[圧縮空気は左右の景色を一瞬で後ろへと流れていく。その中でただ一点の目標に向けて拳を振り切った。だが、その拳が届く前に、腹部へっ到達した衝撃が視界をブレさせた。マテウスの顔面を狙っていた拳は、彼の頬を掠めるに留まる]が、は、ふ……。[それよりも自らが付与した魔法による移動は、想像以上だったのか、マテウスの一撃はいとも簡単に精霊の結晶体を破壊し、生身の体に命中していた。ゼルの口から逆流した胃液が吐き出されるのを気に、鎧はガラスが砕けるように全て割れ、そのまま大気に溶け消えていった]