─ 回想・広間にて ─
[華やかな雰囲気の女性が広間へ入ってくる>>8と、合わせたわけでもないのに、皆の視線はそちらへ向いただろう。
「カルメンって……あの?」>>0:167
と声をかけるオトフリートとは年齢も近いし、子どものころ親しかったのかもしれないと、ユリアンは勝手に解釈して。
村では数少ない若い女性。
しかも、着飾らなくとも目立つ容姿だ。
ユリアンとしては、第一の顧客になって欲しかった、のだけれども。
エーファに話しかける>>9カルメンから視線を外し、傍らの愛犬へ手を伸ばす。
その黒い毛を撫でながら、誰にも聞こえない声でつぶやいた、]
残念……。
[仕立て屋を仕事としてやっていけるかどうかわからず、意気込んでいた時期だった。
婚約の噂を雑貨屋の客のおしゃべりで聞き込むと、確かめもせずに彼女の屋敷へ向かったのだ。]