― 黒珊瑚亭 ―
[返る苦笑>>12に、紅玉は緩やかに伏せられる]
ああ、おかえり。
[唇が紡げたのは其処までで。
乾くばかりの口元を潤す茶も、間もなく尽きた]
[暫し器の中に落としていた視線を持ち上げ、
食堂の奥へと視線を巡らせる。亭主は其処に居るだろうか。
戸惑いの色を乗せた紅玉は一度逸れ、
諦めを滲ませる様に伏せて、立ち上がる]
……自宅へ戻る。
少し、冷静になりたい。
[呼び止める者は居るだろうか。
居たとしても苦い色を湛えた紅玉と謝罪がひとつ返るだけで。
浜に行く筈だった足は言葉の儘、荒れた自宅への道を辿る**]