アーベルさんは人間。信じる。こんなことになってしまったけれど。ゲルダさんのことも、もう疑わないから。[近くにいなければ聞こえないくらい小さな声で囁いた。大切な人を失ってしまった人には、そんなもの慰めにもならなかっただろう。何を言われても言い返すことは出来なかった。見定める力の有無も、小声で聞かれたのなら頷いた。信じるのが遅すぎたと知れるのはもう少し未来のこと。けれどこの時既に予感のような何かはあったかもしれない]