─元宿屋・広間─[身上書を渡した後は暖炉傍にさっと陣取り、手持ち無沙汰に持ってきた本を開いていた。そうなると、中々周囲に注意に行かないのはいつもの事。故に、呼びかけられてもすぐには反応せず。膝の上の真白の猫がなぁ、と鳴いて足を叩いてようやく活字から翠をそらした]あれ……。もしかして、エルゼ兄さん?[顔を上げ、視線の先にいた者。覚えのある姿に、ゆる、と首を傾げて呼びなれた名で呼びかける]