痛めているかもとの声に、手首足首を縛るに留める。
深い息を吐くと元気な鳴き声がして、跳ねる小さな体が纏わりついた。]
………お前もよくやったな、疾風。
カレンも急に渡してすまん。預かってくれて助かった。
[振り返り、銀の月の翼の少女に礼を告げる。
その遥か後方から、黒い影が踊り出した。疾風が吠える。]