育ての親とはいえ、親は親ですけど、ねぇ……
[男が赤子の時に引き取られた養子である事は、村の大人たちや同世代のものなら知っていることだ。
なかなか子供ができなかったと言う両親が町まで行って引き取ってきた子供。
だけど、そのすぐ後に懐妊し、実の息子が生まれ、引き取られた意味をなくした子供。
実子ばかりを可愛がる親を見かねて可愛がってくれた祖父が、与えてくれたバイオリンに子供は夢中になった。
いつか、色んな所を回る演奏家になりたいと抱いた夢を、両親は一蹴した。
「「そんなもの」にするためにお前を引き取ったわけじゃない」
跡継ぎは実子である弟と決まっているのに、それでも自分たちの都合で縛る親が嫌いだった。
男を応援し可愛がってくれていた祖父が亡くなった時、こつこつ貯めていた僅かなお金を持って村を出た。
それから、親に連絡を入れたのは、楽団に参加が決まった事を伝える手紙、一通だけ]
待っているとも思えないんですよねぇ。
[などと溜め息をつけば、部屋の隅から「にゃあ」と声がした。>>18]