― 2階・ゼルギウスの部屋 ―[裁ちばさみが左胸に深く刺さったままなせいか、出血は男の衣服にじわりと滲む程度で。ユリアンの手を赤く濡らすことはなく。座り込んで呆然としていた時間は長かったのか、それともほんの数拍にすぎなかったのか。] ……聞こえ、ない。[ユリアンは顔を上げる。] 何も、聞こえない……。[耳の異常を訴える瞳は、図らずも手にかけた男>>1:156と似た虚ろさだった。]**