エーリッヒ、手伝ってくれ。
[行商人の搬送はもう一人の男手であるエーリッヒに頼んだ。
イレーネに運ばせるくらいなら、彼が手伝ってくれるだろうと踏んでのこと]
………
[持ち上げる時、左手に力が入るか気になり、一度視線を向ける。
掌には朱のいろ。
消える気配の無いそれを見詰めてから、行商人の上半身、脇の下に腕を差し込んだ。
後ろから前へと腕を出し、胸の辺りで両手を組む。
これなら左手に力が入らずとも、腕の力で運ぶことが可能だ。
その代わり、左手には別の紅が付いてしまうが]
行こう。
皆にも知らせねば。
[人狼かどうかは分からなかったが、疑わしい者が一人減ったと言う事実は伝えねばならない。
まだ被害が続くようなら、再び考えなければならないのだから]