―中央エリア・ビル屋上―
[繰り出した蹴りは僅かに毛皮を掠るに止め、標的を捉え損ねた身体は態勢を崩す]
……ちっ!
[舌打ち一つ。
和傘から現れた刃が狙うは己が片翼と覚ると]
ちょ、さすがにそれはなしっ!
[焦ったような、おどけたような声で言いつつ、刃を止めるように左の腕を翳す。
黒衣と、その下に巻いてある布が裂け、紅が散った]
てゆーか、あれですよ。
真っ向勝負好きなら、暗殺稼業なんてしてません、て。
[軽い口調で言う、右の手には漆黒の針が一本握られていた。
至近距離の接近、生かさねば損、と言わんばかりに、鋭い先端が紅雨の左の肩へと振り下ろされる]