間に合わなかった。また。[クロの首筋から吹き出したのだろう血は、部屋を赤く染めていた。ナタの手は、人が持つはずのない鋭い爪が伸びて同じ赤に染まっていた。けれど]……ナタ。[倒れてもなおクロの方を向いている、その顔に浮かんでいたのは慈愛に満ちた微笑だった。シスターらしく、優しすぎて、胸が苦しくなる]